ニセコのダチョウ牧場(第2有島だちょう牧場)

ダチョウの孵化から解体まで行い、命を頂く事、牧場を営む事で得た、学びや気づきを記録しています。

第2有島だちょう牧場と有島さん

2023年12月25日 | 日記
だちょう牧場は第二有島という名前がついています。

有島武郎さんという小説家が牧場の一部をかつて所有していたことに由来して名前が残りました。

当時彼はたくさんの土地を持っていて、農民に貸してお金をもらっていました。

このあたりの土地は農業を営むにはあまり良い環境ではなく、当時土地を借りていた農民たちの暮らしぶりも良くありませんでした。

有島武郎さんはとても色々なことを考えたうえで、彼は所有していた土地を農民たちに無償で解放しました。

彼はただ解放するだけではなく、農業をするために必要な空気や水や土地などの自然物は私有して自分の利益の為だけにつかうのではなく、人間全体の物であり、人間全体の役に立つようしなくてはいけないと言いました。また、分けられた人々はみんなで協力し、助け合って現在の困難な状況を越えながら、周囲に良い影響を与えられるようにと祈りました。

時が流れましたが、この考えは今も多くの人々に受け継がれて共感を呼び、有島武郎さんの考えはニセコ町に限らず多くの場所へ広がっています。

だちょう牧場はニセコ町に根付いている「相互扶助」という有島武郎さんが唱えた考え方に助けられ、今までやってこられました。

本当にありがたいですね。

だちょう牧場は入場無料でこれまでやってきましたが有料にした方が良いと何度も言われました。
その方が経済的な利益は出るでしょう。
ですが、有島武郎さんの自然物は私有するべきではなく全体の役に立つようにという考え方に共感するので、牧場を無料で開放し、老若男女問わず環境について考えてもらえる事は良いことではないかと思っています。

私たちが経済を優先し、自然をないがしろにしてきた結果が至る所に現われています。それでもまだまだ他人事のように考える方や今のやり方で問題がないと考える方が多いように思えます。

小さな牧場にできることは本当に限られていますが、有島武郎さんが唱えた理想や大切な考え方がつながってきたように、少しずつでも牧場に訪れる人たちやこうした投稿を見てくれる方々に牧場の取り組みを精一杯お伝えし、良い影響が周囲に届くように励もうと思います。

今年は有島武郎さんが亡くなってちょうど100年という節目の年なので、こうしたことを書かせていただきました。

最後に彼の農民達に残した文章を書いておきます。

長文を読んでいただいてありがとうございました。

「生産の大本となる自然物即ち空気、水、土地の如き類のもの。それらは人間全体で使うべきもので、或いはその使用の結果が人間全体の役に立つように仕向けられなければならないもので、一個人の利益ばかりのために、個人によって私有さるべきものではありません。我々の将来が、協力一致と相互扶助との観念によって導かれ、現在の不備な制度の中にあっても、それに動かされないだけの堅固な基礎を作り、我々の正しい精神と生活が自然に周囲に働いて、周囲の状況をも変化する結果になるようにと祈ります。」











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牧場の取り組みをサステナ旅という番組で取り上げて頂けました

2023年09月28日 | 日記






先日TVhさんのサステナ旅という環境に配慮した観光を行う番組で、牧場のことを取り上げて頂きました。

写真に写っているスギちゃんという芸人さん
とNORDの舟木健さんという俳優さんがいらっしゃり、だちょうさんや牧場の事をお話ししました。

サステナブルやSDGsという言葉が社会に浸透する前から、だちょうさんが環境に負荷をかけない畜産として有望ではないかと考え、取り組んできました。

今までの経験で、他の畜産動物に比べて必要とする栄養が少ない上に、おからや捨てられる野菜くず、ビール粕等を効率良く消化吸収出来るだちょうさんに与える事で、より環境に優しい持続可能な畜産ができます。

日本では「もったいない」という素晴らしい価値観を表す言葉があり、サステナブルやSDGsにとても親和性が高いと思うのですが、だちょうさんは無駄なエネルギーを使わず、他の草食動物が見向きもしない草や他の草食動物の糞も食べてエネルギーに変えられる能力を持った「もったいない」を体現している動物です。

私もだちょうさんを見習って、お店の運営も「もったいない」事はしないようにしてきました。

実はお店の机や椅子、棚等は拾ってきた物や廃材を修理して使っていますし、商品の売れ残りや廃棄が極力ない形にしています。

たくさん作ってたくさん売ることは目指せば、売り上げは伸びますが、フードロスを増やしてしまい、環境に負荷をかけてしまいます。
短期的には売り上げを上げられても、中長期的に見ればムリが出ますし、社会や環境に損失を与えたツケをなんらかの形で払わされてしまうと考えています。

まだまだダチョウ畜産の可能性の一端しか実現できていないので、偉そうなことを言って大変恐縮なのですが、これからも少しずつ前進していきたいと思います。

長くなりましたが、お時間あったら番組を是非ご覧ください。
日経チャンネルでも放送予定とのことで、北海道以外の方もご覧いただけるのでご興味ありましたら是非どうぞ。
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子どもたちに伝えたい逃げる事の大切さについて

2023年08月20日 | 日記
「逃げる事の大切さについて」

だちょうさんは逃げる事が得意です。

何か異変を感じたり、周りの生物が走り出したりしたら、脇目も振らずに走り出します。

だちょうさんは走り出した理由を思い出せないからバカだと言われる事もありますが、陸上生物で一番の長距離ランナーであるだちょうさんにとって、何故走るのか考えたり、異変を注意深く観察したりしている時間は無駄で、その間に走った方が、敵は疲れ果ててしまいますから安全です。

だちょうさんはとても良い目で周囲を見渡し、問題を察知したらさっさと逃げ続ける事で、地球上で恐竜に近い最も古い鳥として生き延びてきました。

“賢い”私達人間は、仕事の環境や人間関係のあれやこれやに悩まされた時、周りの目を気にしたり、将来への不安から今いる環境から離れる事に躊躇してしまいます。

けれども、古くは孫氏の兵法がいう「36計逃げるにしかず」やハンガリーのことわざ「逃げるは恥だが役に立つ」、最近の経済理論でも言われるように、逃げる事はとても効率的な生存戦略とも捉えられますし、脇目も振らずにさっさと逃げるという事が大変役に立つように思えます。

チャールズ・ダーウィンという進化論を書いた方が「生き残る種とは、最も強いものではない。 最も知的なものでもない。 それは、変化に最もよく適応したものである」と言っています。

だちょうさんは長く生き延びる中で、環境の変化に耐えながら他の“賢い”生物の絶滅を見てきました。

今悩んでいる方は、どうしようもない事をあまり悩み過ぎて疲れ果てる前に、だちょうさんを参考に誰かの目や意見を気にしないで、さっさと逃げ出して下さいね

子どもたちの夏休みが終わるこの時期、毎年子どもたちのメンタルヘルスが心配になるのでこんな事を書きました。

昔、フリースクールという学校の代わりになる居場所でボランティアをしていた事があります。

なんらかの理由で学校に通えない子や居場所が無い子がのびのび楽しそうに過ごしていました。

子どもひとりひとりの個性を尊重される場所はきっとどこかに有るように思えます。

牧場にたくさんいらっしゃって、楽しんでいった子どもたちが、どうか袋小路にたどり着いて悩み過ぎる前に、良い居場所にたどり着いて欲しいなぁと願っています。


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十年前の今日、初めてブログを書きました。

2023年07月22日 | 日記
10年前の2013年7月22日に初めてブログを書きました。

私はそれまでSNSで情報発信をしたことがなかったので、とても緊張していたことをよく覚えています。

文章が短かったですね(笑)

当時はくたびれたコンテナハウスに自動販売機を設置することになり、私はその販売準備を始めました。

その中で、だちょうさんの堆肥を利用した花壇を作り、観光にいらっしゃった方の眼を楽しませようと思いました。

写真は花壇をつくったときのコンテナハウスの様子です。

当時の牧場はダチョウの孵化や育てる技術の蓄積は進み、と畜して販売することができるようになりましたが、実際にどう進めていけば良いのか、誰にも分からない状況でした。
そもそも祖父を含めた親族全体はダチョウという畜産を事業化して続けていくこと自体に関心が少なく、ダチョウ産業全体の先行きも暗くなっていた時代背景も重なり、祖父が現役を退いたらだちょうさんや牧場がどうなるのか全く分からない状況でした。

私は精神科病院で仕事をしている頃から週末には牧場に通って働くことが多く、この場所の観光地としての価値を感じていました。

気軽に立ち寄って、のんびり過ごしながら動物たちのありのままの姿を楽しんでもらうことが現代の私たちにとってどれだけ大切な事なのか。

私が書いた最初の記事は花壇を作っていることを投稿したものです。
事業資金といえるものが無かったので、ホームページを無料で作成できるサービスを利用し、ホームページを始めたのもこの頃です。

当時から今までどうしたらこの牧場を続けていけるかを考えて、出来ることを少しづつ積み重ねてきました。

本当に色々なことがあって、学びが多い日々を過ごしてこられました。
このブログに書くという事もたくさんの出会いにつながって、また新たな学びにつながっていると思います。
これからも学び続け、少しでも皆さんを楽しませられる内容が書ければと思いますので、これからもよろしくお願いします。

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生き物文化誌学会の学会誌に写真と文章を載せて頂きました。

2023年06月02日 | 日記
去年参加させて頂いた生き物文化誌学会の学会誌が最近出ました。

牧場の写真を表紙に使って頂けました。

秋篠宮殿下が理事を務める学会で、国立民族学博物館の教授等、御高名な方々に混じって、私の文章や参加させて頂いたシンポジウムの内容が載っています。



とても興味深い学会であることを皆さんにお伝えしたかったので、私なりの解釈で生きもの文化誌学会のHP上にある説明を要約してみました。

「生きもの文化誌学会では生き物と人の関わりを日常生活、文化、環境など様々な次元で探求しています。

私たち人は生き物を食し、暮らしの中で様々に利用してきました。

森は動物を養い、動物は植物の受精や種子の散布を助けるなど、私たち人間を含む生き物は互いに影響し合い、地球の環境を保っています。

人は人だけでは生きていくことができません。

さらに生き物は神話や伝承、文学や芸術などの人の文化にも深く関わり合い、私たちの精神的な支えにもなります。

この学会で探求する様々な文化には私たちの先祖や世界中の民族が長年にわたって築きあげてきた自然と共生する「智」が込められています。

生き物とともに生きる地球の住人として、生き物と人の関わりをより深く理解し尊重することが地球環境の面からも大切で、この学会ではその豊かな「智」と情報に触れることができます。

なお、この学会は学者や研究者だけでなく、子どもたちをはじめとした生き物とその文化に興味のある人ならだれでも参加することができ、そういった色々な人の関わりの中で一緒に「生きもの文化誌学」を広めていけるよう願っています。」

以上は要約ですから、詳しくお知りになりたい方は「生きもの文化誌学会」のHPをお確かめください。

今号は牧場のお店の他、ニセコ町の図書館「あそぶっく」さんに置かせていただく予定なので、だちょうさんをきっかけに様々な「智」に触れてみてもらえればと思います。

皆さんに今まで色々とお伝えしているように、だちょうさんという生物種だけでも多くの学びがあります。

だちょうさんは、人間が乱獲したことによって、絶滅しかけた歴史があります。

それが今では世界各地で欠かせない家畜となっており、卵殻アートなどの副産物を生かす文化的な面でも人と密接に関わり、影響を与えています。

現在、環境の変化によってだちょうさんの個体数は減少傾向です。

世界の多くの生物たちが同じような状況に陥っていますが、こういった変化が人類の未来に影響を与える事は言うまでもありません。

人類は生物の枠を超えて様々な能力を獲得し、生息域を拡大し、既存の生態系に影響を及ぼし続けてきました。

私は今だからこそ、森羅万象に敬意を持ち、自然と共に在った過去の人類の歴史や文化を学び、現代にかろうじて残る生態系をいかに守り繋げていくかについて知識を深めるべきだなぁと思っています。


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