あちらこちら文学散歩 - 井本元義 -

井本元義の気ままな文学散歩の記録です。

№117 レ・ミゼラブル ユーゴ― リュクサンブール公園 ムフタール ジャンバルジャン

2020-05-17 14:10:23 | 日記
数年前のフランス語の授業で、尊敬する人を述べよ、と言われたことがあった。その時、僕はジャンバルジャンと答えてみんなを笑わせたが、冗談でもあり本気でもあった。日本でレ・ミゼラブルとジャンバルジャンを知らない人はあまりいないのではないか。超人的な力を持ちながら、優しくまた悩み多き人間臭い人間である。彼の生き方にはらはらし、物語の最後の彼の死はだれもが涙する。

全巻読み通すにはかなりの時間がかかった。20時間ほどかかったかもしれない。各章の最初は歴史がかなり詳しく書かれていてそれを越えるまでは物語りをよそにおいてしばらく我慢しなければならない。しかしそれも少年時代に読んだ物語があまりに印象的だから続けることができる。nhk テレビで数年前に見たが、その時はデバリュ「?」ごつい俳優だった。そしていままたテレビでやっている。映画は数年前にミュージカルで好評だった。何度見ても何度読んでも飽きない。

パリを散策するに、ジャンバルジャンの住処とか逃げた場所とか、一度辿ってみたいと思っていたがしないままだった。小説であるから架空の名前の通りや町だろうと昔は思っていた。しかしユーゴーが実際の街や通りを描ているということを知って、いつかたどりたいと思っていた。持っていた本には通りが書いてあるが今は違う名前になっているだろう。知っているところから入ればいい。そう思ったのは、僕の好きなリュクサンブール公園とムフタール通りが出てきてからだった。ムフタール通りは、ヴェルレーヌやランボーやヘミングウエイで好きだったし、リュクサンブー公園はそこで僕は何時間も、ときには8,9時間も座っていたことがあったからだった。
何度もいろんなところで書いたが、本の中でマリウス、コゼットの恋人、がムフタール通りを小走りに歩いて行った、などという文章をよむといつも胸が熱くなったものだった。公園でマリウスはいつも初老の男と痩せた少女が散歩しているのに出会う。最初はなにも気にしていないが、数か月後に出会うと少女は見違えるほどの美しい女性になっている。マリウスは即恋に陥る。僕にはこれがレ・ミゼラブル追っかけの最初だった。

ジャンバルジャンは北方の街からパリに入るのだが、市の南の門から入る。前科者の彼は身分証明書をもたない。このあたりは貧民窟が多く、また犯罪者も多かったので検問も逃れることができた。そしてーゴルボー屋敷という陰惨な集合アパートの安い家に住む。ここはムフタール通りを降り切ってプラスイタリーへ行く途中だ。いまは気楽な人気のカルチエだが昔は相当に汚かったらしい。どぶ川の傍に末期の病院や精神病院や刑務所もあった。いまはゴブラン織りのミュゼなどがある。親しいフランス女性が住んでいたのでそのミュゼに行ったが休みだったことがある。そしてそのあたりを散歩したがかなり古い家が壊されていた。ゴルボー屋敷ではなかったか。そこで彼は宿敵ジャヴェールに追われて逃げて修道院の匿われる。そこで数年を過ごした彼は、フォーブルサンジェルマンという界隈のプルメ通りに豪華な屋敷に住む。彼は昔身分を隠し大金を稼ぎある森に隠している。新しい家でコゼットと隠れて暮らすに十分だ。

ここからが僕の苦労の始まりだった。通りが出てくるが現存ではない。しかしユーゴーの文章には詳しくかかれている。いつか誰かにた尋ねたい、と長い間思っていた。先日、日仏会館の文学カフェで九大の倉方先生の話で、レ・ミゼラブルがあると聞いた。彼はヴェルレーヌの専門家でその時代のフランス文学に詳しい。この前も僕の「太陽を灼いた青年」と先生の「呪われた詩人」の出版で一緒のトークショウをしてた。素人の僕が厚かましく専門家に気楽に尋ねていいものか考えたがメールしてみた。最初の返事が「鹿島茂のレ・ミゼラブル百六景」という本を教えてくれた。挿絵入りで面白い。鹿島茂は確かに何でも知っている専門家だがそれだけに面白いがそれだけに好きではない。ただこの本は役に立った。
しかし現在の名前は分からない。また倉方先生に聞いた。詳しく教えてくれた。ジャンバルジャンが修道院を出て隠れて住んだ庭付きの屋敷はプルメ通り。そこから二人はリュクサンブール公園に出かけた。今はウディノ通りという。いまでも高級住宅街だ。このあたりも何度も散歩したが次にはゆっくり味わって歩きたい。あと2軒ほど彼は隠れ家を持っていたが最期を迎える家も知りたかった。ロマルメ通り。がそれもわかった。今は市役所の近くにある。アルシーヴ通りになっている。その辺はいまは住みやすい下町で昔友人が住んでいて訪ねたこともあったし、古いレストランも多い。当然昔と大違いだろうが今度行く時が楽しみだ。そこでかれは最後を迎える。マリウスとコゼットが訪ね、これから一緒に住もうと頼むがジャンバルジャンは満足そうにうなずいてそこで死ぬ。このあたりにたたずみその場面を想像したい。
学生革命家の集うカフェミュザンはサンミシェルの界隈だし、そこは僕も好きなカフェが多い。このカフェは架空だの名前だ。しつこいジャヴェール刑事が煩悶の後、身を投げるセーヌ川はシャトレのちかく。ここで僕は何年か前その橋の上から革命記念日の花火がエッフェル塔の近くで上がるのを見た。学生たちがバリケードを築いたカルチエはまたそのうちにだ。





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