見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2019年10-12月@東京:展覧会拾遺

2019-12-15 23:13:37 | 行ったもの(美術館・見仏)

 今年の10月後半から先週まで、私用と仕事で出歩く週末が多かったので、実は書いていない展覧会レポートが溜まっている。とりあえず、思い出せるものだけ書いておく。

山種美術館 広尾開館10周年記念特別展『東山魁夷の青・奥田元宋の赤-色で読み解く日本画-』(2019年11月2日~12月22日)

 東山魁夷と奥田元宋か、そんなに好きではないしな…と行き渋っていたのだが、実は「色で読み解く日本画」が主題で、このほかにも「黄」「緑」「黒」「白」など色で分類された、多様な画家の作品が並ぶ。「緑」を基調とした近藤弘明(こうめい)『清夜』がよかった。初めて知る画家。「金」の森田曠平『出雲阿国』はとてつもなく華やかで好きな作品。

国学院大学博物館 企画展『大嘗祭』(2019年11月1日~12月22日)

 当初の会期を延長して12月22日まで開催中。主に江戸時代の関係資料を展示する。年表パネルで確認したが、大嘗祭は、応仁の乱以降、約220年は行われず、江戸時代中期に再興され、元文3年(1738)桜町天皇からは現在まで途切れることなく行われている。だから古代のままの祭祀儀礼でないことは言うまでもない。江戸中期の『宮中節会図巻』という資料だったと思うが、拝舞(はいぶ、はいむ)の様子が描かれていて面白かった。岡田荘司先生が大嘗祭を解説するビデオがロビーで流れていて、たくさんの人が熱心に見ていた。岡田先生によれば、大嘗祭の核心は天皇が神に食物を供することで、寝床は使わない、特に意味がない、と強調していたのがひっかかった。

五島美術館 特別展『美意識のトランジション-十六から十七世紀にかけての東アジア書画工芸』(2019年19月26日~12月8日)

 はじめ、タイトルの意味がよく分からなかったが、揺れ動く東アジアの盛んな交易と移り行く社会構造を背景に、爛熟する造形と清新な美意識が交錯する16~17世紀に焦点をあて、文化的に見ても過渡期(トランジション)にあった時代の姿を描く展覧会。他館からの出陳も多く、珍しいものが見られて面白かった。ちょっと昨年末の台湾の故宮博物院で見た企画展『アジア探検記-17世紀東西交流物語』を思い出した。たまたま行った日に大木康先生の講演会「明末の文人趣味と出版文化」が開催されていたので聴講した。

大倉集古館 リニューアル記念特別展『桃源郷展-蕪村・呉春が夢みたもの』(2019年9月12日~11月17日)

 2014年4月から5年に及ぶ増改築工事のため休館していた同館がついにリニューアルオープンした。伊東忠太設計による特徴的な外観を保存しつつ、内部はずいぶん現代的で居心地のよい空間に生まれ変わった。地下のミュージアムショップとトイレもきれい。エレベータ(以前はあったかしら?)が使いやすくなったが、古い階段も保存されていてよかった! 特集は蕪村と呉春だが、同館が彼らの作品を意識的に収集していた記憶がないので、やや意外だった。大好きな『随身庭騎絵巻』も久しぶりに見ることができた。

江戸東京博物館 企画展『18世紀ソウルの日常-ユマンジュ日記の世界』(2019年10月22日~12月1日)

 18世紀、朝鮮の文臣・ユハンジュン(兪漢雋)の息子として産まれたユマンジュ(兪晩柱、1755-1787)は、21歳になった1775年1月1日から死没する直前の1787年12月14日までの間、およそ13年間にわたって日記を書き続けた。本を愛し、病気に悩み、科挙受験に失敗して打ちひしがれたり、家長として奮闘したりするユマンジュの姿と、漢陽(現在のソウル)の風景やそこに暮らす人々の日常生活を日記から読み解く。会場をめぐるうち、全く知らなかったユマンジュという人物に惹かれていく。最後に早世した息子を悼む父の言葉があって、静かに共感する。もとはソウル歴史博物館で開催された展覧会であるらしい。ソウル歴史博物館でつくられたらしい、ハングル入りのイメージ映像も美しかった。こういう試みはもっと増えるとよいと思う。


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