見るともなく茫と眺めていたら、中から若い二人連れの娘が出てきた。
一人は白いセーターの上からオレンジのカーデガンを羽織り、一人はざっくりとしたコーヒー色
のトックリに赤のマフラ―を巻いている。二人とも黒のスラックスだ。
手には布地の大きな買い物袋を下げている。
面立ちは違うが、あやはすぐに姉妹だと思った。
道を開けたあやの前を通り過ぎた二人が、立ち止まってふり返った。
年上のカーデガンの娘が、まじまじとあやを見て言った。
「失礼ですが、もしかして影山さんではありませんか」
返事を待たずに見返す視線に畳みかける。
「あやさんでしょう」
あやの顔に意識が戻った。
「え、まさか清子ちゃん。いや清子ちゃんだ。だったらあなたは千恵ちゃん」
あやは瞳を一杯に見開いて、マフラーの娘を見た。
意識のはずれでちょっとまずいなと思った。
二人の顔に同時に驚きと笑いが弾けた。
「私、清子!」
「あやお姉ちゃんだ」
千恵が恐る恐る言った。
三人ともその後の言葉が出てこない。
ただ茫然と弾けた笑顔のまま、見詰め合っている。
10年振りの再会は、互いに遠く去った時をたぐり寄せ、残る面影を探し合うことから始まった。