「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

「Jerry'sギター」代表&編集長「MASH & ハードパンチ編集部」が贈る毎日更新の「痛快!WEB誌」

《マシュメガネ対談》 いよいよ本命!ボブ・ディランの新作『ラフ&ロウディ・ウェイズ』を語り尽くす!

2020-08-07 14:41:25 | 編集長と副編集長の対談「マシュメガネ対談」
 
 

《ハウリンメガネ》
いやぁ!素晴らしいですね!
{ 編集長「Mash」}
何だ、何だ? 藪から棒に!
《 メガネ 》
何が?じゃないですよ!ボブですよ!ボブ!
新譜!『ラフ&ロウディ・ウェイズ』!
{ 編集長 }
おうおう、その話ね。
《 メガネ 》
やだなぁ!そんな軽~い返し。平然とした顔しちゃって〜!
内心穏やかじゃぁ無いんでしょ?
{ 編集長 }
いやぁ「ボブの新譜」で話そう!
と君が言うから急いで注文して、昨日届いたんだよ。
《 メガネ 》
……はい?
(しばし編集長とメガネのやり取りが続く……)
ええっ、発売したのを知らなかったぁ?!
{ 編集長 }
なんとなく「急に新曲を発表した」って噂は
多分どこかで聞いたような気がするんだけれど、
わざわざそれで「急いでネットで聴く」なんて俺しないしね。
敢えて自分で情報も取らないから、Newアルバムとは知らんかったよ。
《 メガネ 》
……まあ、あなた必要以上にネット見ないしねぇ。
コロナで人にも会わんだろうから、知らんでも無理ないかぁ……
でも新聞やラジオでも情報って出なかったの?
{ 編集長 }
それが、ラジオでボブなんて特番以外流れないし
新聞も、どうやらTV欄の所に広告が出たみたいでさ。
ほら、我が家はテレビ無いから、関係ないじゃない(笑)。
《 メガネ 》
ううっ、さすがの昭和アナログ人!(笑)
私も一ヶ月ぐらい前に「ボブの新曲」がいきなり発表されて、
こりゃ「前から噂のあった新譜」が出るな、
と思ってウォッチしてたから気づいたんですけどね。
{ 編集長 }
と言うことはLPで買ったんだね?
《 メガネ 》
買いましたよ!当然アナログで!
{ 編集長 }
俺はボブって「訳詩が無いとイカン」と常々思っていてね。
だから、最初は必ず「日本盤CD」を買うんだ。その後にアナログで買い直す。
《 メガネ 》
じゃあ、珍しく編集長が「デジタル音」ということで、
私の「アナログ感想」垂れ流し大会になりますが、よろし?
{ 編集長 }
いや、ソレがそうでもないぞ!ボブの近年作は「CDでも音は軟らかい」のよ!
2016年作の『フォールン・エンジェルズ』もそうだったけれど
最近のボブは「CDでも良い仕上げ」をしていると思うぜ!
《 メガネ 》
じゃあ、内容に行きますが、とにかく「びっくりした」のよねぇ。
こんなに「重い音」で始まるアルバムはないですよ!
一曲目の『I Contain Multitudes』が鳴った瞬間、
部屋の空気が一気に変わったもん!
{ 編集長 }
ストーンズがカッコ良く歌詞に出てくるヤツね!(笑)
逆に俺は多くのファンが体験したように
ワザと新曲の『Murder most foul』から聴いたんだよ。
後でも話すが、コレには信じられないくらいグッと来たね!
《 メガネ 》
今回はとにかく全体的に曲がシンプルなんですよ。
メロディもコード進行もシンプルだし、バンドも一丸となって
バッキングをすごーく丁寧にプレイしている。派手なフィルなんて全くない。
バンドはひたすら一丸となってバックを刻んで、
その上でボブが歌っているだけ……
なのに全く聴く側の気が逸れない!
{ 編集長 }
ふむ。俺は「最近のボブ」という感じが第一印象かな。
もちろんご存知の通り、ボブって「特別な存在」なんだけれど
近年の「安定したボブ盤」というべきだと思うな。
ただひとつ「詩の面が強烈に際立っている作品」ではあるよね。
それと君とは逆だが「今までの音作りの延長」ながら
「コード進行に微妙なヒネリが各曲内で多数見られ」たり、
「ただのブルース進行ではなかったり」と興味深い部分も多いよ。
《 メガネ 》
私は断言します!今回のアルバムは「グルーヴの塊」です!
ここまで「グルーヴで押し切ってる」そんなボブのアルバムってないんじゃないかな。
私、ちょっと思いつかない……。
{ 編集長 }
そうかなぁ。「タイトさ」は間違いなく継承されていると思うけれど・・・
俺は大名盤『Time out of mind』から始まった「あのグルーヴ」が土台として、
今までずっと続いて来ていて、それが「久々のボブ新譜体験」でリスナーが、
グッグット引き寄せられたんじゃぁ無いかなぁ、と思うんだよね。
まあ、この辺りは君がアナログ盤で聴いたからこそ、
っていう感想もあるかもしれんがね。
《 メガネ 》
なるほど。ちなみにレコーディングはライブと同じ面子ですね。
チャーリー(g)、トニー(b)、ドニー(steel等)は『テンペスト』と
同じですが、今回はスチュ(g)とジョージ(dr)が抜けて
ボブ・ブリット(g)とマット・チェンバレン(dr)が参加。
そういやジョージって病気で抜けたみたいだけど、大丈夫なのかな?
{ 編集長 }
さっきも言ったけれど「核の部分」って結局は「ボブの音かどうか」だろ?
で、この「ボブの音」って前述の『Time out of mind』からずっと続き
この新作まで継承されている。だから、多少のメンバーチェンジって、
さほど盤への影響は感じないよね。「ボブが求めた音をバックは出す」というのが、
「最近のボブ作」には徹底されているから安定感にもつながっているんだよ!
《 メガネ 》
確かに。ライブの前評判だとドラムがマットになってから
「随分とロックに寄った」って評を聴くけど、
このアルバムを聴く限りそんな感じしないですよね。
『テンペスト』より、『シャドウズ〜』の方向。
「アメリカン・ルーツ・ミュージックの集大成」ってところでしょうか?
{ 編集長 }
「ボブの言葉」と「アメリカのルーツ音楽」が合わさると、コレになる!
そんなアルバムですよね。ただ、恐れずに言えば本作って、
「いつも以上に個人的な詩の世界に重点を置いたもの」だと俺は思っているよ。
それと「スタジオとライブが違う」ってのは当たり前で「気分屋ボブ」でイイと思う。
あくまでパフォーマンスはオーディエンスありきだから、さすがのボブでも
「変化をつけたくなる」コトもあるんでしょう。そこが全てではないから。
《 メガネ 》
曲名でオッ!となる『Goodbye Jimmy Reed』は「がっつりバンドサウンド」
だけれど、ロックよりはむしろシカゴ・サウンドだと思うし、
やっぱりライブだとこういう曲は勢いが出ちゃうのかね?
あー!言ってもしゃーないけど、来日公演観たかったなー!チクショー!
失敬失敬、いや、つい昂ぶりました……
{ 編集長 }
この詩はとても面白いけれど、やはり「ジミー・リード」はボブ・リスナーは当然、
本ブログの読者様にもぜひ聴いて欲しいよね。
《 メガネ 》
ここまで「太い盤」だと一回聴いたら「ちょっと他の盤挟む」なり、
休みたくなるもんだけど、これ、連続でかけたくなるんだよね……
音がホントに麻薬的だから、ここ最近他の盤を聴けてないくらい。
何度もヘヴィーローテーションしちゃってる……
{ 編集長 }
ソレは分かるよ!ただ、「ボブの作品は全てがそう」だと思うな。
特に「近年の『Time out~』以降の作品」って俺には充実している様に思える。
逆に10代の若い時は『Planet Waves』や『Desire』とか、とにかく好きだったんだよ。
でも今は「その頃を思い出して懐かしむワケ」じゃぁ無いし、
「思い出」だけを求めたら、それこそ「聖子ちゃんでいい」ってなる(笑)。
だから、「近年のリアルなボブ・サウンド」がダイレクトに染みるんだよ。
そういう年齢に俺もなったって事かもしれないが、「音の重さ」や「充実具合」は
本当に素晴らしいよ。ヘンな言い方だが「邪魔にならないし、クセになる盤」!
《 メガネ 》
私は今でも『Desire』なんてガンガン回せますよ!
{ 編集長 }
ただ、やっぱりあの頃よりも「サウンドの重さ、深さ」そして「詩の世界」が
本作も含めて素晴らしくてね!特に本作は「ボブも確実に死を意識しているなぁ」
って思える・・・そんな歌詩が何曲かあって。御歳80だろ?「円熟の極み」だと思うよ。
《 メガネ 》
ラストの『Murder Most Foul』なんて時間だけならプログレ並みに曲が長い!
LP片面丸々使った16分超えの大作ですよ?
この曲もひたすらシンプルなバッキングと「ボブの歌」だけ。
なのに一切テンションが弛まない、というか聴き手をダレさせてくれない!
前回の来日公演で喰らった「あの凄まじさ」が、まんまパッケージされてる!
{ 編集長 }
正直、この曲は「とんでもない曲」だな・・・・。
「この一曲で今までのボブを軽く超えて来た・・・」そんな印象なんだよね。
俺はこの曲だけで「本作を買って良かった!」と思ったくらいだよ。
君の言うサウンドはもちろん、「ビートルズを皮切り」に
「数々のミュージシャンと歌」を登場させる詩も信じられないくらい叙情的だし、
これまた君が言うとおりの大作だけれど、何度も何度も俺はこの曲を聴きたくなる!
確実に魔力があり、それってやはり「音楽への愛」「シニカルな目線」
そして「死への階段」が今のボブには見えるからなんだ、と思う。
《 メガネ 》
とにかくバンドとボブの「歌の仕上がりっぷり」が凄い。
今が全盛期って言っても過言じゃない。あと特筆すべきはやっぱりドニー!
ペダルスティールをメインにマンドリンとかアコーディオンも
存分に弾いてるんだけど、ドニーのプレイが今回のアルバム全体の雰囲気を
より支配してると思いますね。ものすごくウェットな、しっとりした音。
それでいて「鬼のようにタイト」!
{ 編集長 }
俺は正直サウンドよりも、説得力も含めた「ボブの歌唱力」というか「言葉」が
もう、本当に「エグイくらい」伝わって来てしまうね。
コレは「シンプルな詩で深さを語る」っていう「微妙な詩の変化」にも
十分に表れているのではないだろうか?
『Murder most foul』は確かに大作だけれど、詩はいたってシンプルで
英語にアレルギーがある日本人でもいくらかは分かるくらいでしょ? 
そこがまた伝わって来るんだよ!
「トミー聞こえるかい?私はアシッド・クィーン」
「『ナンバ-9』をリンジーとスティーヴィー・ニックスのために流して!」
って、もうこんな言葉遊びの連続だけれど「音楽史に残る名曲と人物」を
「ケネディ大統領の死」を土台に描かれ続ける。この曲は言い過ぎだが
「ボブの遺書・・・」みたいに聴こえる。それは俺の中で「感動の嵐」に陥っているよ。
ほら「レイ・チャールズ」が死ぬ直前の伝記(正確にはインタビューだが)で
「レッドベリーやナットキングコールからパクッたんだよ。」と
「様々な偉人を叩き台にして自分が成功した」ことを懺悔するじゃない。
ボブのこの曲には「懺悔の様子は当然無い」までも「音楽へのリスペクト」と
「音楽を後世に残す」という意味が痛いほど込められているように思えるんだよ!
《 メガネ 》
なるほど!まだ聴き込んで日が浅いし、歌詞もちゃんと読み込めていないから
今後変わるかもしれないけど、今時点での私の総評はサウンド的にも
「近年のボブの最高傑作!」ですよ!
{ 編集長 }
俺はこの曲『Murder most foul』に尽きるな!この一曲の中には
俺たちが「一生掛けて行おうとしている」そんな「良い音楽の伝達リスト」がある!
「この曲に出てくる人や曲たち」を片っ端から聴いて欲しいね!人生が豊かになる。
《 メガネ 》
そう言えば、今回「LPスリーブ」に付いていた写真がカッコいいんですよ!ほら!


{ 編集長 }
あれ、CDにはソレ無かったぜ。
《 メガネ 》
この人はやっぱりストラトが似合うなぁ!
「…ボブ、最近のライブだとギター弾くんだよね…」
あー!チクショー!コロナのバカヤロー!
ギター弾くボブ観たかったよぉ~! 観てぇよ~!
{ 編集長 }
まあまあ、落ち着いて(笑)!
とにかくコロナが収束するまで「ボブが生きていてくれる」ことを願うよ。
コレばっかりは全世界共通だから、俺たちは順応するより仕方がない。
実際それまでコレを聴いて「自分達の人生を見つめ直す」チャンスなんじゃないかな?
本作が「コロナ禍」で出されたことは「全世界にとって大きな意味が有る」
と、俺は今、そう思いながら聴いているよ。

(終)



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