「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

「Jerry'sギター」代表&編集長「MASH & ハードパンチ編集部」が贈る毎日更新の「痛快!WEB誌」

ジョーカーウーマンの「明日もボブで狂うわよ!」(第七回) 2019年春ヨーロッパツアー雑感(完結編)

2019-09-05 09:31:09 | BOB DYLAN

遅い。
遅すぎる。。。

これを書いている8月31日現在、未だボブ・ディラン秋ツアーのアナウンスがないのだ。

「ボブがツアーを辞めるわけない」

と高を括っていた世界の「ボブ中」達も今週明けから、ざわつき始め、、、
「大幅に減らすのでは?」と不安が蔓延中。

かく言う私も2020年のイタリアの某町のフェスに「ボブ・ディラン呼んじゃうんだ♪」と市長か誰かが自慢したニュースを聞くまで、不安を通り越して絶望にまで達しそうな状態だった。

秋は最悪ないかもしれないが、Never Ending Tourは終わらない!

多分、これが掲載される頃には遅れて始まる秋ツアーのアナウンスとなってることでしょう。
(であって欲しい!)

さて、もう夏も終ろうとしておりますが、今春ツアーパリ・ウィーン公演の最終回です。

初日のハプニングは5/2-5/5に渡っての報告の通り。

まとめると、観客が写真を撮っていて(2階席から観てた人の話では1階の客席から誰かがフラッシュをたいていたのをボブが問題視したとか)
ボブは演奏を中断して注意をした。
初日のBlowin' In The Windの4分の3を聞き逃したが、何しろ、ボブ・ディランが久しぶりに観客に向けて喋ったことだし、ボブは何をしてもカッコいいし、居合わせてラッキーだった。
(ただし、当日現地では、ボブが倒れたのではないかと一瞬思い、とても怖かった。)

さて、動揺は去らないながら、ボブが無事であったことに深く感謝しながらのウィーン2日目。
会場内に入ると、なんとピアノの蓋が上げられ、ライトは明らかに暗くなっていた。
チャーリーの顔、ドニーの顔はハッキリ見えるのに、ボブの顔だけが薄ぼんやり。。。

前日の私たちの打ち上げでは
「明日から鏡(※)が復活したリして」との冗談も起こっていたが。

(※)2010年前後ステージに鏡が配されており、「写真対策?」「魔よけ?」「アート?」「嫌がらせ?」「自分を見ろとのメッセージ?」と諸説展開されたが、いつも間にか消えていった。
また開演前に大きな鏡を配置する係の女性スタッフは敬愛を込めて「ミラーガール」と呼ばれていた。

恐らく400-600ユーロを支払ったと思われるVIP席の観客が暴れ出すこともなく、何事もなかったように上品にウィーン2夜目のショーは進行。またこの日はアンコール曲時も誰も立たず先生に校長先生に叱られた小学生みたいに静かに鑑賞していた(勿論声援はあるけれども、雰囲気的に)。昨日のできごとのせいか?

しかし、この日は素晴らしく勢いのある演奏で、全曲最初から最後まで圧倒される。
「怒った顔が綺麗だね」というからかい言葉があるが、実際興奮すると顔がくっきりシャープになり綺麗に見えたりする。

ボブが怒ってるかどうかはわからないが、パリとは全然違う路線の隙のなさ、目の覚めるようなエネルギッシュな演奏、火山噴火のように噴出する言葉達の連続、硬質な声が、心持ち緊張した客席によく響いていた。昨日より音質もグッド。圧倒的に良い。
忘れられないようなグレイトなショーだが、時間が経つと人が覚えてる「2019年のウィーン」といったら、初日の出来事になるのだろうな。

ボブ・ディランはたまに怒らせた方が良いのだろうか?

かなり昔の例になるが、過去ブーイングされたイギリス公演も研ぎ澄まされすぎてた怖いほどの”何か”だったし、ボーンアゲイン時代も折衷案を取り出した80年半ばよりも、それ以前の賛否両論の中、自分の道を突き進んでた頃が、やはり怖いほどの”何か”だった。

まとめとしては、2日で色々観れてよかったと思う。

・久方ぶりに観客に喋るボブ
・つまづいて転倒しそうになるボブ
・文句無しの絶品ショー

一つだけ、帰国後、日本語に訳されてるニュースに違和感があるので、そのことを。

>「演奏か、写真か、どちらかだ。わかったか」と観客へ向かって一喝

出回ってるビデオを見るとすぐに判ると思うが、
ボブはこの日も含め、エレガントで知的な立ち振る舞いをする。
この日本語のような乱暴なニュアンスはない。

ボブは仕事に関してはとても厳しい人なんだろうな。
毎日真剣に満足いく音楽を作り出そうと全霊を傾けてるようだ。
(お客さんを満足させることより、ボブが納得いく音楽を表現することに力点がおかれているところが素敵だ。永遠のストロング・スタイル!)

ボブが観客にも真剣に、全霊を傾けて聴くことを期待しても不思議では無いし、
ボブ・ディランはそれに値すると思う。
(写真も見たいが)

そんなボブが愛(いと)しすぎる。
私はボブの事は理解できないし、理解する必要もないと思うが、
とにかく愛しすぎる。

その後もツアーは続き、「素晴らしかった」との報告が続く。
スペインに入って、現地でディランの公演があるという報道も色々されてる様子がネットを通して入ってくる。

日本では考えられない程、ヨーロッパのボブ隠匿方針は緩く、ツアーバス、会場の出入り、公園に私服でいるボブの写真などどんどん流出していた。

ビルバオ(Bilbao)という街では、まるでボブサイドがOKを出したかのように、大々的に写真が流出し話題を呼んでいた。(真相は判らないが、いつもよりボブの服装がパリっとしていたのが気になる。ホームレスの人と間違われたり、が通常仕様のボブであるのに)

その夜、残念ながら私の好きな”Cry A While ”は姿を消し、何年ぶりかの”Dignity”に5曲目を明け渡すこととなる。

1989年の名盤 Oh, Mercyのアウトテイクになる人気曲。
この曲を知ってる人々の脳裏に閃くのは勿論

”Dignity never been photographed”

という歌詞しかない。ウィーンの記憶も生々しい今なら。

昼は写真を撮られて、夜のショーでこの曲。
遊んでるに違いない。

オリジナル録音のアレンジに近い仕上がりで、久しぶりの登場ながら、バンドもヴォーカルも素晴らしい(素早くアップしてくれたテーパーさんに感謝)。
ボブは後半、歌詞があやふやになってきたのか、有耶無耶に歌ってる。。。いつものボブである。
(写真の歌詞のところで、また再び元気良く歌いだしていた。やはりここを歌いたかったのか)

2019年春ツアーは、色々盛りだくさんで、ハプニングも含むツアーとなった。
シナトラ曲をやり続けた数年間も確かに良かったが、殆どのファンはオリジナル曲を聴けないことが不満であったと思う。

シナトラ曲が減って行き、徐々にオリジナル曲と入れ替わり、前年秋のツアーでほぼ入れ替わりが終わった様子。
これからまた、色んな曲を色んなアレンジで披露してくれることになると思う。

今のボブにこそ、歌って欲しい歌が色々あるが、
ボブの余りの本気ぶりに、ボブが本気を出せるなら、もうどんな曲でも、ずっと同じでも何でも!
ボブが心置きなく表現できる好きな曲をやり続けて欲しいと思う。

ツアーがいつまでも続きますように!

さてその後、ポルトガルの地方都市ポルト公演も、かなり盛り上がった様子。

この道数十年の敬愛する大先輩オッカケ女史の
”The Best” "What a show! What a night!"
との、まるでうわ言かのようなレビューも本気で超名演なんだと深く思い知らされる。。。

この日全体的な観客の声援も素晴らしかったらしいが、終演後も特に熱かった最前列左側の客のほうにふらふら?ひょこひょこ?と歩いて行き、彼らに向かって手を広げ挨拶したという。

更にあろうことか!ボブが両手を口に、そして広げて「投げキス」したと言う。
(と言う、、、というかYouTubeでビデオ観た。今回の写真はビデオからスクショ)

観客の時機を得た声援もとても大切だ。
アーティストだけがコンサートを作るに非ず!
一人奇声を発し、周りが誰も呼応しない時、非常に辛いものがあるが、ボブと何かが合致したような時の報いは計り知れない。
最前列の件の観客は知人であり、彼がこの夜の観客を引っ張ったのではないかと思うくらい、、、いつも凄い。
実際の所は何が起こったのか判らないが、取りあえず、彼には拍手を送りたい。

2019年春ツアー雑感   完

( 企画・編集・校正・加筆リライト「Mash」)
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ゲスト・ライター陣紹介
〈ジョーカーウーマン〉
日本を代表する
「ボブ好き5人衆」
の一人。
 
お金が有ればもちろん、
無ければローンを組んででも
海外まで出掛け
「ボブ・ディランLive」
をGetsし続ける「重鎮」
 
俺「Mash」とは
「ボブの音楽的部分」
そして
「ユーモラスに笑える部分」
にて合致!
 
今回の新連載で
より深く「ボブ」を掘り下げる!
 
ジェリーズ軍団では
「Starman☆アルチ」
「ハウリンメガネ」
と共に、音楽専門ライター陣
「ロック・マニアックス」
を2019年新規結成。


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