「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

「Jerry'sギター」代表&編集長「MASH & ハードパンチ編集部」が贈る毎日更新の「痛快!WEB誌」

明石のブルースマン「ハウリンメガネ」が贈る…「どこまでもヴァイナル中毒!(第16回)」今回は「ブライアン・イーノ(ENO) 第1回AMBIENT1 MUSIC FOR AIRPORTS」

2019-04-19 12:51:20 | 「ハウリンメガネ」の「ヴァイナル中毒」&more
やあやあやあ、読者諸賢、お元気?
ハウリンメガネである。
 
新元号も発表され、
デル部長のギターショップ
「Cat Sound Guitar」も無事オープン!
浮足立つような気分の四月である。
 
春の陽気に揺られながらぽつねんと
「さーて、なーに書こっかなぁ」
と考えていた私だが、はたと気づいた。
 
「いかん!あの話をしとらんじゃないか!」
 
もうタイトルでお分かりだろう!
今回こそ昨年から散々お待たせした
イーノの話だ!
 
ブライアン・イーノ。
ロキシー・ミュージック!
のキーボードプレイヤーとして世に出、
自ら「ノン・ミュージシャン」
を名のるこの男が世間に与えた影響は
非常〜に大きい。(財津師匠風)
 
なにせ、
U2、トーキングヘッズを筆頭に
多数のアルバムをプロデュースし、
ニューウェイヴの時代を作り上げた男であり、
あのデヴィッド・ボウイのベルリン三部作
に関わった男であり、
アンビエント・ミュージックの概念を
メジャーシーンへ持ち込むことで
近年における音響派の流れを作った男でもあり、
そして、世界で最も耳にされる音となった
と言われているWindows95の起動音
を作った男でもある。(フゥ〜 長かった!)
 
(なお、イーノの盟友にして、筆者の敬愛するミュージシャンであるキング・クリムゾンのロバート・フリップ先生はWindows Vistaの起動音を作曲している。筆者がもはや骨董品と化したVista搭載PCを処分できない一因でもある…)
 
そんなイーノの代名詞ともいえる
一連のアンビエントシリーズの第一作目が
この「AMBIENT1 MUSIC FOR AIRPORTS」
(UK org)である。
 
ジャケットを見た段階で、
「おおぅ、なんか小難しい気配がするぞ」
と思う方もおられるだろう。
なにせ曲名も
[A-1]1/1
[A-2]2/1
[B-1]1/2
[B-2]2/2
と、味気も素っ気もあったもんじゃない。
 
 
「なんじゃい、現代音楽か何かか、これは?」
と思った方。半分正解。
 
このアルバム、実はタイトル通り、
イーノが「空港にふさわしい音楽」
というテーマで作ったBGMアルバムで、
ジャケットや曲名も意図的に記号性を強調したものとなっているのよね。
 
なお、A面B面ともに曲間に30秒のブランクが設けられていることからも、この作品が実際にBGMとして使われることを意図しているのが分かる。
BGMは単独で成立するものであり、
連続性は必要ないからね。
 
ちなみにジャケット裏の曲名とともに描かれた
図形はそれぞれの曲の機能性を表しているそうな。この辺りのケレン味、やっぱりフリップ先生と気が合うのが分かるなぁ(笑)。
 
空港における不安感を軽減する、
という意図のもと制作されたらしいのだが、
その中身はイーノお得意の「テープループ」
による、ザ・アンビエント!
な出来栄え。
 
A面、1/1
はピアノがメインとなるテーマを
大きな周期でポツリ、
またポツリと奏でるのに合わせ、
穏やかな音色のシンセサイザーが
それを追うようにうっすらと滲むように響く。
 
とても美しい曲で、特に朝日が昇る直前、
夜が白みだした時間帯に最高にマッチする。
そんな音だ。
(筆者はこれが空港でのメインテーマとして作曲されたと睨んでいる。いつまで聴いていても飽きない)。
 
続く2/1
ではコーラスとシンセサイザーが
等価に音を紡いでいく。
 
個人的には(これはどちらかといえば不安を煽るのでは?)と思ってしまう曲調なれど、
いやいや、聴き進めていく内に不安の中からセンチメントな切なさが顔を覗かせる。
おそらく空港での別れをイメージしているのではなかろうか。
 
盤を返してB面。
1/2では再びピアノが登場。
今度はコーラスとともに憂いをおびたメロディを奏でる中、徐々に、本当に徐々にその音が静謐な優しさと寂しさへ変わっていく。
これはクロージングテーマだろうか…?
 
そして最後の2/2。
これはホルンか?ホルンを模したシンセか?
いや、どちらでも構わない。
これがクロージングテーマだ!
 
幾多の旅客を送り出し、
そして迎え入れた一日が終わる。
全ての人々の出発と帰還を祝福するように美しいメロディが柔らかく、豊かに流れ、消えていく…
 
ジェットストリーム!
 
…いやはや、素晴らしい。
空港でなくても家で延々聴いていられる(なんならちょっと瞑想状態に入ってしまう(笑))、アンビエントの教科書と呼びたくなる超名盤である…
 
とまあ、ここまで読んで
「じゃあ、それが実際に空港でどう機能するの?」と思った方もおられるだろう…
 
というわけでやって参りました神戸空港!
 
 
関空や伊丹空港の陰に隠れて
イマイチ存在感の薄い神戸空港だが、
なんのなんの、アクセスの良さ
(神戸三宮からどの経路でも20〜30分!)
から利用客数も多く、ひっきりなしに人が往来する関西三大空港の一つである。
(なお空港へ向かう途中にはかつて世界一として名を馳せた「スーパーコンピュータ京」や、関西でも有数の動物園である「神戸どうぶつ王国」もあるぞ!)
 
さすがにアナログ盤とプレイヤーを
そのまま持ち出すわけにはいかないので、
盤をウォークマンに録音して持っていった。
 
アナログ盤至上主義の私ではあるが、
ケースバイケースでこういう物も利用する。
 
そもそも今回のテーマであるイーノ自身、
デジタルの利点をずっと研究し続けている人であり、皆様も、是非筆者のアナログ派としての言葉を鵜呑みにせず、ご自身で咀嚼して頂きたい。
(まあ、私がアナログ盤至上主義であることに変わりはないが(笑)!)
 
あえて外部の音が入ってきやすい
「オープン型イヤホン」をつけ、
周りの迷惑にならない程度の音量でプレイ開始…
 
(あ、こりゃ凄いわ…)
 
 
まず、当然のことながら、音楽自体が空港というスペースにとても合うことに気づく。
 
機能性と必要性が優先的に並べられる空港というスペースに
この音楽が流れると一種、神殿のような荘厳さすら感じる。
(徹底して必要性と機能性を追及したものは「神秘的な美しさ」を宿すことが往々にしてある。工場然り、エンジン然り、フェンダー社のギターデザイン然りだ!)
 
そして、音楽がアナウンスや会話の邪魔にならない。音楽が存在感を持ちながら主張をしない。
(これ、実は凄いことで、是非そのへんのスーパーなんかに行ってBGMを意識してみてほしい。一般的にBGMと呼ばれる音楽というものは存外に主張が強いことがわかるはずだ)
 
そしてこの「邪魔をせず存在するという要素」
がもたらす、なにより重要な事象が
「周囲の音が、曲の構成音として作用する」
ということだ。
 
周囲の会話、キャリーカートの音、アラート、アナウンス。
これらが楽曲の音と交わることで、
その場でしか成立しない
「一期一会のAMBIENT1」を奏でる。
 
つまり、「AMBIENT1」という作品は空港という場で奏でられることによって完成するのである。
 
これはまさにジョン・ケージ作「4分33秒」の思想とイコールであり、
作品外に存在する音こそが楽曲を構成し得ることを実践的に提示した作品であると筆者は断言する。
 
超個人な意見になるが、
筆者はアナログ盤の本質的な魅力はノイズにこそあると思っている。
ホコリや傷によるプチノイズ、
針を落とした時のブツノイズ、
場合によっては音飛びも含めていい。
 
既に完成された盤のクローズドな世界に
「偶発的に発生するこれらのノイズ」
が介在することで、初めてレコードは
「再生される記録」から「音楽」へと変化する、
そう考えるのは行き過ぎた考えだろうか?
 
筆者は行き過ぎとは思わない。
何故ならば、現にこの「AMBIENT1」という作品が雄弁にそれを知らしめているからだ。
 
イーノを語るということは音という事象が世界に何を表すのかを語る事でもある。
 
もしあなたが音楽というものに疲れたら、
この盤に針を落としてみてほしい。
楽曲ばかりが音楽ではない。
あなたを取り巻く世界は既に音に満ち溢れている。
 
…というわけで、当初は何回かの連作にしようと考えていたイーノについてのコラムだが、
今回の原稿を書いていて考えを改めた。
 
情報量が多すぎてとてもじゃないが、
連作はできない(笑)!
 
書ける時が来たらポイントポイントで書く
ということにする。
それぐらい「イーノの音は世界と密接にリンクしている」のだ。
 
イーノ?いーの?サイコーヨ!
 
ハウリンメガネでした!
 
( 企画・編集・校正・加筆リライト「Mash」)
-------------------------------------------------
ゲスト・ライター陣紹介
〈ハウリンメガネ〉
俺「Mash」の店「ジェリーズ」に
16歳の時に来店!
来店初日から「サン・ハウス」の話をし
俺に強烈インパクトを与える。
 
以後数々のバンド活動を続けながら
ソロ活動も「ハウリンメガネ」として活躍。
この明石のブルースマンが繰り出す
「ハウリンメガネShow」は一見の価値有り!
 
ジェリーズ軍団では
「AL」
「ジョーカーウーマン」
と共に、音楽専門ライター陣
「ロック・マニアックス」
を2019年新規結成。


最新の画像もっと見る