Vangelisの作品で一番好きなのは以前ご紹介した73年にリリースされたサントラ盤の 『L'Apocalypse Des Animaux』であった。それは一番最初に買ったVangelisのアルバムであったが、子供の頃にジャケットを見て、さまざまな妄想を膨らませていたVangelisの音盤をそれ以降少しずつ手に入れるようになっていくのであった。勿論本作もジャケ買いなのであるが、正直な話としては、Vangelisのジャケ買いしたアルバムの数々は、最初に聴いた時の印象として、自分がジャケットから勝手にイメージしていた音楽と違っていて少々ガッカリさせられたのであった。それはSF的なVangelisのアルバムのジャケットから、勝手に自分が思い描いていたものであり、時が経つにつれて、その音楽の面白さや深みが分かっていくようになったのであった。所詮10代の子供には、Vangelisの音楽は難解過ぎたのである。本作は、Space Physics(宇宙物理学)をThemeとしたConcept Albumであるという。宇宙や天体物理学、天文学を思わせる音楽は当時、そういった方面に興味を抱いていた自分にとっても興味深いものであった。丁度その頃、天文学者Carl Saganが監修しPresenterとして登場する世界初の宇宙に関するDocumentary番組『Cosmos: A Personal Voyage』に本作収録の“Alpha”を始めとするVangelisの音楽が使用されたのであった。後に大学で、殆ど学校に顔を出さないダメ学生ではあっても宇宙科学の講義だけは欠かさず出席していた自分である。本作はVangelisにとってLondonのNemo Studioで録音された2番目の作品である。Synthesizerなど鍵盤楽器は勿論、DrumsやBass、Xylophoneを自ら演奏し多重録音した力作である。
『Albedo 0.39』はVangelisが76年にリリースしたアルバム。
アルバム1曲目“Pulstar”は何かが起こりそうな心が高まる心地良いSequencerに導かれてBrassやギターを模したSynthesizerが絡み合い、崇高でSymphonicなVangelisの世界に惹きこまれていく。Speaking ClockによるEndingも面白い。
“Freefall”はGamelanを思わせるSequencerや旋律を奏でるSynthesizerが、どこかOrientalな香りも漂う。Vangelisはこういった東洋的なExotisismが時折顔を出す。
アポロの月面着陸の録音が含まれる“Mare Tranquillitatis”。
“Main Sequence”はVangelis自身が叩くドラムスにのって幾分Jazzyな要素を含んだ演奏が繰り広げられる。それはVangelisによる一人Jamといってもいいようなもので、ドラムスが退場した後半からMysteriousでSpacyなSynthesizerが登場するあたりもイイ感じ。
“Sword Of Orion”はMelancholyな旋律が印象に残る2分足らずの短いナンバー。
上述の“Alpha”は哀感漂う旋律で始まり、Symphonicに展開し盛り上がっていく。後のVangelisに繋がっていく音楽性だが、ここではドラムスをVangelisが淡々と叩いているのが興味深い。
荘厳な幕開けの“Nucleogenesis”はPart1とPart2の二部構成。Classicalな中にAggressiveにSynthesizerが飛び交い、Rock的なDynamismが共存している。Vangelisのドラミングも中々のもの。
アルバム最後をシメるのはSynthesizerをバックにしたEngineerのKeith Spencer-AllenによるNarrationが入るタイトル曲“Albedo 0.39”。
(Hit-C Fiore)