MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1581 今、ニューヨークで起きていること

2020年04月01日 | 社会・経済


 米ニューヨーク州は3月31日、新型コロナウイルス感染者が新たに9000人以上増加し死者は300人余り増えたことを明らかにしました。

 同州で確認されている感染者7万6000人のうち比較的症状の重い1万1000人が入院しており、うち2700人が集中治療を受けている状況だということです。

 また、州全体の死者数はこれで1500人を超えることになり、この数字は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による全米の死者数の約半分を占めています。

 ニューヨーク州の人口は1,950万人とされ、ニューヨーク市内だけでも860万人の市民を抱えていることを考えれば、(勿論)今のところ感染していない(少なくとも症状のない)住民が圧倒的多数を占めていることは間違いありません。

 しかし、(CNNなどで伝えられる)人気のないタイムズスクエアや市内の医療機関の映像などを見る限り、ウイルスの感染拡大により世界有数の国際都市としての都市機能が大きく損なわれていることは国際映像で見てもよくわかります。

 今、米国が世界に誇る大都会ニューヨークでどのような事態が生まれているのか。

 環境・社会問題研究者の田中めぐみ氏が、3月30日のYahoo newsに「新型コロナ感染拡大、米ニューヨークで何が起こっているのか」と題するレポートを寄せ、その実態を伝えています。

 田中氏によれば、ニューヨーク州では現在、州内の全市民に対して外出禁止令が出されており、市民は食材の買い出しなどの不可欠な場合を除き自宅で待機し、食料品店やガソリンスタンド、病院、警察等、生活に不可欠な業種を除くすべての労働者に在宅勤務が義務付けられているということです。

 レストランやバーは持ち帰りや宅配に限り営業を認められているほか、公立学校はもとよりヘアサロンやスポーツジムなど、屋内で人と接する事業は営業停止が命じられていると田中氏は伝えています。

 市内では人数を問わず複数人の集まりは禁止されていて、市内では警察が巡回し、屋外で複数人の集まりが見られた場合は解散を命じている。今のところ違反者への罰金は科されていないものの、ニューヨーク市当局は今後500ドルの罰金を検討しているという話もあるとのことです。

 こうした状況の中、懸念されるのは外出禁止などによる市民のストレスですが、多くの市民はランニングや散歩など個人でできるエクササイズで気晴らしをしており、州が設置した相談電話窓口では1万人以上のボランティアが応対していると氏はレポートしています。

 また、経済面では、食品などの生活必需品を商う小売は特需で潤っている一方で、生活に不可欠でない事業は営業停止を余儀なくされていて、在宅勤務が難しい業種は概ね自主的に営業を停止している現実があるそうです。

 なお、こうした中小企業や中低所得層の支援に関し、連邦議会は既に個人向けの現金給付や失業保険の給付拡充、中小企業支援等に2兆2千億ドル(約237兆円)の拠出などを決めていると、氏はこのレポートに記しています。

 年収7万5千ドル(約809万円)未満の大人1人につき1,200ドル(約13万円)、子供500ドル(約5万4千円)の所得補填などがあるほか、中小企業には、1社あたり最大1万ドル(約108万円)の運転資金の提供や、必要に応じ1社最大1千万ドル(約10億8千万円)の融資も行われるということです。

 日本のテレビなどでは厳しい医療現場の様子が主に報道されていると思うが、こうした市民の生活を概観する限り、一般の人々の生活はそれほど凄惨な状況でないというのが現状に対する田中氏の感覚です。

 未曾有の事態に市民は不安を抱えているが、それでも今起こっている現実を受け入れ、各自ができることを淡々と行っている。食べる物に困れば、何かしらの支援が得られる体制が整っており、極端に悲観的になることなく、誰かを責める声もそれほど大きくはないということです。

 こうした状況について田中氏は、ニューヨーク市民はこれまで、同時多発テロや大規模停電、ハリケーンなどの様々な大惨事を経験し、災害時に助け合いながら乗り越える術を知っているからではないかと指摘しています。

 既に感染は全米に広がっており、ニューオリンズ、デトロイト、シカゴ等では感染者が急増している現状を考えれば、知事の口からしばしば「ロックダウン(都市封鎖)」という言葉が聞かれる東京でも今後感染が爆発的に広がる可能性は否定できません。

 しかし、そうした際にも先行する海外の良い例を取り入れ、悪い例を排除し、独自の方法を構築して乗り越えていくしかないというのが氏の考えるところです。

 こうしたつらい状況も、自分たちばかりでなく世界の人々がともに耐え忍んでいるものだと思うこと。(中国のように「手本にせよ」「感謝しろ」と主張するのではなくて)一緒になって乗り越えていこうという気持ちを持つことが大切だということでしょう。

 それなりに厳しい環境となっても、「世界中で同じような状況が起こっている」「同じような状況にこれからなる」、そして「必ず終わりが来る」ということを念頭に置くと、人にやさしく、冷静に対処することもできるだろうとこのレポートを結ぶ田中氏の指摘を、私もしっかり受け止めたところです。


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