*** june typhoon tokyo ***

FC東京 vs 川崎【J1リーグ】



 リモートマッチによる多摩川クラシコは、精度の差を見せつけられて川崎に大敗。

 近2年、長谷川健太体制となってからの多摩川クラシコは、ホーム・味の素スタジアムにて辛酸をなめ続けている。2018年は0対2、2019年は優勝へと走るFC東京を嘲笑うかのような完璧な崩しでの0対3と、力の差を見せつけられた。昨年あと一歩のところで優勝を逃して2位に甘んじたFC東京にとって、今年こそリーグタイトルをと願う上で越えなければならない壁がいくつかあるが、その一つが多摩川を挟んでにらみ合うライヴァル、川崎フロンターレに勝つことなのは言うまでもない。開幕戦、コロナウィルス禍による中断を挟んでのリーグ再開初戦となる柏戦も勝利し、2連勝で迎えたホームでの川崎戦。まだ戦術やフォーメーションなど完成度は高くないものの、これまで築いてきた守備の堅さと、開幕のアウェイ清水戦で見せたディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロ、アダイウトンのブラジリアントリオの破壊力や、安部や紺野ら勢いある若手による攻撃力などが噛み合わさり、攻守においてどのようなケミストリーを起こしてくれるのかという期待も高かったが、結果的には前半で4点を失う大味な試合に。またしても川崎へのリヴェンジはお預けとなってしまった。

 FC東京は右SBに中村帆高を起用し、中盤は高萩とアルトゥール・シルバのダブルボランチ、その前に安部を置き、怪我の状態が心配されたディエゴ・オリヴェイラが1トップに入る形。アダイウトン、室屋、橋本がベンチスタートとなった。川崎は前節同様の布陣。ジェジエウ、谷口のCB2枚の前にボランチの田中碧、左に大島、右に脇坂の中盤、長谷川、レアンドロ・ダミアン・家長の3トップ。

 序盤から川崎がボールを支配するなかで、FC東京が中盤の高い位置からボールを奪取してショートカウンターという攻防を予想していたが、FC東京は思ったほど前へのプレッシャーを高めず、どちらかというとまずはしっかりと守備を怠らないというスタイルに見えた。言い方を変えれば、まずは失点に最大限のケアをした入り方とも、消極的な攻撃とも表現出来る。序盤から圧力を高めてゲームを忙しくして、川崎に翻弄されるのを嫌がったか。だが、その守備的意識がかえって裏目に出た感じも。前線のディエゴ・オリヴェイラにボールを預けて、個の力を活かして打開していくのはいいのだが、守備の意識が強いためか、前線と中盤、ボールホルダーと近い距離でボールを渡せないことが多かった。両サイド、特に左サイドのライン際の狭いスペースで、テクニックを駆使しながら連係して突破していこうという試みもあったが、狭い地域から逆サイドへの大きな展開や、ワンタッチプレーを連続させて相手のプレスを遅らせるといった工夫もあまり見られず、中盤やゴール前で相手にひっかけられてシュートまで至らないというシーンが散見。一方、川崎はワンタッチプレーでのパス交換や、左サイドでは長谷川や大島がスペースに顔を出して、ボールを多角的に供給。ゴール前では自らも得点を狙うなど、アグレッシヴかつ俊敏な動きで、FC東京の中盤や連係を攪乱していく。

 FC東京は効果的な攻撃がほとんど見られないまま、17分に左サイドからのスローインを得た川崎。FC東京は登里のスローインへの注意をやや怠ったか、登里がスローしたボールをペナルティエリア内まで転がさせると、渡辺を背負いながらもレアンドロ・ダミアンがペナルティアーク左付近にマイナスのパスを送り、これを大島が右足一閃。左ポスト直撃のシュートの跳ね返りがそのまま右サイドネットを内側から揺らして川崎が先制。もちろん大島のスーパーゴールではあったが、直接ゴールネットを突き刺すのではなく、左上角に当たったシュートがFC東京にとってはアンラッキーな方向へ跳ね返ってのゴールだったゆえ、精神的なダメージが大きい失点として響いたような気がする。昨シーズンの最終節、優勝決定戦となった横浜F・マリノス戦でのティーラトンのゴールと同じように(東がスライディングでシュートブロックするも、その跳ね返りが不運にもGK林の頭上を越えるループの軌道となってしまって失点)、気持ちを切り替えづらい失点の残像となってしまった、とでも言おうか。

 この流れを止めようと、失点直後にFC東京は、右サイドからの東のパスを受けたディエゴ・オリヴェイラがペナルティエリア右から進出してニアにシュートを放つも、チョン・ソンリョンが好セーヴ。その後のCKも活かせずにいると、またペースは川崎へ。FC東京は細かくテンポのいいパス回しでボールを広く動かされ、対応に苦慮していると、23分、右サイド奥から山根にえぐられ、ゴールラインぎりぎりのところから中央へマイナスのグラウンダーのクロスを入れられたところで、中で待っていたレアンドロ・ダミアンが右足のオシャレヒールを決めて、川崎が追加点。28分には、家長の右からのファーへの浮き球クロスをレアンドロ・ダミアンが落としたところへ、長谷川が左下にシュートを突き刺し3点目。その後も川崎はレアンドロ・ダミアンが起点となってチャンスを演出。FC東京もゴール前で必死にシュートを食い止めようとするも、45分に長谷川がこの試合2得点目となるゴールを決めて、川崎が前半だけで4得点。4点目は、田中からの右サイドの裏のスペースへの浮き球を山根がダイレクトで折り返したところへ中央のレアンドロ・ダミアンがシュートするも、ややミスタッチ気味で威力もなかったのだが、スライディングでカヴァーに入った渡辺に当たったボールが、左サイドからゴール前へ詰めていた長谷川の前に転がって……という川崎のこの試合での勢いや流れを象徴しているようなシーンにも感じられた。

 FC東京は前半42分から高萩に代えてアダイウトンを投入し、後半開始から室屋、紺野をピッチに送る。何とか流れを取り戻したいFC東京は、後半序盤から前半とは異なり積極的に攻め込み、ディエゴ・オリヴェイラを軸にペースを引き戻していくと、アダイウトンやレアンドロ、紺野らが前へ仕掛けていき、ファールからペナルティエリア前でFKを得るなど、徐々にゴールへ近づく時間帯も出てくるが、ラストパスが精度を欠いたり、強引に個の力で突破にかかって最後に引っ掛かるなど、シュートチャンス直前で自らチャンスを潰してしまう。それでも31分に、左サイドの小川から速いアーリークロスが、エリア内のアダイウトンにドンピシャのタイミングとなるも、ヘディングシュートは僅かにゴールの枠を捉えられず。この決定機を逃すと、ペースを戻しかけていた勢いは完全に薄れ、緩急をつけた川崎の攻撃に翻弄されて、ボールが奪えず、またしても川崎の時間帯へ。FC東京は、アディショナルタイム4分も効果的に使えずに、またしてもホーム味スタで無得点での敗戦。川崎に選手交代を使って若手にも“試運転”させる余裕も与えての完敗となってしまった。

 タイトな日程を考慮しての選手起用かどうかは定かではないが、ボールへのプレスや競り合いという部分での迫力が、FC東京はやや劣っていたような気がする。安部やアルトゥール・シルバ、高萩は前に積極的に相手へプレスをかけ、ボールを奪い切る時はいいのだが、一転かわされてしまうと、その後ろのスペースを埋めるサポートの動きが足らず、川崎にそのスペースを巧みに使われてしまうことも。また、味方との距離がやや遠いこともあってリズムよくパスを展開出来ず、パスコースを迷ううちに球離れが遅くなり、相手のブロックに引っ掛かってボールロストする場面も。味方同士の距離が遠いゆえ、サポートも遅れてしまいがちのFC東京と、ワンタッチパスでリズムよくボールを運ぶ川崎とには、“一日の長“以上の技巧を痛感させられた。

 それでも、僅かな時間帯ではあったが、ディエゴ・オリヴェイラ、レアンドロ、アダイウトンのトリオが敵陣へ攻め込んだシーンは迫力の片鱗を見せたし、室屋と紺野の右サイドのコンビネーションで、右エリア奥へ侵入してゴールチャンスを演出する場面もあったりと、攻撃面での良さが全く出なかった訳ではない。チームとしての完成度に加え、戦術的な意識の上で、川崎に分があったというところだろう。

 FC東京にとっては、2連勝の喜びや今後の期待をも大きく削がれるほどの負けっぷりだったが、長期中断明けの再開2戦目、ファン・サポーターの目の前でもない無観客ということで、後に引きずることもないだろうし、週末には次の試合が待ち構えている。タイトな日程ゆえ肉体的な疲労は蓄積されるが、すぐに次の試合の準備を始めなければならない短いインターバルは、かえって開き直れるという意味で精神的にプラスに作用することもあろう。
 次節は、昨季の優勝決定の最終節にて眼前で悔しい光景を見せつけられた昨季リーグチャンピオンの横浜F・マリノスとの対戦だ。当然難敵ではあるが、FC東京としては2連敗は避けなければならない。今回はリーグ終了後に笑うための高い勉強代を払ったくらいに考えて、新たな意欲を持ってアウェイに乗り込んでいってもらいたい。

◇◇◇

【明治安田生命J1リーグ 第3節】
2020年07月08日(水)19:33試合開始 味の素スタジアム
入場者数 (リモートマッチ)
天候 晴 / 気温 25.5℃ / 湿度 85%
主審 木村博之 / 副審 山内宏志、勝又弘樹 / 4審 岡部拓人

 FC東京 0(0-4 / 0-0)4 川 崎

≪得点≫
(東): 
(川): 大島僚太(17分)、レアンドロ・ダミアン(23分)、長谷川竜也(28分)、長谷川竜也(45分)

◇◇◇

【FC東京】
≪スターティングメンバー≫
GK 33 林 彰洋
DF 37 中村帆高  → 室屋 成(46分*)
DF 04 渡辺 剛
DF 03 森重真人
DF 06 小川諒也
MF 45 アルトゥール・シルバ
MF 08 高萩洋次郎 → アダイウトン(42分)
MF 31 安部柊斗  → 橋本拳人(61分)
MF 10 東 慶悟  → 紺野和也(46分*)
FW 20 レアンドロ
FW 09 ディエゴ・オリヴェイラ → 田川亨介(79分)

≪サブスティテューション≫
GK 13 波多野豪
DF 02 室屋 成
DF 32 ジョアン・オマリ
MF 18 橋本拳人
FW 15 アダイウトン
FW 27 田川亨介
FW 38 紺野和也

≪監督≫
長谷川健太

◇◇◇

【2020 明治安田生命J1リーグ FC東京 試合日程】
第01節 02月23日(日)13:03〇FC東京 3-1 清 水(A・アイスタ)
第02節 07月04日(土)19:00〇FC東京 1-0  柏 (A・三協F柏)※Remote Match
第03節 07月08日(水)19:30✕FC東京 0-4 川 崎(H・味スタ) ※Remote Match

第04節 07月12日(日)19:30 FC東京✕横浜FM(A・日産ス)
第05節 07月18日(土)19:00 FC東京✕浦 和(H・味スタ)
第06節 07月22日(水)19:05 FC東京✕札 幌(A・札幌ド)
第07節 07月26日(日)18:30 FC東京✕鹿 島(A・カシマ)
第08節 08月01日(土)19:00 FC東京✕鳥 栖(H・味スタ)
第09節 08月09日(日)19:00 FC東京✕C大阪(A・ヤンマー)
第10節 08月15日(土)19:00 FC東京✕名古屋(H・味スタ)
第11節 08月19日(水)19:00 FC東京✕広 島(A・Eスタ)
第12節 08月23日(日)19:00 FC東京✕湘 南(H・味スタ)
第13節 08月29日(土)19:00 FC東京✕G大阪(A・パナスタ)

第14節 09月05日(土)・06日(日) FC東京✕大 分(A・)
第15節 09月09日(水)      FC東京✕横浜FC(H・)
第16節 09月12日(土)・13日(日) FC東京✕神 戸(A・)
第17節 09月19日(土)・20日(日) FC東京✕仙 台(H・)
第18節 09月23日(水)      FC東京✕C大阪(H・)
第19節 09月26日(土)・27日(日) FC東京✕鳥 栖(A・)
第20節 10月03日(土)・04日(日) FC東京✕湘 南(A・)
第21節 10月10日(土)・11日(日) FC東京✕G大阪(H・)
第22節 10月14日(水)      FC東京✕清 水(H・)
第23節 10月17日(土)・18日(日) FC東京✕横浜FC(A・)
第24節 10月24日(土)・25日(日) FC東京✕大 分(H・)
第25節 10月31日(土)      FC東京✕川 崎(A・)
第26節 11月03日(火祝)     FC東京✕鹿 島(H・)
第27節 11月14日(土)・15日(日) FC東京✕名古屋(A・)
第28節 11月21日(土)・22日(日) FC東京✕横浜FM(H・)
第29節 11月25日(水)      FC東京✕浦 和(A・)
第30節 11月28日(土)・29日(日) FC東京✕ 柏 (H・)
第31節 12月05日(土)・06日(日) FC東京✕広 島(H・)
第32節 12月12日(土)      FC東京✕仙 台(A・)
第33節 12月16日(水)      FC東京✕札 幌(H・)
第34節 12月19日(土)      FC東京✕神 戸(H・)

※第14節以降の日程詳細は、8月初旬・10月初旬に分割して発表予定

◇◇◇




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