「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

「Jerry'sギター」代表&編集長「MASH & ハードパンチ編集部」が贈る毎日更新の「痛快!WEB誌」

明石のブルースマン「ハウリンメガネ」が贈る・・・「どこまでもヴァウナル中毒!」(第33回)《ルー・リード&ジョン・ケイル編》

2020-11-12 12:46:00 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more

読者諸賢、ごきげんよう。
ハウリンメガネである。

早々に冬の気配が近づき、
もう年末も近くなってきた。
何度も書くが、コロナはもちろん
インフルエンザや風邪にもご注意を。

(なお筆者、酷くはないものの、秋の花粉症の気があるのだが、今年は常時マスク着用の為かあまり症状が出なかった。怪我の功名というべきか否か……)

閑話休題。
さて、編集長と筆者の対談で絶賛進行中
「イーノで紐解くロックの歴史」。
楽しんで頂けているだろうか。
あれを読んで「なんであのアルバムの話がないんだ!」
という意見の方も居られるだろうが、
なにせ数が多いので全て紹介していたら
いつまで経っても終わらない!

ということで実は泣く泣く切っている話も多い。
だが、そのままスルーしてしまうには勿体ない、
というのも正直なところ。

そこで今回紹介するのはそんな前回、
前々回の対談で取り上げられなかった
ベルベッツの二大巨塔であるルー・リードとジョン・ケイル、
彼らふたりが袂を分かってから云十年の時を経て邂逅したアルバム
「ソングス・フォー・ドレラ(90年作、サイアーレコード発US盤)」
である。

ドレラって誰ら?
なんてしょうもないギャグがつい口からもれるが、
ドレラとは何を隠そうベルベッツの立役者であり、
ポップアートの巨人、アンディ・ウォーホル!
その人のこと。

(ドレラとは彼のあだ名の一つで、ドラキュラとシンデレラを合わせた造語だそう。ただし本人はこのあだ名は好きではなかったらしい)。


つまりこのアルバム、当時(87年)亡くなった
ウォーホルの葬儀で再会したルーとケイルが
ウォーホルへの追悼の意を示す為に作られた作品なのであります。

タイトルに違わず、まさにウォーホルに捧げられた作品で、
歌詞はウォーホルの人生をルーが抜群の詩心で
ストーリーテリングした内容となっており、生まれ故郷の風景、
ポップアートの量産者としてのウォーホル、
ファクトリーでの活動、彼を襲った銃撃事件、巨匠となった彼の心象、
そしてその死とルーとケイルからの彼への哀悼……と、
まさに「アンディ・ウォーホルに捧ぐ」という作品なのだ。

筆者が称賛したいのはこのアルバムが
ウォーホルへの追悼をベルベッツの再現という形ではなく、
当時のルー&ケイルのコラボレーションとして為された事にある。

このアルバムは文字通り
ルーとケイルのふたりだけで制作されており、
ルーはボーカルとギター

(大半をエレクトリックでプレイ、但し、アコースティックライクな音とエフェクティヴな音が半々)


をプレイし、ケイルはボーカルとアコースティックピアノ
をメインにシンセとビオラを少々。
ドラムもパーカッションもなく、二人だけで作られたにもかかわらず、
見事に音楽として成立している。

聴くと分かるが、おそらくオーバーダブも大してしていない。
歌とギターと鍵盤、そこにディレイやリバーブの処理
それだけできちんとリスナーを引き込む音になっているのである。
これはベルベッツ以降、
ルーとケイルがそれぞれ積んできた経験値がなければできない。

お分かりのことと思うが、
ギターとピアノのみ、という組み合わせ、
ブルースやジャズでは定番の編成であると同時に
ミュージシャンの実力が試される編成でもある。
ルーとケイルがこの編成でアルバムを制作したのは
「今なら二人だけでもウォーホルを納得させるだけのことが出来る」
という確信があったからに違いない。

まさにベルベッツ以降、
それぞれに歩んだ二人の道がウォーホルの死によって
交差したことで生まれた傑作、それがこの
「ソングス・フォー・ドレラ」だったのである。


(このアルバムで自身のサウンドの方向性を再確認したルーは92年に名作「マジック&ロス」を発表。ケイルは90年にこれまた名盤であるイーノとの共作「ロング・ウェイ・アップ」を発表。以降の二人の方向性のキーとなったアルバムでもあったと云えよう)

ぜひ一度は聴いてみて欲しい傑作なのだが、
タイムリーなことにこんな記事があった。

「ルー・リード&ジョン・ケイルの90年コラボ作をステージ上で再現したライヴ映像作品」 

11月14日午前9時30分〜無料配信」 http://amass.jp/141232/

おお!
ドンピシャで「ソングス・フォー・ドレラ」のことじゃないか!
諸君!こういうのを巡り合わせという!
きっかけは配信でもいい。是非聴いてみてくれ。
そしてそこからルー、ケイル、そしてベルベッツの作品に触れてみてくれ。

《ハウリンメガネ筆》



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