(2007.10.2.)
『ローマ帝国の滅亡』(64)
アンソニー・マン監督の遺作だが、これはプロデューサー、サミュエル・ブロンストンの趣味が大きく出た映画だろう。
リドリー・スコット監督の『グラディエーター』(00)との類似点が多く、この映画の屈折したダメ皇帝役のクリストファー・プラマーが、『グラディエーター』のホアキン・フェニックスとそっくりな点などに先見の明も見られるのだが、アレック・ギネス、ジェームズ・メイスンら、イギリスのスターたちを揃えながら、結局はイタリア人のソフィア・ローレン一人がいいとこ取りをしているという、バランスの悪さを感じさせる映画という印象が残る。
史劇ブームに乗り遅れた徒花という感じがして、皮肉にも、ローマではなく“史劇映画の滅亡”を暗示していたかのようにも見える。
『サーカスの世界』(64)
ヘンリー・ハサウェイ監督の、この映画のプロデューサーはまたもサミュエル・ブロンストン。彼はスペインのマドリッドのスタジオで『エル・シド』(61)や『北京の55日』(63)、そして『ローマ帝国の滅亡』(64)などのスペクタクル史劇大作をプロデュースしたものの、後に破産したという悲運の人。
この映画でも『エル・シド』と『ローマ帝国の滅亡』のソフィア・ローレン同様、イタリア女優のクラウディア・カルディナーレを起用するという“イタリアかぶれ”ぶりを披露している。
サーカスで行われるワイルド・ウエスト(西部劇)・ショー、船の沈没、ヨーロッパ巡業、恋愛模様、大火災(もちろん本物のサーカス芸人も多数登場して妙技を披露する)と、よく考えたらめちゃくちゃな話なのだが、観客をいかにお腹いっぱいにさせるかに腐心した大サービス作という言い方もできる。
そして団長役のデューク=ジョン・ウェインのまさに一人舞台が展開される。映画公開当時、すでに46歳で容色の衰えたリタ・ヘイワースが意外な健闘を見せるのも、見どころの一つだ。