絵を描こう 旅に出よう

いつもわくわくしていたい

2020/06/14 川辺のおうちのおばあさんの物語

2020年06月14日 03時32分02秒 | 日記

パン屋さんになって一ヶ月半、だいぶ慣れてきたように思うけど、迷いはたくさん。今後の販路拡大をすべきかどうか(すべきなのは当たり前)、価格はこれでいいのか、(やけに安いのもあり、高いなーと感じるのもある)、配達はどうすべきか、一人のお客様のために一時間待ち続けるのはどうなのか、など、お人好しだなーと思ったり、親切に対応しようと思ったり。揺れ動く日々。

イラストのお仕事ももらったけど、あまりに何回もやり直しが要求され、最初から言ってください!と叫びたくなるのをぐっとこらえて何度も描き直す自分に、ほとほと、自分への思いやり、セルフコンパッションはないのか!と一人つっこみ。依頼者の方は何もないところから、私の絵を見ながらイメージを固めていってるわけで、どんどん新しいイメージが湧いてきてしまうらしい。二週間、暇さえあれば取り組んできてまだできてないのに、ギャラのお約束は一万円。おいおい自分、ボランティアしてる身分じゃないだろう。早い段階でお断りすべきだった。嫌われる勇気!
でも、朝はパン屋さん、午後は絵を描く、という人生の最後の計画が実現してる、と思うと嬉しい。パンの発酵を待つ間に、アトリエのピアノを弾いたりしてると、とても幸せな気持ちになる。だから、自分の絵本にそろそろ真面目に取り組んで、一年かかってもいいから、私の70年の人生の哀しみと愛を詰め込んだ物語を、作ろうよ。
こうやって文字にしてると、もやもやした気持ちがすっとしてきます。私とは違う感性のクライエントさんも、天から遣わされた切磋琢磨のための貴重な天使。そう思うことにしよう。
でも、次はギャラをふやしてもらいます!
 
3月の個展でたくさん絵を買っていただいて、そのあと、メルカリで作品が突然売れたり、イラストの依頼が来たり、すべて微々たるものだけど収入は収入。本当にありがたいと感謝してます。
新しい住まいは、一時的な宿だと思ってるので、よそよそしい。我が家、というスィートホームにはなりえない。猫や家族がいないからかもしれない。誰にも気を使わず暮らせる自由な生活。もう一人暮らしはやめられない気もするんだけどね。
いとこが亡くなった。87歳だった。小さい頃から仲良くしてたお姉さん、寂しいです。
ああ、こんなこと書いてたらふる里が懐かしくなった。
神戸に帰りたいなー。
なが~い旅してきた。
 
川のせせらぎが聞こえる。
この家は川のそばにあるのです。雨が降ると、水の音が大きくなります。
 
★★★★★★★
 
ある町の、川の辺りの三角屋根の小さなお家に、おばあさんが一人でくらしていました。
長い間、一生懸命生きてきて、たくさんの嬉しいことや悲しいことがありました。子どもが三人、一人は先に天国へ行ってしまったけど。あとの二人はそれぞれ遠いところでくらしています。
 
ある日、おばあさんは、川の流れてゆく水の歌を聞きながら、一つの決心をしました。
クローゼットの奥にある、ダンボール箱に詰まった50年分の日記と、いろんな人からのお手紙を全部捨てることにしたのです。
窓辺のゆり椅子に座って、箱から日記帳を一つ一つ取り出して、じっくり読んで、ゴミ箱に捨ててゆく。
お手紙は、お母さんから、お姉さんから、夫のお母さんから、お友だちから、いろいろあります。死んでしまった人からの手紙もあります。
二十歳のころのおばあさんは、若くてかわいくて、少しおバカで。三十歳のころは愛する夫との半分楽しい、半分辛い暮らし。三人の可愛い子どもたちを一生懸命育てました。
四十歳から二十年間は夫と二人、人生の試練のオンパレード。娘が死んだときは自分の半分が死んだなと思ったっけ。でもあとの二人の子どもたちのために、元気に、生きた。二人のの子は立派に大人になった。
六十歳、一人で生きる道を選んでシンプルシングル。そのためには働く!夜も昼も。
気づくと70歳。
 
何日もかかって全部燃えるゴミの袋に捨ててから、おばあさんは、「さあ!これで私には未来だけがあるわ!」と、ゆり椅子から立ち上がって、窓から川を眺めたのでした。川にはカワセミがすいっと飛ぶのが見えました。
おしまい。
 
 
 

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。