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宝塚雪組「はばたけ、黄金の翼よ/Music Revolution!」梅田 [観劇感想(宝塚)]

宝塚雪組「はばたけ、黄金の翼よ/Music Revolution!」
2019年11月8日(金)梅田芸術劇場 1階22列センター


雪組2分割中だと思えないほどスターが豊富(ドラマシティでも思った。私は雪組ファンだから贔屓目入ってると思うけど)。ホールの音響が良いのかもしれないけど、歌が素晴らしい。トップコンビはもとより、みんなうまくなってないか?という気がした。
「はばたけ」は初めて見たけど、宝塚らしい作品。ヴィットリオは貫禄あって繊細でかっこいいし、クラリーチェは元気で可愛い。ファルコやジュリオも良い役になっていて見ごたえあり、特にジュリオの人物像が、原作より良いわ。ロドミアをはじめ娘役にも役があって嬉しい。まあ作りが古いことは否めないが、そのノスタルジーも楽しんだ。
Music revolutionも久々に見たらよいショー!全国ツアー用のアレンジが随所に見られ、かえってすっきりしてよくなった部分も。気に入らない衣装はそのままだけど。

201911雪黄金の翼.jpg


『はばたけ黄金の翼よ』
~原作「風のゆくえ」粕谷紀子(集英社クイーンズコミックスDIGITAL刊)~
オリジナル脚本/阿古 健
脚本・演出/小柳 奈穂子


ストーリー展開や脚本は少女漫画らしいというか歌劇っぽいというか、王道風でとっても良いと思った。ただ構成演出の古さ。ここまで古いと古典、もはやノスタルジーすら感じる。タイトル連呼のセリフとか、アラドーロ公を称える歌と踊りとか、ちょっと腹筋が鍛えられるほどのベタなくどさ。
実は登場場面のファルコ氏。全身白いヒラヒラ衣装に頭には羽根までつけて。「この人はファルコじゃない・・・」と宮廷の別人だと思った。この衣装選んだ人誰?と思うほど、ファルコのキャラクタ―とは乖離している。あの「黒い衣装が似合う」ヴィットリオのさらに影という人物なのよ。決して白い衣装で頭に羽根つけて踊る人じゃない。2番手だから仕方ないのだけど、あまりのキャラとの乖離に絶句する。朝美さんがまたファルコというには耽美すぎて、絶対にこの人ヴィットリオのことを熱愛している!と確信できる容姿だ。クラリーチェの恋敵だ、容姿も態度も行動も。
ジュリオは原作から容姿も優し気なので違和感がないけど、かなりかなり善良な人物になっている。これは良い改変で納得。代わりにグリエルも伯爵が真っ黒になっていた。いや黒いんだけど、陰謀系のすべての黒幕になり、大きな役になって。久城さんに超お似合い。
原作からの改編もあったけど、おおむね満足。あの合間に入る連呼の歌と踊りのべたさだけが「ああ30年前か~」って思う。初演の演出家が故人とはいえ、若い演出家さんには変更できなかったんでしょうかね。この作品、ストーリーは良いしゼロベースで現代風に作り直したら、大劇場で上演して欲しいくらいだ。


ヴィットリオ・アラドーロ(望海風斗)
イル・ラーゴの領主。精神的にも肉体的にも最強の男。それゆえ愛を知らずに生きている。ファルコはそんな彼を愛し、(彼が独占するために?)ヴィットリオをそう仕向けている。一種の洗脳じゃない?と思うくらいだ。ヴィットリオはそれに気づかず受け入れており、ファルコは満足。だけどロドミアは気づいている(が彼女も兄に洗脳されてるっぽいから、そんなヴィットリオに惹かれているようだ。この兄妹って・・・)
そんな彼の前に自由意志を持つ女性クラリーチェが現れ、ヴィットリオの洗脳が解けて、彼女に一目ぼれ。惚れたのにもなかなか気づいていないようだったけど、これもファルコが先に気づいて手を打った。が、ロドミアが邪魔をして、結局ヴィットリオはこの後長い時間をかけてやっとクラリーチェに惹かれ、自由な彼女を愛していることに気づくのだった。遅いよ!
ラストシーン後は、ファルコもロドミアもいないので、クラリーチェの天下になるのだなあと思いました。ヴィットリオは気づいてないようだけど、「俺様」に見えて、かなり素直で周りの影響を受けやすい人だもん。
という、愛すべき可愛い俺様男のヴィットリオを、望海さんがしっかり原作通りに演じてくれました。変わらず美声だわ。


クラリーチェ(真彩希帆)
カンポ公の忘れられた愛人の娘、修道院に入れられていたが、自分の人生を自分で決めるため脱走する行動力と自我のある女性。この時代に大変珍しいので、ヴィットリオが夢中になってしまう。ヴィットリオとの愛は戦いで、クラリーチェは確実に勝利しているように見える。結局、彼女が勝ってヴィットリオは負けを自覚し、自我のある女性との愛を受け入れる。強烈な印象を持つ女性、だけど見た目は少女のように可愛らしく、可憐。途中男装するのも可愛い。似合うし。自我はあるけど、我儘でも自分勝手でもなく、誠実で健気なヒロイン。こういうヒロインは大好き。
真彩さんにとても似合っていて、二人の愛の戦いにドキドキさせていただきました。

ファルコ(朝美絢)
美しい!ロングの金髪にニヒルな表情。立って睨んでいるだけで妖しいのに、ヴィットリオへの愛に近い忠誠と独占欲なんて、もうヤバいのでは?というほど。クラリーチェ排斥の動きは、「嫉妬やろ!」と断言したくなるほど。まったく違う意味でドキドキする危ない男だ。
何をされてもヴィットリオが愛しくてたまらない様子もあり、よくジュリオはこの男を対ヴィットリオが戦で味方にしようと思ったな~と感動する。グリエルモすら読めなかったファルコの愛の深さですな。
朝美さんのかっよさには、思わず胸の前で手を組んでしまうほど。美しい男にはそれだけで魅力がある。また声が良くて歌が上手い。最高やん!原作のイメージとは少々違ってけれど、素晴らしいファルコでした。

ロドミア(朝月希和)
ファルコの妹でヴィットリオを愛している。でも彼女も、兄に恋路を邪魔されているような気がする。うすうす本人も気づいてそう。
執着愛のファルコと、ヴィットリオを魅了する自我を持つクラリーチェの愛の前で、ロドミアの愛を示すためには命を懸けることになってしまいました。唯一命を落とした彼女が残念。だけど通常の女であるロドミアの愛は、死を持ってしか示せなかったのも良くわかる。ライバルが強烈すぎたな・・・
朝月さんは歌上手いね、お芝居もいいし。原作のイメージ通りの絶品ロドミアでした。また花へ帰ってしまうのね。雪のお芝居にぴったり似合っていたので残念だわ。

ジュリオ(永久輝せあ)
クラリーチェの異母兄。原作では器の小さなずるい男として描かれていたけど、本作では善良な人物として描かれている。黒幕はグリエルモ伯爵で、彼の駒として使われていた。領主の力量がないのを自覚していて、その焦りに付け込まれたような。自分の自我と両親と、領主の矜持と実力のはざまで、かなり葛藤して苦しんでいる様子がうかがえた。永久輝さん、すごいく良いお芝居されますね。雪組らしい深い芝居。ジュリオに感情移入してしまったわ。
ビアンカと二人、ヴィットリオに相談したりしながら、良い領主になりそう。
その永久輝さんも花組へ行ってしまうのね。心から残念だが、花組で花開くのを楽しみにしています。雪の中で際立つ美しいダンス好きだったわ~

グリエルモ伯爵(久城あす)
この人が悪の黒幕(なんか「義経妖狐」を思い出したわ、参謀的黒幕が超似う方!)。智謀ですべてを支配していくタイプの陰謀家。使えないとなったら、主(ジュリオ)でもポイ捨て。主君も、自分の娘すら手駒にすぎない。そんな陰謀術策を巡らしながら、破綻したら「えーい、全員殺してしまいなさい」とまるで水戸黄門の悪代官のような最後の策(笑)。教皇すら、やっちまうんですね。何も恐れるものがない自信が素晴らしい。
最後はあっさりやられてしまいましたが。なんとなく、御白洲で裁かれて欲しかった。
私は久城さんの声が大好き。あのクリアで硬質で明瞭な声がたまらなく好きだから、あの声で陰謀を語る場面が幸せすぎる。

教皇(奏乃はると)
ローマ法王。小国が乱立するイタリアで、最高の権威者は教皇様なのですね。そういう位置づけで、そういう重みをもった存在でした、さすが組長。酒場に繰り出すあたりも、品位を失わない程度に周りに馴染んで可愛い娘さんにデレたりして、普段から隠密行動されてるんですか?って感じのダンディおじさま。おつきの方々は大変ですね。
酒場の美人と楽しく飲んでるときに、クラリーチェ少年を見つけ、手紙を受け取って事態を把握し、すっと教皇の真顔に戻る場面なんて最高。で、ちゃんと正装に着替えて決闘場面に駆け付けるあたりは律儀。
ラストシーンは、最高権威者なのに悪人に「まとめてやっちまえ」攻撃をされ、左右に控えるお付が教皇様を守りながら戦う。教皇様は杖を持ったまま一歩下がる・・ああこの絵面、水戸のご老公様と助さん格さんだよ!と懐かしくなりました。めちゃ楽しい。
前半出番がなかったけれど、後半は大活躍でしたね。


ロレンツォ(凰綾華)とジーノ(彩海せら)
イルラーゴの騎士なのかな。ヴィットリオの部下。働き者でした。ジーノはジュリオ(グリエルモ伯爵)につかまって、あえなく命を落としてしまいました。ジーノは口も軽いけど、潜伏も下手だったのね。あの状況、ジュリオの良心とファルコの寝返りがなかったら、ヴィットリオの命(ひいては故国イルラーゴ)も危なかったよ。ヴィットリオは可愛がって信頼してたんだろうなあ~可愛かったけど、若さゆえに‥って雰囲気でした。
ロレンツォのほうはジーノより印象薄いけど着実に仕事をしている印象。多分、隠してある軍隊の指揮を執っていたと思われる。ジーノから合図がないからヤキモキしながら待っていたに違いない。ジーノの死を一番悲しんでいるのはロレンツォだと思った。


ビアンカ(彩みちる)
グリエルモ伯爵の娘で、ジュリオの恋人。父の思惑は全く知らず、純粋にジュリオを愛している。相思相愛。最後まで父親の本性や陰謀は知らなかったのかな~と思うラスト場面。そんな大逆罪を犯した父のことがあっても、ジュリオは彼女を愛し続けており、幸せになりそうです。

ジャンヌ(星南のぞみ)
ロレンツォの妹で、ファルコが好きという少女。ファルコはヴィットリオ一筋だからかなりの片思いでむなしい思いを何度もしてそう。めげない人だな。でも少しは想いが通じていたようで、良かったなあって思います。

シントラ(舞咲りん)とサンドラ(杏野このみ)
アラドーロ家に来てからのクラリーチェの女官長シントラ、クラリーチェが幼いころからの侍女で、母親か姉かという存在のサンドラ。
シントラは、なんか怖いよ~なんであんな怖いの?サンドラを追い出して、シントラがこれからあなたの世話をしますよ!と宣言されたときのあの声。クラリーチェがアラドーロ家から逃げ出したくなるのは当然では?と思うほど。原作では厳格なおばあちゃんだったけど、ホラーな怖さはなかったな~と。途中から全然出てこなくなってしまった。
サンドラは原作では人は良さそうだけど頼りない中年女性だったような気がする。杏野さんのサンドラはもっと頼りがいがありそうで、クラリーチェとの絆を感じた。サンドラはこっちのほうが好き。

全体に少女漫画で乙女チックで宝塚らしいストーリー。演出を現代風に替えたら、大劇場でも使えそうに思った。最近はこういう王道少女漫画なストーリーも少ないね。


ダイナミック・ショー
『Music Revolution!』
作・演出/中村 一徳

基本は大劇場公演と同じ。変わったのは、抜けた彩風さんと彩凪さん、凪七さんの場面。2番手役は朝美さん、3番手役が永久輝さんだけど、出番の都合か違うことも多くあり。お芝居のほうに記憶力を使い果たしたので、覚えているところだけ書く。

彩風さんメインのジャズの場面は、同じ場面にでていた綾さんがメインに。綾さんと縣さんの役は、なんと娘役の沙月さんと笙乃さん。スカート裁いて踊り倒すのってかっこいい!娘役さんがメインで激しく踊るなんて、宝塚ではなかなかない場面だ。

永久輝さんメインのダンス場面も素晴らしい。永久輝さんのダンスは綺麗で目を引く。もう雪組で見れないのが哀しい。花組でみればよいのだけど。

全員の場面で2番手を務めた朝美さんは歌がいいね。お顔も美しい。トップコンビがとっても歌が上手いのに、2番手もあの声だとほんと耳が幸せな公演。組長も歌上手いし。耳だけじゃなく目も幸せよ、もちろん。ダンス場面は永久輝さんが引っ張っていたし、沙月さんと笙乃さんがいるし、不満はない。2分割とは思えない陣容だと思った次第。

ということでショーは、楽しかった!であまり詳細は覚えてない。
覚えているのは奏乃組長の挨拶。立て板に水というか流れるような流麗な挨拶の口上。ご当地フレーズも取り入れていて、お見事、やはり組長の挨拶はこれくらい安心して聞きたい。さらにご当地ごとに望海さんの紹介フレーズが違った様子。なんと楽しめる挨拶。終演後の挨拶シリーズ(組長と望海さん)を放映してほしい、全部聞きたい(全部見に来いってこと!?)。初日千秋楽はスカイステージで放送されるが、各地の挨拶も知りたくなった。
組長の挨拶が楽しかったので、スカイステージで放映されない貸切とか、組長挨拶がついている公演が観たくなった。



月日が経つのは早いなあ。と早く書かないと溜まっていく一方。


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サクラとすみれ

久しぶりにコメントします。以前、サクラ大戦&OSKのコラボでコメントした者です〜。
ひょっとして、同じ回を観劇されたのでは?と思いコメント致しました!(アドリブはたこ焼きでした!真彩ちゃんの美声!)
宝塚ファン4年目で、初の全国ツアー観劇。だいきほ雪組大好きで、琥珀、誠の群像のDVDは持ってますが、そこまで全ツに行きたい!とまでは思っていなかったんです。セットがしょぼくなるし、大劇場公演だけで充分かなと。でも、今年頑張って20世紀号観に行って、雪組の層の厚さを実感!脚本はあまり、、、だったけど、壬生も満足したし
一回でも多くだいきほを観たいと津・彦根・梅田に出かけました!(一般でチケット取れたのが奇跡です)

はばたけ〜は、だいきほで単純なロマンチックストーリーを観たことがなかったから、古さが逆に新鮮。アラドーロ♪アラドーロ♪だいもん&あーさの腰クネダンスが、脳内再生され続けています。真彩ちゃんのかわいさがたまらなかった〜。

ショーは雪組生の魅力いっぱいでひたすら楽しかった!
沙月さんと笙乃さんかっこよかった!美しき肩甲骨。(OSKのショーをちょっと思い出しました。ヅカでも娘役ダンサーが目立つショーを作ってほしいな)
叶ゆうりくんが客席を釣って釣って釣りまくる!3階でも客席からの悲鳴が聞こえました(梅田の客席は静かでしたが)
Music is My Life 大劇場では89期わちゃわちゃの白い場面としか印象が残っていませんでしたが、雪組生のコーラスがより力強くなった全ツ版が最高でした。望海さんの後ろからチラッと顔だしてピースサインをキメる舞咲さんが面白かったのですが、次で退団なんですね…。
津、彦根は家から片道4時間かけて移動したので、観光出来なかったのが残念でしたが、
公演地アドリブがあってちょっと観光気分になれました(ひこにゃんものまねが最高だった!)
by サクラとすみれ (2019-11-18 08:18) 

えりあ

サクラとすみれさん

雪の全国ツアー、私も遠くに行けばよかった!!!と後悔しました。梅田で最後だったんだ~と。30年前の作品なのにこんなに素敵に仕上がってるなんて!とか、あのショー結構良かったんやわ~なんて再確認。89期わちゃわちゃ場面は、組換えの二人をわしわしする場面になってましたね。娘役が目立つ(というか引っ張ってる)ダンス場面は、私も実はOSKを思い出してました。舞美さんや麗羅さんの場面みたいなのを宝塚でもできたんやん!って)
雪組大好きです。暗そうな1本ものですがお正月公演も楽しみですね!
関係ないけど、素敵なペンネームですね~!私もどちらも大好きです♪
by えりあ (2019-11-18 20:44) 

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