走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

15歳の決断: 性転換治療 その2

2018年12月13日 | 仕事
昨日の続き

再診に来た彼女は別人のようだった。違法薬物の使用を絶って3週間。初診で話したように両親にも治療開始の計画と気持ちを話した。

カナダでは意思決定出来るとみなされれば、医療の治療選択は未成年でも本人にあり、両親の承諾は必要ありません。しかし両親の賛成がある場合とそうでない場合では心と経済的支えがあるかないかに繋がるので、両親を阻害せずサポートチームになってもらえるよう働きかけるのが必須です。

で、母親は何も言わなかったけれど、父親からは

「お前の気持ちを理解するのは出来ないが、そうする事でお前が幸せになれると言うならすれば良い」と言われたそう。これは大きな前進です

男の体を持っている自分がこんなに嫌なのに子供だから何もできない、と感じていた無力感から、治療を選択する事ができる事を知り、嫌悪感を示していた父親に変化をもたらした。

なんてパワフルな経験でしょう!

これを読んでいて、15歳の子に何がわかる?と思うかもしれませんが、自覚している性と生まれ持った性の違いは精神的に及ぼす負が大きすぎます。

以前これの事例を書きました。

そして、性の不一致が確実な場合、体が女性化、男性化する前に治療を始めるのと、形成が完全に終了してから始めるのでは結果に大きな違いが生まれます。様々な要件をクリアすれば、精神と身体の両面で治療に踏み切る事は良い事です。


2回目の診察ではこれからの経過をさらに詳しく説明し、治療の副作用や成り行きをもっと詳しく話し、意思がどれだけ堅いのか、他の診断との鑑別など長い診療でした。

次は血液検査諸々。そして身体検査。

一歩一歩近づいていきます。うまくいきますように!


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。