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 こんばんは。


 昨日,大阪地裁の裁判員裁判で死刑判決が下された事件について,高裁で覆され,その最高裁判決がありました。
 最高裁は,二審判決について,著しく正義に反すると認められないと判断しました。
 一審の裁判員裁判で死刑判決が下されたものが上訴審で覆されて確定した事件としてはこれが5件目ということです。

 以前の事件において,最高裁は,裁判員裁判において死刑判決が選択されたとしても,いわゆる永山基準や先例等を考慮し,計画性の低さなどを被告人に有利な事情と見て,死刑判決を回避する考え方をとっているように思われます。
 この事件の二審判決は,死刑が究極の刑罰で,真にやむを得ない場合に限って許されるという基本原則を適用すると,死刑の選択は躊躇せざるを得ないということで無期懲役としました。
 一審の裁判員裁判では,死刑を回避する事情は見いだせないとしていたものと評価が真っ向から異なることになります。

 このような事例が1件だけであれば,それが事案の特殊性の問題なのかどうかわかりませんが,5件も事例が積み重なると,裁判所の考え方の傾向というものがよくわかります。
 裁判所としては,死刑を選択するのであれば,それは感情ではなくあくまで先例等から導かれる基準をもって判断すべきと考えているということでしょう。

 先例重視については批判もあると思いますが,私はそれそのものが悪いとは思いません。
 というのは,裁判所の判断は公平であるべきところ,その判断がすべて裁判官個人個人の主観によって異なるのであれば,不公平になりますし,結果も予測できなくなります。
 特に,結果の予測可能性は非常に重要であり,自身の行為が違法と評価されるべきか否かについて大きな要因となりますから,先例を重視することは一般的には良いことだというように思います。

 また,刑事裁判を行うに当たっては,これを感情で裁こうとすれば,行った行為やそれに伴う結果以上の刑を科すことになりかねません。
 それでは人民裁判を行うことにほかなりませんし,他の事件との結論の均衡も失することになりますから,感情の要素をある程度考慮しつつも,最終的には理性をもって判断することは重要であると考えております。

 ただ,裁判員裁判というのは,その理性による判断から感情による判断の要素への移行を若干進める制度であったと思います。
 すなわち,理性の判断は職業裁判官において行われるべきところ,敢えて一般市民の感覚を取り入れようというのですから,そこで一般市民に要求されることはまさに市民感覚であり,感情であると思います。
 ですから,裁判員裁判は,理性による手続において感情の要素を多く取り入れるために導入された制度であるというべきでしょう。
 私は,一般的に刑事裁判は人民裁判でない方が良い思っていますが,裁判員裁判はそれが制度的に人民裁判的要素を内在させているというほかなく,これを国民が選択して法が制定されたということが重要であると思います。

 それを前提に考えると,裁判員裁判の判決というのは,理性による基準をある程度超えることも致し方ないというのは制度に内在された前提であると思われ,これを否定するような基準で判断することは制度に対する否定であるように思います。
 理屈を硬直的に考えればそのような結論になるわけですが,それとは違う結論を導く理屈を出すこともいくらでもできると思います。
 ですが,そのような理屈の出し入れという言葉遊びに意味はなく,結局のところどちらの基準を採用するのが望ましいかという価値判断の問題なのだろうと思います。
 そして,最高裁は,感情を判断基準とする裁判である裁判員裁判の判断があったとしても,従来の基準を重視する価値判断を行うことが好ましいと考えたのだと思います。

 私は,その価値判断の是非を述べるつもりはありませんし,死刑制度の賛否についてもここで言及するつもりもありません。
 ですが,裁判員裁判に内在する要素を否定する判断であった以上,その点について最高裁がきちんと説明しない限り,裁判員に選ばれる可能性のある一般市民は納得しないでしょうし,制度への協力を得ることも難しいでしょう。
 結局旧来の基準に従うのであれば,わざわざ一般市民を裁判所に呼びつけて儀式のような制度を行う必要もなく,職業裁判官たちだけで理性に従って判断すれば良いということになってしまうのではないかと思います。
 現に,今回の判決に関する色々なコメントを見ていると,裁判員裁判の無意味さについて言及するものが多く,そのような意識を持っている人たちが多数派を占めれば制度の維持も難しくなると思います。


 また思いついたら書きます。ではでは。


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三枝康裕 | ニュース | comments(0)  | trackbacks(0) | 23:02

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