北イタリア地方の稲作地帯、1948年という設定。田植えの時期になると、出稼ぎ労働で大量の女性がここに集結します。彼女たちはモンディーナ(田植え女)と呼ばれます。機械化されていなので、手で一本一本、根気よく苗を植えていく作業。それなりの収入にはなりますが、過酷な労働です。映画のなかではこのような忍耐が必要な労働は女性でなければできない、と言っているくだりがあります。
仕事をするには、契約をしなければなりません。映画の前半では、契約がとれない女性たちがいわばもぐりで割り込み、契約をとって仕事をしている女性たちと対立するシーンがあります。シルヴァーナ(シルヴァーナ・マンガーノ)は偶然知り合ったフランチェスカ(ドリス・ダウリング)に仕事をさせますが、それはフランチェスカに契約をとれない状態でまずもぐりこませ、そこで仕事の成果をあげれば、それを認めてくれて収入がえられるとの目算からの試みです。
この映画にはもうひとつ大きなストーリーがあり、それは偽のダイヤモンドをちらつかせてシルヴァーナを欺き、彼女を利用して、収穫された大量のコメを盗もうとする悪党ワルテル(ヴィットリオ・ガスマン)がその企てに失敗し、シルヴァーナに撃たれて死ぬが、彼女も自殺を図る悲しい結末です。
この映画は主人公のシルヴァーナの豊満な肉体が話題になりました。しかし、本当はそれはこの映画の評価にとってはあまり意味がなく、米作労働の厳しさが切実に描いていることこそが評価されるべきだと思いました。田んぼのなかでの対立する女性労働者の格闘シーン、水田でモンディーナのひとりが流産するシーン、自殺したシルヴァーナの遺体に女性たちが次々に一握りのコメをかけ弔うシーンは、いつまでも記憶に残ります。
監督:ジュゼッペ・デ・サンティス
原作:カルロ・リッツァーニ
脚本:C.アルヴァーロ、ジュゼッペ・デ・サンティス他
撮影:オテロ・マルテリ
音楽:ゴッフレード・ヴェトラッシ
出演:シルヴァナ・マンガーノ(シルヴァーナ)
ヴィットリオ・ガスマン(ワルテル)
ドリス・ダウリング(フランチェスカ)