勘三郎さんの出演作品観てきました。
あぁ、面白い🤣
その面白さはオペラやシェイクスピア劇のフォールスタッフにあたるのかな?実際にはシェイクスピアのファルスタッフを観て笑えるところがどこなのかさっぱりわかりませんが、この中村平成座の法界坊はゲラゲラ笑えました。映画館なのに10年前の上演(平成20年11月、浅草:浅草寺境内)なのに色褪せない躍動感、エンターテイメント、お客様を喜ばしたいがあふれています。
決してほのぼの話ではなく、法界坊(勘三郎)はかなり悪どくエロじじいで、殺され損のお姫様(七之助)は気の毒だし、そういう展開からシェイクスピアがすぐに思い浮かんだんだと思います。
お組(扇雀)と恋仲の要助(勘九郎)、許嫁の野分姫(七之助)、忠臣の橋之助さん(現:芝翫)は正義のヒーロー役で、練りに練った芝居で印象的な番頭は片岡亀蔵さん、笹野高史さんは現代劇に出ているよりずっと良いし😂
見せ所はおかしみだけでなく、歌舞伎の凄みも、歌舞伎の変化(早替え、早着替え)も、歌舞伎のアクロバット的身体能力など駆使されていてとにかくすごいです。ラグビーのFW陣のような屈強な男たちが板2枚分位のベニヤを肩に担いでその上で悪霊の勘三郎さんと正義の橋之助さんが戦う舞など、びっくりだらけで。
あ、ラストのこの手法ってシアターコクーンで観ている?とクレジットを見たら串田和美演出・美術なんです。笹野さんは串田さんのオンシアター自由劇場役者だったし、串田さんは開場時からのコクーン芸術監督でしたし、なるほどです。
そしてその手法が最大限に生きたのがおそらくこの舞台ではないでしょうか。
クライマックスでは書割りの隅田川がパカーンと開け秋晴れの屋外がどーんと後方に広がるのですが、蜷川でシブヤに突然始まる例の大音響とかあざとさがなく、歌舞伎小屋に染み入る情緒とスケール感が壮大で感動します。
履物を脱いで袋に入れて入場している筈の小屋のお客様も総スタオベしていました。
映画館の私は悲しいから泣くのではなく、感動して泣いていました。
そういえば勘三郎さんも秀樹さんと同世代ではないでしょうか、
ヒデキさんに夢中だった時代に若き大竹しのぶさんと共演される若き勘九郎さんを見てみたかった記憶があるんです。公演情報だけはしっかり読んでいて、でも時間も金銭的にも余裕はないから行動に移すのはヒデキさん優先でしたが、たしかミュージカルで若きハイデルベルキとかいうタイトルで。気になっていたことを思い出しました。
較べたら短い生涯なのだけれど、その中身は濃くてすごくて、、、
帰りに本家・歌舞伎座を見上げると十月歌舞伎は十八世中村勘三郎七回忌追善公演になっていました。
しかも出演者は七之助さんに勘九郎さん、扇雀さん、亀蔵さんもいらっしゃる。並んで勘三郎さんのお写真が。
57歳はあまりにも若くて、
当時はその重大な損失に実感がわかなかったけれど、今は本当にかつての若きプリンスたちが老年になる前にもうこの世にいないことが切なくて、
芸術作品がこうやって記憶にも残り継承されて行くこと、
おもう秋。