うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

近代日本と軍部 1868-1945 

2020年08月06日 | 本と雑誌
小林道彦著 講談社現代新書 2020

今日は75回目の広島原爆忌なので、なんだかこの日を狙って書いているようであれだが、偶々書くのがこの時期になってしまった。
今年2月ごろの新刊である。SNSの広告に掲示されていて興味を持ち、ちびちびと読んでようやく読了した。といって、すごいボリュームのある本という訳ではなく、同時にたくさんの本を読み過ぎて時間がとれなかっただけだ。。通史なので登場する人物や事件も多く、ゆっくり読むのに適していたというのもある(僕はすごい遅読)。。

帝国陸海軍80年の通史を追いながら、近代日本の憲政と軍部の係わりについて考察していくというアプローチだが、とりあえず素人としては読み物としてとても面白い。とりわけ明治期において、まだ士族や藩閥の勢力が残っている中、その利害を調整しつつ、そして開国後次々と生じた諸外国との軋轢(戦争を含む)のなかで、次第に天皇を中心とした立憲国家の体制を整えていく様子がわかって、おもしろかった。。

のだが、こっちもなにぶん頭が悪いものだから、今こうして書いていると、どう評価したものか、整理がつかないのである。おそらく著者の方も、通史を自分なりの視点を持って書いていくのは相当苦労されたのではないかと思う。
もっと突っ込んでしまうと、前半、明治大正ぐらいは良いのだが、第一次大戦を過ぎたあたりからちょっとスタミナ切れして、前半ほどの充実した描写ができなくなってしまっているように思えた。

雑な感想を。
僕等は子供の頃、昔は男子は徴兵されて散々しごかれたんだぞ!と言われた(たぶん最後の世代だと思う)りして、けっこう徴兵という言葉にナイーブな感慨を持っていたりする(自分だけかもしれない)。おとなりの韓国では今でも徴兵制があり、時折問題が生じてニュースで報道されたりする。ドラマや小説などでも、戦前(の日本の男の子)は赤紙一つで招集されて、戦地でひどい目にあうという話がよく取り上げられる。

このように徴兵制にはあまり良い印象が持たれないが、明治期においてはそれまでの士族中心の社会から脱皮して、四民平等のもと誰もが等しく兵役を負い、そこから実力のあるものは取りたてられていく、といった、ある種進歩的な制度であるというとらえ方もあったようだ(初期には金を払うことで兵役を免れる道もあったが、次第に改められていった)。これは何も日本だけのことではないが、それまで武士中心に回っていた社会が、短期間で変わったのだから社会的な軋轢はそうとうのものだったことだろう。

明治を通し、政府と軍部を支えてきたのは維新の立役者たちであり、立場は違えど相互の信頼感は保たれ、社会の様々な矛盾を何とか調整してきた。

昭和に入ると社会全体にそうした柔軟性がなくなり、天皇を含めた社会全体のひずみが吸収できずに崩壊を招いた(小林氏は日露戦争の勝利がターニングポイントだったと指摘している)。
傑出した人材はどの時代にもある程度いるのだと思うが、ある時期にはそれらの人々がうまく連携できて社会を引っ張り、別の時代にはお互いの対立が調整されす、社会が停滞してしまう。

連帯と分断。社会の制度や思想などよりももっと大切な何か。それがあればお互いを縛りあう必要はないし、なければどんなに立派な能書きがあってもすぐ行き詰ってしまう。ただ、その何かを、どうやって獲得すればよいのか。
本の感想からは飛躍してしまうけど、そんなことを考えたりする。

校正せずとりあえず出します。後で書き直すかもしれません。

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« うなぎパン | トップ | 線路わきにオナガ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

本と雑誌」カテゴリの最新記事