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真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

フクシマ被災者を切り棄てての東京五輪

2020年02月24日 16時19分25秒 | 政治

                                

                    「植草一秀の『知られざる真実』」

                                        2020/02/24

   フクシマ被災者を切り棄てての東京五輪

            第2561号

   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2020022413242763975
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安倍内閣は危機管理能力を欠落しているだけでない。

事実を隠ぺいしようとする隠ぺい体質をも併せ持っている。

新型コロナウイルスの日本国内での感染が拡大している。

国内での感染者数発表値が抑制されている最大の原因は安倍内閣がPCR検査
実施を抑制しているからと考えられる。

感染の疑いがある人が医療機関でPCR検査を求めても、検査を拒絶するケー
スが多数存在する。

検査を実施して陽性反応を確認しない限り、感染者数にカウントされない。

感染者数の発表値を抑制するためにPCR検査を実施しない方針が採られてい
る可能性がある。

本末転倒だ。

検査が実施され、感染が確認されなければ感染者の行動を制限できない。

検査を受けられず、感染が確認されなかった感染者が各地を旅行して感染が拡
大する。

検査を広範に実施して、感染を早期に特定できれば、感染者の行動を制限でき
る。

安倍内閣は見かけ上の感染者数を抑制するために検査自体を抑制していると見
られるが、この対応が逆に感染の爆発的拡大を招く原因になる。

クルーズ船ダイヤモンド・プリンセスで陰性が確認された乗客が下船したが、
安倍内閣はこの乗客の下船後の行動に制限をかけなかった。

検査結果が陰性であっても、後に陽性となるケースが多数存在する。

検査後に感染した可能性もあり、陰性乗客に対しても、下船後、一般公衆との
接触を回避させる制限を設けることは当然だった。



ところが、安倍内閣は、陰性乗客の下船後の行動を制限しなかった。

その陰性乗客が下船後に感染を確認された。

この乗客は下船後に公共交通機関を利用して帰宅した。

明々白々の安倍内閣の大失態である。

また、下船した乗客のなかの23名が、2月5日以降の健康観察期間中にウイ
ルス検査をしていなかったことが明らかにされた。

検査を受けずに下船したのだ。

新型コロナウイルスに感染しても、多くの場合は重症化しない。

安倍内閣は、PCR検査を拒絶し、感染者としてカウントしない感染者が軽症
で回復すれば、感染者数として公表しないで済むと考えているのだろう。

しかし、感染者が感染者と認定されなければ、感染者の行動が制限されない。

このことによって感染者数が拡大する恐れは高い。

対策の基本に感染拡大抑制を置くべきだ。

ところが、安倍内閣の対応は、「感染抑制」でなく、「公表する感染者数抑
制」に基本を置いているように見える。

完全なる本末転倒だ。

広範にPCR検査を実施する体制を整備すれば、日本における感染者数は大幅
に拡大することになるだろう。



全国各地での感染確認は氷山の一角と見るべきだ。

実際の感染者数ははるかに大きな数値に達していると考えられる。

問題は、感染者の一部が重症化することだ。

ダイヤモンド・プリンセス乗客の感染者3名が亡くなられた。

2月4日の検疫段階で、安倍内閣は乗員・乗客全員に対する検査を決断しな
かった。

3711名の乗員・乗客のうち、PCR検査の対象にしたのはわずか273名
である。

死亡した乗客はPCR検査の対象とされず、発熱などの症状を訴えながら、医
療機関での医療を受けるまで長期間船内に監禁された。

過失致死などの刑事上の責任さえ問われかねない対応である。

安倍内閣が力を注いだのは、ダイヤモンド・プリンセスでの感染者数を日本の
数値に含めないようにすることだった。

しかし、ダイヤモンド・プリンセスは2月1日に沖縄県・那覇港に寄港してお
り、この段階で検疫と入国手続きを終えている。

つまり、那覇港に寄港して以降のダイヤモンド・プリンセスは日本国内の扱い
となっているはずだ。

その後、香港でダイヤモンド・プリンセスを下船した乗客の感染が明らかにな
り、安倍内閣は那覇での検疫を取り消して横浜で再度検疫を実施したのであ
る。

安倍内閣は公表する日本の感染者数を操作することよりも、乗員・乗客の生命
と健康を守ることに注力すべきだった。

安倍内閣の責任は重大だ。 



中国の疾病予防センターで対策に当たっているチームは、2月11日までに新
型コロナウイルスへの感染が確認された4万4672人について分析したデー
タを発表した。

発表によると、感染者のうち軽症が80.9%、重い肺炎や呼吸困難など重症
が13.8%、呼吸器の不全や敗血症、多臓器不全など命に関わる重篤な症状
だったのが4.7%だった。

全体の致死率は2.3%だが80代以上では14.8%であったほか、心臓な
ど循環器に持病がある人の致死率は10.5%だった。

軽症の比率が8割ではあるが、重症、重篤な状況に陥る確率が2割もある。

とりわけ、高齢者と心臓などに疾患のある人の致死率は高い。

国内でも20代女性が重篤な状態にあることが報じられており、軽く見ること
は許されない。

ダイヤモンド・プリンセスの乗員、乗客の感染者数は2月23日時点で692
人。

当初のPCR検査対象者数273人をはるかに上回っている。

クルーズ船から医療機関に搬送された感染者のうち、集中治療室などに入って
いる重症者は2月23日時点で36人になっている。

このすべてが60歳以上の高齢者である。



安倍内閣はウイルスの日本国内への侵入を水際で遮断するために3711人の
ダイヤモンド・プリンセス乗員、乗客を船内に監禁したと見られるが、その一
方で中国各地からの人の移動を制限しなかった。

ざる状の水際対策で、懸念通り、国内での感染拡大が現実化している。

現時点ではワクチン等の有効な治療方法が確立されていない。

したがって、対症療法で対応せざるを得ない。

高齢者や心臓疾患などを有する者、乳幼児への感染を防止するための最大の努
力が払われなければならない。

いま必要な対応が三つある。

第一は、検査態勢の拡充だ。

感染の疑いがあり、PCR検査を求めているのに、安倍内閣がこれを拒絶して
いる。

これを直ちに是正するべきだ。

広範に検査が実施される体制を早急に整備するべきだ。

第二は、徹底的な情報開示だ。

感染が確認された場合、感染者の移動経路が明らかにされる必要がある。

個人名を公表する必要はないが、移動経路等は詳細に公表するべきである。

情報公開がないことで過大な風評が流布されることになる。



第三は、高齢者、各種既往症のある人、乳幼児、低年齢者へのケアである。

医療機関において感染が拡大する恐れも高い。

院内における消毒対応の徹底も強く求められる。

安倍内閣は水際対策に失敗した。

ざる状の水際対策であるから、もとより失敗は明白だった。

国内での感染拡大が進行している。

感染拡大から収束までにはかなりの時間を要することになる。

現実的に考えて東京五輪の開催は極めて困難になりつつあると言わざるを得な
い。



安倍内閣の準備と判断が遅れれば遅れるほど混乱は拡大することになる。

五輪開催中止を含めた対応策の検討に直ちに着手するべきだ。

感染が拡大するなかでの五輪開催はあり得ない。

もとより、原子力緊急事態宣言が発動されているなかで、フクシマの原発事故
被災者に対する補償を打ち切りつつ五輪開催に巨大な血税を注ぐという対応に
重大な問題があった。

ICRP(国際放射線防護委員会)は一般公衆の年間被曝量上限を1ミリシー
ベルトと定めている。

日本の法体系もこれに準拠している。

ところが、原子力緊急事態が宣言されて、重大事故の復旧期の特例として年間
20ミリシーベルトの被曝を容認している状況にある。

累積被曝線量100ミリシーベルトでがん死リスクが0.5%上昇するとの科
学的知見が得られている。

20ミリシーベルトの被曝が5年持続すれば累積線量は100ミリシーベルト
に到達する。

このような放射能汚染地域に市民の居住を強制することは許されない。

しかし、安倍内閣は年間20ミリシーベルトの汚染地域から避難する被災者に
対する補償を打ち切って五輪開催に突き進んでいる。

この背徳の五輪を早急に見直すことが強く求められている。

『フクシマ事故と東京オリンピック【7ヵ国語対応】』
“The disaster in Fukushima and the 2020 Tokyo Olympics”
(小出裕章著、径書房)
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