曲学阿世:真実を追求し、虚実の世間に迎合するようなことはしたくない。

真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

主権者を不幸にするだけの韓国敵視外交

2019年08月23日 09時59分40秒 | 政治

                               

                                

                     「植草一秀の『知られざる真実』」
                                    2019/08/23
            主権者を不幸にするだけの韓国敵視外交
             第2413号
   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019082306000057702 ──────────────────────────────────── 韓国政府が8月22日、日本と締結している軍事情報包括保護協定(GSOM IA)を破棄すると発表した。
日本政府は韓国政府がGSOMIAを破棄しないと高を括っていたようだ。
韓国政府発表後の狼狽ぶりにその事実が表れている。
「鏡の法則」という言葉があるが、韓国政府の対応は日本政府の対応を反映す るものである。
融和・友好・信頼・尊重で進めば、融和・友好・信頼・尊重が返ってくる。
敵意・攻撃・不信で進めば、同じ対応が返ってくる。
徴用工の問題では1965年の日韓請求権協定を根拠に、日本に対する請求権 は消滅しているというのが日本の主張だ。
しかし、日本の最高裁判所の判断は、日本と中国との間の賠償関係等について 外交保護権は放棄されたが、被害者個人の賠償請求権については、「請求権を 実体的に消滅させることまでを意味するものではなく、当該請求権に基づいて 訴求する権能を失わせるにとどまる」としたものである(最高裁判所2007 年4  月27 日判決)。
これに対して、韓国大法院は、元徴用工の慰謝料請求権は日韓請求権協定の対 象に含まれていないとして、その権利に関しては、韓国政府の外交保護権も被 害者個人の賠償請求権もいずれも消滅していないとした。(2018年10月30 日)。
「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」 http://justice.skr.jp/statement.html
は、韓国大法院判決について「被害者個人の救済を重視する国際人権法の進展 に沿った判決である」として、次のように指摘している。

「本件のような重大な人権侵害に起因する被害者個人の損害賠償請求権につい て、国家間の合意により被害者の同意なく一方的に消滅させることはできない という考え方を示した例は国際的に他にもある(例えば、イタリアのチビテッ ラ村におけるナチス・ドイツの住民虐殺事件に関するイタリア最高裁判所(破 棄院)など)。
このように、重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的 に消滅させることはできないという考え方は、国際的には特異なものではな く、個人の人権侵害に対する効果的な救済を図ろうとしている国際人権法の進 展に沿うものといえるのであり(世界人権宣言8条参照)、「国際法に照らし てあり得ない判断」であるということもできない。」
声明は日本の最高裁判決に関して、
「この解釈によれば、実体的な個人の賠償請求権は消滅していないのであるか ら、新日鉄住金が任意かつ自発的に賠償金を支払うことは法的に可能であり、 その際に、日韓請求権協定は法的障害にならない。
安倍首相は、個人賠償請求権について日韓請求権協定により「完全かつ最終的 に解決した」と述べたが、それが被害者個人の賠償請求権も完全に消滅したと いう意味であれば、日本の最高裁判所の判決への理解を欠いた説明であり誤っ ている。
他方、日本の最高裁判所が示した内容と同じであるならば、被害者個人の賠償 請求権は実体的には消滅しておらず、その扱いは解決されていないのであるか ら、全ての請求権が消滅したかのように「完全かつ最終的に解決」とのみ説明 するのは、ミスリーディング(誤導的)である。
そもそも日本政府は、従来から日韓請求権協定により放棄されたのは外交保護 権であり、個人の賠償請求権は消滅していないとの見解を表明しているが、安 倍首相の上記答弁は,日本政府自らの見解とも整合するのか疑問であると言わ ざるを得ない。」
と指摘している。

中国人強制連行事件である花岡事件、西松事件、三菱マテリアル事件などにお いては、訴訟を契機に、日本企業が事実と責任を認めて謝罪し、その証しとし て企業が資金を拠出して基金を設立し、被害者全体の救済を図ることで問題を 解決した。
そこでは、被害者個人への金員の支払いのみならず、受難の碑ないしは慰霊碑 を建立し、毎年中国人被害者等を招いて慰霊祭等を催すなどの取り組みが行な われてきた。
「弁護士声明」は、
「日本政府は、新日鉄住金をはじめとする企業の任意かつ自発的な解決に向け ての取り組みに対して、日韓請求権協定を持ち出してそれを抑制するのではな く、むしろ自らの責任をも自覚したうえで、真の解決に向けた取り組みを支援 すべきである。」
と提言している。
建設的な主張である。
日本に日本の主張があるのと同様に、韓国には韓国の主張がある。
双方が歩み寄りを示さなければ問題を解決することは困難だろう。
2020年に東京オリパラを控えているが、このオリパラの招致活動のなか で、安倍首相は2013年9月7日にアルゼンチンのブレノスアイレスで開か れたIOC(国際オリンピック委員会)総会でこう述べた。
「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、 統御されています」
「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0・3平方キロメートルの 範囲内で完全にブロックされています」
このことに関して、東京電力は8月8日、福島第一原発で事故を起こした建屋 などから発生する汚染水をためるタンクが、2022年夏ごろに満杯になる見 通しを明らかにした。
これについて原子力規制委員会の更田豊志委員長は8月21日の記者会見で、 処理水を希釈して海に放出することを東電などに求めた。
安倍首相の五輪招致IOC総会での発言と直結する問題である。
韓国外交省はこの点について8月19日、在韓日本大使館の西永知史公使を呼 び、「事実関係の確認と今後の処理計画などについて、日本政府の公式回答を 求める」との口述書を手渡した。
客観的に見ると日本が窮地に追い込まれつつあるように見える。

日本政府が徴用工問題に関する韓国の対応に対する報復行動を実施したことに 韓国政府および韓国国民が反発している。
輸出規制などの措置について日本政府は報復措置ではないと後講釈したが、当 初は明らかに報復措置を採ることを示唆していた。
日本政府の対応などの影響で日本の観光産業にも重大な影響が広がっている。
産業界においても、日韓の結びつきは極めて深く、深刻な影響を受ける日本企 業が急増している。
日本と韓国を結ぶ航空路線においても相次いで運行休止が発表されており、韓 国からの訪日旅行者数も急減し始めている。
全国各地の観光地に与える影響は極めて深刻である。
また、韓国における日本製品不買運動も広がっており、日本経済に与える影響 を無視できない。

他方、本年4月11日、世界貿易機関(WTO)の上級委員会は、東日本大震 災に伴う原発事故を受けて福島県など8県産の水産物輸入を規制している韓国 の措置を不当であるとして2015年5月に日本が提訴した事案について、日 本が敗訴となる最終判断を下した。
日本政府がWTOで敗訴した。
福島原発事故後に54ヵ国・地域が水産物などの日本産食品の輸入を規制した が、その後、31ヵ国・地域が規制を解除した。
しかし、現在も23ヵ国・地域が規制を続けている。
このなかで、日本政府は韓国だけを対象にWTOに提訴したのだが、あえなく 敗訴してしまった。
日本のメディアは安倍内閣と癒着して日本政府の主張しか伝えていないが、日 本での論調と世界の論調には大きな隔たりがある。

拙著 『国家はいつも嘘をつく--日本国民を欺く9のペテン』 (祥伝社新書) https://amzn.to/2KtGR6k
で、4番目の嘘として「2020東京五輪の嘘」を取り上げた。
安倍首相は「汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の、0.3平方キロ メートルの範囲内で完全にブロックされています」と述べたが、真っ赤な嘘 だった。
当時の状況でも、福島第一原発の貯水タンクからは毎日300トンもの高濃度 汚染水が漏洩していた。
また、汚染水が地下水に到達していたことも明らかになっていた。
東京電力が2011年4月4日から10日にかけて、港湾内に1万393トン の放射能汚染水を意図的に放出したことも明らかになっている。
世界は、福島の放射能汚染について、いまなお極めて厳しい警戒の目を向けて いる。

安倍首相は、さる5月19日に北朝鮮による拉致被害者家族会や「救う会」な どが東京都内で開いた国民大集会に出席し、
「拉致問題は安倍政権の最重要課題」
と強調した。
しかし、韓国と現在のような敵対関係を続けていて、拉致問題を解決できるわ けがない。
大阪G20会合の直後に3回目の米朝首脳会談が板門店の中立地帯で開催され たが、安倍首相はこの事実を知らされていなかった。
首脳会談の開催場所にトランプ大統領をエスコートしたのは韓国の文在寅大統 領である。
安倍内閣はその韓国と軍事的な情報共有もできない事態に追い込まれている。

7月25日には日韓関係の悪化を憂慮する日本の有志らによる声明 「韓国は『敵』なのか」 がインターネット上に公開された。
声明は次のような主張を示している。
【報復の連鎖を回避せよ】 特別な歴史的過去をもつ日本と韓国の場合は、対立するにしても、特別慎重な 配慮が必要になる。それは、かつて日本がこの国を侵略し、植民地支配をした 歴史があるからだ。日本の圧力に「屈した」と見られれば、いかなる政権も、 国民から見放される。日本の報復が韓国の報復を招けば、両国のナショナリズ ムは収拾がつかなくなる可能性がある。このような事態に陥ることは、絶対に 避けなければならない。
まるで韓国を「敵」のように扱う措置になっているが、とんでもない誤りだ。 韓国は、自由と民主主義を基調とし、東アジアの平和と繁栄をともに築いてい く大切な隣人だ。
元徴用工たちの訴訟は民事訴訟であり、被告は日本企業だ。まずは被告企業が 判決に対して、どう対応するかが問われるはずなのに、はじめから日本政府が 飛び出してきたことで、事態を混乱させ、国対国の争いになってしまった。
日韓基本条約・日韓請求権協定は両国関係の基礎として、存在しているから、 尊重されるべきだ。しかし、安倍政権が常套句のように繰り返す「解決済み」 では決してない(週刊金曜日編集部まとめによる声明要旨)。
韓国は日本にとってかけがえのない貴重な隣国のひとつである。
相互に尊重と敬意をもって友好関係を築くことが求められるが、安倍内閣が推 進している方向はその真逆である。
結局はこの対応が日本の主権者にも不幸をもたらすことを忘れてはならない。
日本の主権者が先導して日韓友好関係を回復してゆく必要がある。

                                



最新の画像もっと見る

コメントを投稿