児童文学作家の齋藤惇夫さんの講演会の資料から学んだことを書きます。

「本を生涯の友とする子どもを育てるために」

という論考の一部を引用します。

 

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絵本の読み方に技術はいりません。

心を込めて読んであげればそれで十分です。

基本は、ともかく毎日読んであげること。

字が読める子どもにも読めない子どもにも読んであげること。

字が読めることと本が読めることは全く違います。

ゆっくり音声をあまり変えず、決して読んでいる最中も、読み終えてからも、質問したり説明したり、お説教したりせず、いわんや感想を聞いたりせずに、書いてあるとおりに読んであげてください。

(ついでに、読書感想文の宿題がでたら、どうぞ親が書いてやってください。

感動したら、言葉は出てこないものなのです。

子どもたちに、言葉を失うほどの感動をさせる、それが読書です。)

少なくとも小学校3年生までは、親と小学校の担任の先生が積極的に読んでやることが肝心です。

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教師やお子さんがいる保護者にとって、とても考えさせられる言葉の数々です。

私は読み聞かせが大事と分かっているものの、現実はほとんどできていません。

なかなかその時間がとれないのです。

教室の私の本棚に、読みたい絵本のストックはあるのですが。

私が実践していることと言えば、週1回の図書室での読み聞かせです。

1回、図書室を使える割り当ての時間があります。

そこに行くと、子どもたちはまず私の近くに集まって床に座ります。

本は私が選んで読み聞かせをしています。

今までは、1年生にも難しくないであろう短めの絵本を選んできました。

時期によっては教科書の内容に関連させ、動物が主人公の絵本を読んだり、乗り物が登場する絵本を読んだりしました。

ほとんどの子どもたちは絵本に集中します。

クラスの子どもたちが、1冊の絵本に集中し、物語の世界を味わう。

いい時間だと思います。

基本的にはにぎやかなクラスですが、読み聞かせの時間は、しっとりした空気が流れます。

 

先の齋藤惇夫さんの論考を読んで思ったことです。

   私は、毎日は読めていない。

   ひらがなを読むこともおぼつかない子がいて、読み聞かせも全く聞いていない。

そんな子に対してどうすればいいのだろうか。

   私は登場人物によって声色を多少変えている。

   言葉の意味を説明することもある。

   感想は聞いていない。

 

 

感想を「聞く、聞かない」という点に関しては、おそらく学校の教師は聞きたがる人が多いだろうと思います。

「感動したら、言葉は出てこないものなのです。」

という考えは分かりますが、国語教育としては、そうは言ってはいられない面があります。

私の国語の授業では、教材を読む前に、題名を読んで思うことを聞くことが多いです。

教材を読んで、「初めの感想」や「終わりの感想」を書くこともあります。

そこでは、おもしろかったことなどを、やはり言葉にさせたいものです。

「感動したから書けない」という発想は認めにくいです。

私のクラスで感想を書けない子は、ひらがなが読めず、物語を読み味わえていない子です。

 

「読み聞かせ」と「国語教育」は切り離して考えた方がよさそうです。

「読み聞かせ」では、言葉が出ないほどの感動を体験させる。

「国語教育」では、物語の感想をみんなで出しあって読みを深める。

 

それぞれの意味はあると思います。

教科書の載っている物語教材はそれほど多くありません。

読み聞かせを通して、感想は求めず、「言葉を失うほどの感動」を体験させたいです。