晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

朝倉喬司 『戦争の日々―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメントー(上・下巻)』 その1 「赤紙」のシステム    

2020-11-20 16:12:23 | Weblog

鹿肉!

磯田佳孝氏の『消えた道銀』(北海道新聞20.10.22夕刊「今日の話題」)が鋭い。スカ政権が進めようとしている地方銀行の統合政策は、戦時下の「一県一行主義」で旧道銀などが拓銀一行に統合された歴史を思い起こすと指摘。(以下、引用)「時の蔵相は『銀行がたくさん並んでいる結果、競争的になり、ついには不完全な貸し出しをする』ためと議会で説明した。だが、実態は軍備拡充のため、国債増発の引き受けと預金吸収を目的に、各地で強力な中心となる銀行が必要になったようだ。」。僕は、「経済クラッシュ」ノオト(20.6.4~9.2)でも書いたが、戦費調達と国家債務解消のために、貯蓄奨励、国債強制引き受け、預金封鎖、財産税賦課・・というかつての歴史を忘れてはならない。

 

『戦争の日々―天皇から娼婦まで、戦時下日本の実況ドキュメントー(上・下巻)』(朝倉喬司著 現代書館 2009年刊) その1 「赤紙」のシステム  

近くの図書館から何気なく借りた本だったのだが、読み始めると一気に引き込まれた。1938(昭和13)年の南京陥落から1941(昭和16)年12月の日米開戦、そして1945(昭和20)年8月の敗戦までの歴史を、新聞、雑誌や日記などに残された記録から当時の人々の日常生活や気持ちを中心に丁寧に描かれている。

感激なのは、長年に渡って知りたいと思っていた疑問のうちのひとつが解けたことだ。

それは、国民の中から誰を召集するかを決めるのはどこの機関なのかということだ。すなわち「赤紙」のシステムだ。最後に国民のところに配達するのは全国の市役所、町村役場の兵事係の役目ということは、映画やドラマでもお馴染みだ。

(上巻82Pから要約引用)「陸軍の場合、参謀本部が年次ごとに動員計画を作成し、天皇に上奏し『御名御璽』入りの允裁(いんさい:許可)得る。この計画に基づいて各地の師団司令部が、どの部隊にどのような(年齢、階級、健康状態、特権技能等を考慮)人員を何名配置するかを具体的に決めて、各道府県の連隊区司令部におろす。ここには管轄地域内の市役所、町村役場から提出させた『在郷軍人名簿』が保管されていて、この名簿からピックアップする。ここで初めて、赤紙が誰に届けられるかが決定される。」ということだ。

今、国民生活に係わる様々な制度が戦前・戦中のように変えられてきていると感じる。この国が戦争のできる国家へ向かっていることに危惧を覚える。スカ政権のデジタル化政策もそのひとつだ。一例をあげると、マイナンバーカードが健康保険証としても使えるようになることを、これで手続きが楽になると手放しに喜べないだろう。個人の健康状態が国によって管理され、それは兵隊として有用な人間かどうかの重要な情報になるからだ。

(上巻83P)「在郷軍人名簿からの選考と同時に参謀本部は再び天皇に『動員実施』を上奏して許可を得る。そして赤い山型の印が押された赤紙の入った封筒は警察を通じて各市町村に届けられる。参謀本部の決定から数時間後のことだそうだ。各市町村の兵事担当は赤紙を配り終えると、その業務終了時刻の軍への報告、さらに入営する兵の身上調査書、戸籍抄本を軍に提出する。身上調査書には、本人の日頃の評判、家族関係、資産(田畑の面積、家屋の規模)、職歴、宗教、特に海軍では家族も含めた思想・運動関係の有無、血族の犯罪歴、精神疾患などが記載されていた。」

書かれていたのは陸軍の例だが、海軍はどうしていたのか。召集される国民がどのようにして陸軍と海軍に分けられるのか。徴兵検査はどこの機関が実施したのか、不公平な徴兵などがあったと聞くがそれは真実か、など新たな疑問が次々と湧いてくるがこれらについては後日ゆっくり調べたい。

 

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 伊藤邦武他責任編集 『世界... | トップ | 朝倉喬司 『戦争の日々(上... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事