見もの・読みもの日記

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武侠ブロマンスファンタジー/中華ドラマ『陳情令』

2020-05-14 22:45:23 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『陳情令』全50集(騰訊視頻、2019)

 昨年、中国で高い人気を得たドラマであることは知っていたが、原作が耽美BLファンタジーで、若手イケメン俳優が勢ぞろいと聞いて、私が手を出す領分じゃないなと思っていた。しかし、日本でもファンが増えていると聞き、騙されたつもりで見始めたら意外と面白くて、あっという間に最終話まで見てしまった。特に終盤は、そうだったのか!の連続で、泣いてばかりいた。いまWOWWOWで初視聴中の皆さんには、絶対ネタバレを読まないことをお勧めする。

 ドラマは、ある戦いから16年後、莫家荘を訪れた藍氏門下の少年たちが、傀儡(ゾンビ)の跳梁する怪事件に巻き込まれ、莫玄羽という青年に出会うところから始まる。16年前、仙境世界には、五大世家(姑蘇藍氏、蘭陵金氏、清河聶氏、岐山温氏、雲夢江氏)が存在し、とりわけ岐山温氏が他家を圧していた。

 雲夢江氏の江宗主は、娘の厭離、息子の江澄に加えて、友人の遺児・魏嬰(無羨)を育てていた。三人は実の兄弟のように育ったが、江澄は、奔放不羈で才能にめぐまれた魏無羨にどこかコンプレックスを感じていた。あるとき、姑蘇藍氏の山荘「雲深不知処」で学問を学ぶため、名家の子女が集合する。ここで魏無羨は、温家の一族だが宗主一派とは一線を画す、温情と温寧の姉弟と親しくなる。また、藍氏の二公子で無口で真面目な藍湛(忘機、含光君)と知り合い、お互いに惹かれ合う。

 楽しいひとときもここまで。野心家の温宗主は、この世に4枚存在すると言われる陰鉄を各家から奪い取ることを画策し、ドラ息子の温晁を使って、藍氏、聶氏、そして江氏に実力行使をかける。江宗主夫妻は殺され、江澄は仙術の源である金丹を失ってしまう。魏無羨は、温情・温寧の協力を得て、江澄の金丹の復活に成功するが、その直後、温晁一味に捉えられ、夷陵の乱葬(葬送地)に突き落とされる。佩剣を残して姿を消した魏無羨が、戻ってきたのは3か月後。陳情と名づけた横笛を武器に温晁に復讐を遂げ、温宗主打倒にも貢献する。藍湛は、邪法に係わらないよう忠告するが、魏無羨は気に留めない。

 温氏滅亡後は平和が訪れたかに見えた。しかし小人たちの専横、温氏の残党に対する無慈悲な仕打ちに腹を立てた魏無羨は、温情・温寧らを連れて乱葬に籠り、夷陵老祖と恐れられるようになる。一方、江厭離は金氏の御曹司・金子軒と結婚し、長男・如蘭(金凌)も生まれて幸せに暮らしていた。あるとき、魏無羨が山道で行き合った金氏の一党と争っていた際、正気を失った温寧が金子軒を殺してしまう。人々は魏無羨が鬼将軍(傀儡)温寧を操ってやったことと噂し合う。

 かつての温氏の宮城・不夜天では、各氏の代表が集まり、金宗主を中心に団結を固める誓いの式が行われていた。そこに怒りとともに乱入する魏無羨。闇にうごめく別人の影。無羨に一目会おうと混乱の中に飛び込んだ師姐・江厭離は命を落とす。そして魏無羨は藍湛の差し伸べる手をすり抜けるように崖下に落ちて行った。

 16年後、藍湛に再会した莫玄羽(実は魏無羨)は、再び動き出した闇の力、陰鉄で鋳造された「陰虎符」の捜索に乗り出し、16年前から張り巡らされていた陰謀の首謀者を突き止める。

 ドラマは、原作に比べるとBL(ボーイズラブ)描写が薄められているので、原作小説ファンには物足りないらしい。しかし、これはこれで、男性どうしの絆を主題にしたブロマンスファンタジーとして完成度の高いドラマだと思う。正反対の性格を持つ主人公ペアがもちろんよいのだが、それ以外にも、敬意と友情、嫉妬や裏切りなど、さまざまな関係性の組合せがあって、どれもよかった。原作者は若い(?)女性だというが、金庸など武侠小説の王道を踏まえているなと感じた。日本の小説やドラマ(陰陽師とか)の影響もあるのだろうか。

 おちゃめで表情豊かな魏無羨(肖戦)はいつも可愛いし、わずかな表情の変化で繊細な感情を表現する藍湛(王一博)は絵画のように美しかった。90年代頃の中国の風景を思い出すと、女子は可愛くなってきたけど、男子はまだまだだなーと思っていたのが夢のようだ。このドラマも中国の配信サイトで見ていたのだが、藍湛に扮した王一博が登場するカップめんのCMがあって爆笑した。藍湛という役柄、カッコいいのにどこか笑えることを分かって演じているのが賢いと思った。

 女性では温情役の孟子議、2017年版の「射雕英雄伝」で穆念慈を演じていたのを覚えている。強くて幸せになれない女性が似合ってしまうタイプ。私は弟の温寧が好きだったので、ドラマの大結局はよかったと思う。あと前半の巨悪・温宗主役の修慶は、20年近く前の金庸ドラマの悪役ぶりが大好きだった俳優さんなので、こんな佳作で再会できて嬉しかった。


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