なおじい(HOBBY:カメラ・ビデオ撮影・DVDオーサリング/資格:ラジオ体操指導員・防災士・応急手当普及員)

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北京、厳しさを増す厳戒態勢 習氏が恐れる崩壊の足音

2020年03月29日 17時46分00秒 | 健康・病気

北京、厳しさを増す厳戒態勢 習氏が恐れる崩壊の足音

2020年3月29日 8時00分 

北京市内の住宅区を視察する習近平国家主席=2020年2月10日、新華社
 中国の首都・北京は、新型コロナウイルスの感染封じ込めに一定程度成功しているにもかかわらず、人の往来などの移動制限が厳しさを増している。旗を振るのは習近平(シーチンピン)国家主席。厳戒態勢の裏には、「政治の中枢都市」という理由だけではない、複雑な事情があるようだ。
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 3月11日、住民の出入りを厳格に管理しているという北京市郊外の黒庄戸郷郎各庄村に足を運んだ。広さ1・5平方キロメートルの村全体がぐるりと壁に囲まれた構造で、中へ入る唯一の門の脇には、大きなプレハブの「登記所」が設置されていた。
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北京市郊外の郎各庄村に設置された登記所=2020年3月11日、冨名腰隆撮影
 一度外出した住民が村内へ戻るには、煩雑な手続きが必要になる。
 まず、体温測定と消毒をその場で済ませる。次に、過去14日間に汚染が深刻な地域に入っていないことを証明する。これは、中国の携帯電話会社が無料で提供を始めたGPS履歴サービスを利用する。それもクリアすると、健康状況などの問診を受け、顔認識機能付きのカメラでデータを記録した後に、ようやく門が開く仕組みだ。
 副郷長の田赫氏は「約4500人の住民すべてをこのシステムで厳しく管理している。この地区から感染者は出ていない」と胸を張った。
 中国の都市部は、そもそも日本の町内会にあたる「社区」ごとに共産党や公安が住民を管理するシステムで、北京でも警備員が人の出入りを見張る団地やマンションが多く存在する。ただし、平時ではここまでの厳しさはない。
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北京市郊外にある郎各庄村の入り口。「封鎖式管理を実行中」との案内があった=2020年3月11日、冨名腰隆撮影
 3月中旬の午後、懇意にしている中国国営メディア記者をお茶に誘うと「しばらく外出できない」とやんわり断られた。
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 聞けば、ローテーション制となった職場での勤務と会見などの取材以外は自宅待機を厳命されているという。「移動記録も会社にチェックされるから、ごまかせない。不自由この上ないよ」と電話の向こうで嘆いた
入国管理は北京以外で
 北京市衛生健康委員会によると、24日正午時点での同市内の新型肺炎感染者は計416人。8人が亡くなったが、94%にあたる392人がすでに快復した。2月27日以降の新規感染者は1桁で推移しており、最近は「ゼロ」の日も多い。
 感染者の減少ペースは他の都市と遜色ないが、飲食店や理髪店などの再開は明らかに遅れている。日本料理店を経営する中国人女性(52)によると、店舗の広さや通気性などを当局が厳しくチェックし、再開を認めない事例が目立つという。
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北京市郊外の郎各庄村の前に設置された宅配荷物置き場=2020年3月11日、冨名腰隆撮影
 市民の移動もままならないが、外から北京に入ることはさらに難しい。
 中国政府は3月23日から、北京に向かう国際旅客便をいったん上海や天津、内モンゴル自治区フフホトなど別の12都市に着陸させ、そこで検疫をクリアした乗客だけを北京に移動させる措置を始めた。直行便であれば成田から北京は4時間程度だが、半日以上遅れるケースも発生している。北京に到着した後も、国籍に関係なく、政府が用意した施設で14日間の隔離生活を強いられる。
 欧州や米国で感染が広がる中、中国政府は感染者の「逆流入」を防ぐ対策に力を入れている。24日発表の集計によると、国外から中国に入り感染が確認された人は計427人に上るが、うち3分の1が北京で確認された。北京市の陳蓓副秘書長は同日の会見で、一連の対策について、「首都の安全のために必要な措置だ」と強調した。
 とはいえ、本来北京が担うべき感染者の管理を任される他の都市にすれば負担であり、リスクに違いない。なぜここまで北京の対策に力を入れるのか。

北京の「特殊な地位」
 背景には、習氏の強い指示がある。
 「北京は特殊な地位にある。感染予防対策を改善し、大衆の移動と密接な接触を減らすよう管理を強化する必要がある」
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2020年3月10日、湖北省武漢市の新型肺炎患者の専門治療施設「火神山病院」を視察した習近平国家主席=新華社
 最高指導部の党政治局常務委員を集めた2月3日の会議で、習氏はこう訴えた。この発言は当日の発表にはなく、同15日に発売された党理論誌「求是」の中で初めて明らかにされた。習氏は同23日の政治局常務委員会議でも、湖北省や武漢市と並んで北京を挙げ、「外部からの感染流入と内部の拡散を許すな。感染源を可能な限り遮断せよ」と命じた。
 北京を重視する理由としては、当然、習氏ら党指導部が集う政治の中枢だからということがある。党関係者は、習氏の意図を「党中央からあらゆる指示が下される以上、北京の機能をまひさせるわけにはいかない」と説明する。
 天安門広場の西側に建つ人民大会堂で開かれる全国人民代表大会(全人代、国会に相当)も延期されたままで、開幕の日程も定まっていない。北京の感染状況は全人代をはじめとするさまざまな政治日程にも大きく影響する。

SARSの苦い経験
 一方、国営メディア記者は、習氏が北京の感染阻止に熱心なのは、別の理由もあると指摘する。
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海外からの入境者の隔離先として使われる北京の国際展覧センターで手続きをする職員=2020年3月14日、新華社
 「SARS(重症急性呼吸器症候群)の時は北京の対応を誤り、政権の安定を揺るがした。習氏は同じ失敗を繰り返さないことを強く意識している」
 広東省で後にSARSと分かる「原因不明の肺炎」が最初に報告されたのは2002年11月16日。胡錦濤氏が江沢民氏の後継者として党総書記に就いたのは、その前日だった。
 SARSの初動対応で、中国は大きくつまずいた。しばらく事実が伏せられたまま、年が明けた03年2月の時点でも「クラミジアが原因とみられ、治療は容易だ」などといった報道が続いた。
 対策が後手に回る間に、感染者を拡大させてしまったのが北京だった。3月には北京で最初の患者を確認していたが、その事実も1カ月以上伏せられた。結果的に北京の感染者は、中国全土で最多の2521人に達した。
 当時、リーダーシップを発揮できず窮地に陥る胡氏に対し、軍トップの中央軍事委員会主席にとどまり実権を残していた江氏やその周辺は、しばらく静観を決め込んだという。胡氏は楽観的な発表を続けた衛生相と北京市長を解任し、過小に報告されていた感染者数も修正。3月に首相に就いた温家宝氏や、海南省党委書記から北京市長代理に登用され、最前線で対応にあたった王岐山氏(現国家副主席)の助力もあり、何とか試練を乗り越えた。
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海外からの帰国者の検査・治療に使われている北京の「小湯山病院」。重症急性呼吸器症候群(SARS)の際に建設された=2020年3月16日、新華社
 習政権は8年目に入り、一見、当時の胡政権のような脆弱(ぜいじゃく)さは見られない。だが、内情は決して盤石とは言えず、とりわけ初動対応のまずさや現場の医師の証言が封じられる現状に対しては、国民の不満がマグマのように蓄積している。
 改革派の学者である清華大学教授の許章潤氏は2月中旬、「憤怒する人民はもはや恐れていない」と題した文章で「公権力を持つ者たちが感染を隠蔽(いんぺい)するのは、核心(習氏)がぜいたくを楽しみ、平和であるかのように振る舞うためであり、人々の命に関わることなどまったく心にないのだ」と政権を痛烈に批判した。
 政府の発表や多くの都市で経済活動が再開しつつある現状を見ると、中国の状況が良い方向に向かっていることは確かなようだ。だが、厳しい管理がなお続く北京の様子からは「共産党による統治の優位性が示された」と習氏が豪語するような余裕は伝わってこない。国営メディア記者はこう話す。
 「感染症対応は、一つのミスが政権の崩壊にもつながる。SARSを経験した王氏が、習氏によく説明しているはずだ。だからこそ、北京対策に懸命になっている」(特派員リポート)


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