横浜地球物理学研究所

地震予知・地震予測の検証など

“科学的根拠”とは? 〜正反対のアプローチで自虐コントを披露し続ける村井氏〜(寄稿)

2020年02月27日 | 地震予知研究(村井俊治氏・JESEA)
(BD3様より寄稿頂きました記事を以下に掲載致します。今回も、「地震を予測できる」と主張してメディアに再三登場する村井俊治・東大名誉教授に対する鋭い批判がありますので、是非ご一読ください)


1. はじめに

前回2019年7月の寄稿では、東京大学名誉教授村井俊治氏が、高度なニセ科学な手口を巧みに弄して不公正なビジネスを展開している事実を紹介しました。

村井氏の不公正なビジネスの主体であり、村井氏が取締役会長を務める「株式会社地震科学探査機構」(JESEA)という営利団体のWEBサイト(https://www.jesea.co.jp/company/)には、以下の経営理念が掲げられています。




ここに出てくる「科学的根拠」という言葉について、具体的に何のことを指すか、きちんと説明できるよ、という方はどれくらいいらっしゃるでしょう?少し前の私もそうでしたが、信憑性や信頼性といったなんとなく良さげな印象はあるけど説明はできない、という方は結構おられるかもしれませんね。

「科学的根拠に基づく地震予測」があるからには、その対偶に「科学的根拠に基づかない地震予測」もある訳です。出だしからいきなりキナ臭い気配が漂ってきて、気分がワクワク高揚してきたでしょうか?

さて、はやる気持ちをおさえつつ、こんなシチュエーションを思い浮かべてみれば、科学的根拠とは何らかの判断基準を指すのだとわかります。

 「なるほど、そこまで検証したなら科学的根拠ありですね。」
 「残念ながら、検証がそこまでだと科学的根拠にはなりません。」

十人十色と言われるとおり、人の考え方には多様性や信念の違いがあるため、これに基づいた判断結果には属人的なブレ幅が含まれる弊害が伴います。これに対し、人の意思を介入させることなくデータを機械的に処理するだけで結論が導かれる、つまり誰が判断しても必ず同じ結論にしか至りようがないブレない判断基準が科学的根拠です。これなら議論が不毛な水掛け論や平行線にこじれてしまう心配も無用です。良いことづくめですね。

ということで、科学的根拠とは何か、私の下手な長文を最後まで我慢して読み終えていただいた皆様には、これをきちんと説明できる「お土産」を持ち帰っていただけることを祈りつつ筆を執る次第です。しばしのお付き合いをいただけましたら幸甚に存じます。

今回の寄稿の目的は、村井氏が科学的根拠という言葉の意味を取り違えて、自ら掲げた経営理念に背いて科学的根拠に基づかないニセ科学を続ける矛盾を読者の皆様と共有すると同時に、村井氏ご本人には、科学的根拠の正しい意味を理解いただき、ニセ科学から科学に方針転換されるよう提案すること、の二点です。


2. とある別ジャンルの例、その1

今まさに世界を深刻な状況に陥らせている新型コロナウイルスによる感染症について、海外の複数の国で、エイズの発症を抑える「抗ウイルス薬」を患者に投与したところ、症状の改善が見られたとの報告があるそうです(出典1)。

医学や薬学の心得のない我々素人でも、症状が改善された原因として

 a) エイズの発症を抑える「抗ウイルス薬」投与の効果
 b) 患者自身が持つ自然治癒力(投与は無関係)
 c) その他の要因(投与は無関係)

の3つくらいは、すぐに思いつきます。この報道に接し、a)であってくれと願う気持ちは、きっと誰もが同じでしょう。そう願う気持ちだけが先走って、検討不十分なうちからa)を重視すると同時に、b)やc)を軽視する考え方が、ニセ科学です。

投与の効果の検証に必要な観点は、いうまでもなく

 「この薬には、この症状への改善効果が期待できるか/できないか」

です。そんなのあたりまえじゃないか、と気にも留めない方の中にはきっと、これを意味の異なる

 「この薬はこの症状に効くか/効かないか」

と同じ意味だと誤解してしまう人がいらっしゃるのではないでしょうか。さらには「症状が改善した事例をなるだけたくさん集めること」が、その検証になると誤解される人もまた、きっとおられるでしょう。これらの誤解をされた方には、村井氏のニセ科学に騙されてしまう危険が潜んでいるのです。ご用心、ご用心、、、

なぜ、「この薬はこの症状に効くか/効かないか」ではダメなのか、「症状が改善した事例をなるだけたくさん集めること」では検証にならないのか、その理由を人に説明できるくらいちゃんと理解しておくことは、これからの人生でニセ科学を見破るための便利な拠り所になりますから、面倒な説明がもう少し続くのをお許しください。

投与後の特定の患者さんの症状が確かに改善した症例において、その原因を突き詰めれば、投与の効果によるものか、投与と無関係に自己治癒力その他の要因によるものか、のいずれかですが、その真相は神のみぞ知る領域であって人には絶対にわかりっこありませんよね?この「真相不明」をベースにしている以上、症状が改善した事例をどれだけ集めてきても、投与の効果の検証にはならないのです。

これに対し、「投与群」と「非投与(正確には、偽薬を投与したプラセボ)群」の各集団の症状の改善状況のデータの塊を統計分析手法の計算式に投げ込むと、両群間の症状の改善状況の有意差の有無が定量的に算出されます。両群間に有意差があるなら「この薬には、この症状への改善効果が期待できる」という結論が自動的に導かれます。これが科学的根拠です。

薬の投与の効果を検証する考え方を紹介しましたが、地震予測手法に対する検証も考え方は全く同じですので、対比しながらおさらいしましょう。察しの鋭い方ならすでにお気づきのとおり、検証のたたき台に載せるべき対象は、検証のやりようのない「地震予測」ではなく、検証のやりようのある「地震予測手法」のほう、つまり、注目すべきは「個々の地震予測を的中させたか/はずしたか」の各論ではなく「この手法には地震を予測できる効果が期待できるか/できないか」の総論のほうです。

予測どおりの地震が発生した、いわゆる「的中」ケースについて、その実態が、予測理論の仕組み通り起きたのか、偶然当たっただけなのかは、神のみぞ知る領域であって人には絶対にわかりっこありません。ですから、一件ごとの「的中実績」を何年/何百件、蓄積し続けたって、その実態は「当たった錯覚」という自己陶酔感の重ね塗りでしかなく、地震予測手法の検証には一歩たりとも踏み込んだことにはならないのです。にもかかわらず、世のほとんどの地震予知/予測研究家の皆さんが、訳がわからないままこれを検証だと誤解しています。

予測手法の価値は、「その手法で導いた予測群(薬の投与群に相当)」と、「何の手法も用いず導いた非予測群(薬の非投与群に相当。予測でいえば放っておいても勝手に的中する実績。例:サイコロの目ならデタラメに予測しても1/6は的中する)」に有意差があるかどうか、で定量的に算出されます。

有意差が、あり、と算出されれば「この地震予測手法には、地震を予測できる効果が期待できる(薬の投与には、症状の改善効果が期待できる)」という結論が自動的に導かれます。

有意差が、なし、と算出されれば「この地震予測手法では、勝手に的中するのと変わりないから意味なし(自己治癒力による改善率と変わりないため、投与の意味なし)」という結論が自動的に導かれます。

これが科学的根拠です。そしてこの項の結びにもう少しだけ。

・その薬の化学組成/有効成分/症状改善メカニズム、といった「技術的な仕組み」
・多くの患者の命を救いたい/1日も早い病気の根絶は社会の要請/自分はこの研究に生涯を捧げた、といった「人の想い」

これらが研究の根幹や動機として欠かせない大切な要素であることに異論はありません。ただし「投与群と非投与群」の有意差の算出という工程には一切関与しません。むしろ完全にシャットアウトすることで、そういった事情に流されないことがこの手法の利点です。科学的根拠という切り口に求められるのは、技術的な仕組みでもなければ人の想いでもなく、それらからの独立性を冷徹なまでに担保した有意差のほうだから、です。

結論「予測手法における科学的根拠とは非予測群との有意差のことであり、それがないのは科学的根拠なし(=ニセ科学)」

JESEAの関係者または村井氏を支援される皆様へ:
メルマガやTwitterや講演での村井氏の発言を拝見すると、村井氏はビッグデータの中に自説に当てはまる断片を見かけた瞬間「科学的根拠あり」と勘違いして舞い上がるタイプの方だと判ります。データが膨大であればあるほど、そう見える断片が勝手に混入してくるのは必然でしかなく、こんな程度のことは統計学の基本です。予測を扱う本物の科学者なら誰もが、科学的根拠とは有意差の確認プロセスであることを知っています。村井氏がこれをご存知なく稚拙な発信を繰り返すことは、予測を扱う科学者として持ち合わせるべき最低限の資質が欠けていることを村井氏が自ら語って落ちる残念な行為であることがご理解いただけるはずです。無知を恥じ入るレベルでは済まされない、JESEAの事業の根幹に関わる致命的な問題です。一刻も早く村井氏にこれをお伝えいただき、基礎から建て直す必要を村井氏が自発的に気づかれることを祈るばかりです。


3. とある別ジャンルの例、その2

トルコ共和国の遺跡で、1985年から35年以上の長きにわたって、「製鉄の起源」というテーマで考古学の発掘調査をしている、中近東文化センター附属アナトリア考古学研究所長の大村幸弘氏という方がおられます(出典2)。

調査の目的は年表の作成であり、出土品を地層年代と地域の三次元に順序良く並べて歴史の変遷を読み取る手法をとっているそうです。出土品は年代/地域いずれもおいても連続的に出土するはずなどなく、飛び飛びでしか手に入りません。出土品のない隙間部分は、周辺から推測した仮説で暫定的に補完せざるを得ないため、新たな発掘調査の目的の中に、その仮説の裏付けも含まれることになります。新たな発掘調査で自分が立てた仮説通りの出土品が見つかれば万々歳ですが、中にはそうでない場合があります。

大村氏には35年間温め続けてきた仮説がありましたが、ついに2019年3月、その仮説に反する出土品が出てきてしまいました。さすがに当初こそ、発掘が間違っているのでは、とさえ思ったそうですが、大村氏の科学者としての姿勢が尊敬に値するのは、この新事実と真摯に向き合い、自説に都合よく歪めて解釈する愚を犯すこともなく、35年間来の自説は誤りであったと自ら潔く否定し、新たな説を編み直す方向に直ちに舵を切り直した点にあります。

大村氏の視線は「正しい年表を作る」という大義に向いており、「自説の裏付け」のごとき小義には向いていなかった、ということです。

考古学の分野での事例を紹介しましたが、自説に都合の悪いデータや耳の痛い指摘を糧として、誤りを正してゆく仕組みを科学と呼ぶのであって、これはあらゆる学問分野の共通基盤です。

「ある事象Xの予測」という研究分野での仮説の検証方法は、以下が一般的です。

 1) 自説が正しいなら、データ中の「ある値Y」の出現頻度は、ある事象Xの発生前に増えるはず。
 2) 自説が正しいなら、データ中の「ある値Y」の出現頻度は、それ以外の期間中に減るはず。
 3) もし、1)と2)の間に有意差がないなら、データ中の「ある値Y」の出現で事象Xを予測することは不可能、すなわち自説が間違いである。

これまで述べた通り、1)と2)の有意差を調べる手間をかけることの価値への理解と、3)が出た場合に潔く受け入れて自説を否定できる客観性が「科学的根拠」の本質です。

これに対し、ビッグデータの山の中から苦労に苦労を重ねてようやく1)を見つけただけで、もう自説の正しさが証明できた、と舞い上がってしまえる村井氏の軽率さが、ご自身の研究に似て非なる取り組みをすべて台無しにしているのは、はた目に痛々しいのみならず、学術界が村井氏の研究を相手にしない本当の理由がここにあります。村井氏本人や支持者が口にする「畑違いだから村八分にされる」「地震計を使ってないからバカにされる」「新進気鋭の異端児は目障りだから」「いまだ予測も予知もできないくせに予算を食いつぶすだけの地震学者のひがみ」「学術界に多い保守的な考え方とはマッチしない(出典3)」など、素人受けしやすいストーリーを鵜呑みにしてしまうのは、本人サイドによる印象操作の思う壺ですから気をつけましょう。

誤解のないよう申し添えますが、私が憎むのはニセ科学による不公正なビジネスや社会のミスリードであって、村井氏個人ではありません。望むことは科学的根拠が正しく取り扱われること、ですからもし将来、村井氏が科学的根拠(有意差)を伴った予測手法を公表した際、保守的な学術界がこれを相手にしない、といった事態が万にひとつでもあるとすれば、私は全面的に村井氏の成果を支援し、保守的な学術界を厳しく批判することをお約束しておきます。

結論「自説にとって都合の悪い観測データや耳の痛い指摘に向き合おうとしないのはニセ科学」

JESEAの関係者または村井氏を支援される皆様へ:
かつて村井氏が、謙虚な姿勢で上記の2)や3)に向き合ったことは一度でもあったでしょうか?これには、ただでさえ苦労した1)に要した何倍もの手間が必要ですし、自説が否定される判定が容赦なく、そして頻繁に出てくるのが普通で、たいへん辛いものですが、世の中の実用レベルに達したあらゆる予測手法が例外なく揉まれてきた厳しい試練です。予想をテーマとする以上、どんな分野の研究であろうとも、また、その予測手法がどれだけ斬新かつ画期的であろうとも、この試練が免除される抜け道はない、というのが「科学的根拠」の公平性です。これを「古い考え方」だとか「保守的な石頭が新進気鋭の研究者をつぶそうとする中傷」などと解釈して居直る悪質なニセ研究者が、学術界から相手にされることは決してありません(ただし、前回種明かししたとおり、それでも特許なら取得できるんですよね。審査の観点が違うからです)。

なお、2)や3)には数理統計学の知識が必要ですから、ご多忙な村井氏自身が一から勉強を始めて挑戦する必要はありません。メルマガ売り上げで十分な収益があるはずですから、その一部を投資して数理統計学の専門家と委託契約を結び、あとは必要なデータを渡せば良いだけなので、その気になりさえすればとても簡単です。この投資は、これまで村井氏が一度も向き合ったことがない本物の「科学的根拠」を初めてもたらすものであり、村井氏の研究に似て非なる行為が、ようやく初めて研究と呼べる取り組みにステップアップするために必須の経費です。くれぐれも、その投資を出し渋ったり、企業秘密のデータは外に出せないから、などの子供じみた言い訳を選択しないことを祈るものます。


4. 最近の村井氏の自虐コントの例

さて、読者のみなさま、お待たせしました。堅苦しい話に長々付き合っていただきお疲れさまでした。ここからは肩の力を抜いてクスッと小さく微笑んでみるコーナーです。

私がポケットマネーをドブに捨てる覚悟でやむなく購読しているMEGA地震予測ですが、当然ながら、本文である「1.地震予測」の章に見るべきものはほとんどありません。かわりに冒頭の「地震予測サマリー」や後半の「コラム」には、科学の何たるかを完全に履き違えた村井氏が、ほぼ毎週のように自分で自分を貶める自虐コントを披露されていますので、そのチェックが楽しみ、だったりするかもしれません。毎週発行しているのに、よくその自虐ネタが尽きないものだという驚きは、漫画週刊誌の作者に対する敬意と共通するものがあります。

MEGA地震予測 2020年2月19日発行「3.コラム」より
地震の前兆現象として一瞬のピーク値が複数の衛星に同時刻に現れるのは全く新しい発見でした。 そこで2011年に起きた東日本大震災以後に起きたマグニチュード6以上でかつ震度6以上の大きな地震8個を選んで、 果たして地震の前に大きな異常ピークが現れたか否かを検証しました。

解説1:「一瞬のピーク値が複数の衛星に同時刻に現れ」たという現象をどう検討したら「地震の前兆現象」と結びつける関連づけに至るのか、その経緯は全く示されていません。まさか両者の発生順と時間差だけが唯一の理由?など妄想するしかありませんが、関連あってのことなのか/たまたま偶然そうだっただけなのか、いずれか一方に絞り込むためには、もう一方を排除しうる誰もが納得できる客観的な理由を提示するのが科学的根拠です。しかも「全く新しい発見でした」と自画自賛とするその発見が本物なら、世界中の地球物理学者がびっくり仰天の偉大な発見です。そんな大発見をしながら、決して学会には発表せずメルマガでひっそり報告するだけという行動原理は、1984年の嘉門達夫の名曲「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」の中で、ファンから涙ぐみつつ称えられる川口探検隊長の奥ゆかしさそのものではありませんか。冗談はさておき、これで思い出すのは、私が前回指摘した「科学的事実が世界的に認められている前兆現象(中略)白金測温抵抗体を利用した温度計の気温に擬似的に異常が現れる」で、オームの法則とファラデーの電磁誘導の法則という二大法則を何ら疑問を抱くこともなく易々と粉砕してしまえた村井氏の軽率さです。自分の思いつきに陶酔する村井氏の暴走は、科学者として全くありえない驚きに満ちています。

解説2:「そこで2011年に起きた東日本大震災以後に起きたマグニチュード6以上でかつ震度6以上の大きな地震8個を選んで、 果たして地震の前に大きな異常ピークが現れたか否かを検証しました。」とはまさに上で述べた「ビッグデータの山の中から苦労に苦労を重ねてようやく1)を見つけただけで、もう自説の正しさが証明できた、と舞い上がってしまえる村井氏の軽率さ」そのものです。この目的で後追い検証したいなら、続いて2)との有意差の確認まで済ませて、ようやく初めて何らかの価値が生まれます。

MEGA地震予測 2020年2月12日発行「地震予測サマリー」「今週の注目ポイント」より
この1週間で震度3以上の地震は起きていません。静穏状態と言えます。 静穏の後で大きな地震が起きるケースが多々あります。

解説3:「静穏の後で大きな地震が起きるケースが多々あります。」とのコメント自体は、嘘偽りない事実ですが、「多々ある」というだけなら、他にも以下のケースだって多々ある訳です。

・静穏状態の後で大きな地震が起きず、小さな地震が起きたことによって静穏状態がシレッと明けるケースが多々あります。
・静穏状態でないときに大きな地震が起きるケースが多々あります。

部分的な抜き出しにより、自分のシナリオに都合の良い誤読を誘導する手口は、世間をミスリードすることを生業とするタブロイド紙や週刊誌の常套手段、すなわち不公正な誇張表現です。したがって、まともな科学者なら、うっかり気づかず使ってしまっていないか、文章を念入りにチェックするものです。あるいは「静穏の後で大きな地震が起きるケースが多々あります。」という表現の中に、普段以上に危険が高まっている、という注意喚起の意図があるなら、あらかじめ他のケースと危険性の有意差の確認を済ませた内容とセットで示すのが科学的根拠を伴う文章です。

MEGA地震予測 2020年1月29日発行「3.特集:2019年の震度5以上の地震」より

JESEAでは毎年、前年に起きた震度5弱以上の地震の捕捉検証を行っております。 2019年の地震について行いました。

解説4:検証と称して、2019年に発生した震度5弱以上の計9つの地震に対する村井氏の思いつきと思い込みが述べてあります。前提がそれですから、予測が空振りに終わった全てのケースが「なかったこと扱い」で黙殺されているのは言うまでもありません。また、9つの地震について、予測理論どおりの発生なのか/予測理論のモレを突いた発生なのか、という誰もが知りたい核心に明確な言及がなく失望しましたが、支持者の皆さんはこんなもので満足されているのでしょうか。それより何より、今回指摘した有意差の確認が全くありませんので、予測手法そのものの価値という観点での検証が未実施なのは例年通りです。

MEGA地震予測 2020年1月22日発行「2.コラム」より

科学的根拠を明らかにした地震予測には観測データに基づく前兆検知が必須です。

解説5:今回述べた通り、予測にまつわる科学的根拠とは予測群と非予測群との有意差の提示以外に何もなく、そこに踏み込まなければ何の価値もありません。また、「観測データに基づく前兆検知」とは、改めて言う必要のない当然のことに過ぎません。村井氏の取り組みが、観測データに基づいている程度のことは、先刻誰もが認めることであり、いまさら争点にすべきことでもないでしょう。村井氏が批判されているのは、せっかくの観測データを自分の仮説に都合良い重み付けによって好き勝手に歪めている不正行為です。ついでに言えば、冒頭の経営理念の「科学的根拠に基づく地震予測を確立することにより」は、日本語が間違っており、正しくは「科学的根拠に基づく地震予測手法を確立することにより」であるはずです。

村井氏が確立すべきは「予測」でなく「予測手法」なのですが、村井氏はその違いを理解できるでしょうか。そして大切な看板の脱字が訂正されるのはいつになるでしょうね。また、看板を訂正される際、そのついでに、フレーズ冒頭に一言追加して「有意差検定による科学的根拠に基づく地震予測手法を確立することにより」としておけば、その瞬間から学術界からの風向きが一転するはずですよ。

MEGA地震予測 2020年1月15日発行「2.コラム」より
Guo先生の教えからJESEAでは「ひまわり」の熱赤外画像を検索して独自に地震予測に役立てるための検証研究を始めました。 後追い検証ですが、2018年9月6日に起きた北海道胆振東部地震(M6.7、震度7)の前の衛星画像を調べたところ 確かに地震雲と思われる画像が確認できました。」

解説6:「確かに地震雲と思われる画像が確認できました」と結論づけるのに、地震前の衛星画像だけ調べたのでは片手落ちです。ここまで述べてきた通り、そこに意味が生まれるのは「このような地震前の衛星画像」と「それ以外の期間の衛星画像」の両方を調べて、その間に有意差ありと確認できた後、です。

MEGA地震予測 2020年1月8日発行「2.コラム」より
Guo(郭)先生は(中略)最初の頃は日本のどこで地震が起きる可能性があるという予測情報のみを送ってきました。この情報だけでは科学的根拠がないので、宇宙からどのような地震雲が現れたのかを教えてもらうことにしました。

解説7:Guo先生とやらの地震雲にまつわる独自理論が、村井氏の軽率さと合体してパワーアップした内容が、この後に紹介されていますが、自然界でこのようなメカニズムが現実に機能して雲の形成に結びつくようなら、これは「断熱膨張」「露点」「飽和」「凝結」といった基礎概念がその根底から転覆することを意味し、世界中の全ての気象学者と物理学者がビックリ仰天のトンデモな「大発見」なんですが、そんな一大事とも気づかずあっさり納得できてしまい、平然と配信してしまえる村井氏にとっての「科学的根拠」とは、「それっぽい用語を、思いつきに任せてそれっぽく切り貼りしただけの、一見ありがたみのありそうな文章」程度のことなのかもしれません。一方、本物の科学的根拠に欠かせない有意差の確認行為が村井氏のニセ研究行為の中には一切登場しないことは、今回もう何度も述べてきましたので、皆さんぼつぼつ飽きてきた頃でしょうか。

え?なんですって?こんなティーザー広告をチラつかされたんじゃ、MEGA地震予測を購読したくなっちゃった、ですって?こともあろうに私がJESEAの売り上げに貢献するなんて、なんたる皮肉でしょう。


5. また会う日まで

村井氏が、自身で掲げた「科学的根拠に基づく」とする経営理念に背きながら、自虐コントを配信し続けている滑稽な矛盾を正しく認知でき、科学的根拠に基づいた取り組みをいつになったら始めるのか、JESEAの中にはこれを村井氏にきちんと注進できるまともな科学者が在籍するのか、「科学的根拠」の正しい意味を共有する皆様方とともにこれからも見守り続けることといたしましょう。

今回は、前回予告していた、捕捉率とされる統計のトリックを見破る、とは違うテーマになりましたがいかがでしたでしょうか。次回はまたいつになるかわかりませんが、前回予告の内容も含めながら、もっと基本の「予測とは、そもそも何であるか」を明らかにすることで、村井氏のビジネスは、実はそこにも全くかすりすらしていないという、今回より一層根幹に斬り込むテーマで構想中です。

新型コロナウィルスが収束するのと、次回作で皆様とお会いするのは、はてさて、どちらが先になるのやら・・・



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出典1:NHKオンライン記事「新型ウイルス感染患者にエイズ発症抑える薬投与 治験へ」 2020年2月15日 6時38分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200215/k10012286651000.html

出典2:解説委員室アーカイブス 「製鉄の起源を探る」 (視点・論点) 2019年7月29日
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/372469.html

出典3:今年、東日本大震災級の大地震発生の兆候か…伊豆諸島で土地の異常な高さ変動観測(文=鶉野珠子/清談社) 2020年1月25日
https://biz-journal.jp/2020/01/post_138166.html
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新型コロナウイルス感染症に対するアビガンの効果への期待も、全く同じ理屈 (BD3)
2020-04-26 10:26:38
感染症専門医の忽那賢志氏が「アビガン 科学的根拠に基づいた議論を (Yahooニュース 4/25(土) 16:51)」
https://news.yahoo.co.jp/byline/kutsunasatoshi/20200425-00174913/

と訴えています。

「投与を受けた新型コロナウイルス感染症の患者が回復したから、アビガンに効果がある」



「予測通りの地震が発生したから、的中であり、その事象は前兆だったと判断できる」

とは、根っこを同じくする、科学的根拠不在の誤った考え方です。

少しでも多くの人に、科学的根拠の正しい意味が広まることを期待します。

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