見もの・読みもの日記

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小林古径「清姫」全公開/日本画の挑戦者たち(山種美術館)

2018-10-18 23:09:36 | 行ったもの(美術館・見仏)
山種美術館 企画展・日本美術院創立120周年記念『日本画の挑戦者たち-大観・春草・古径・御舟-』(2018年9月15日~11月11日)

 東京美術学校を辞職した岡倉天心が、大観をはじめとする若手画家らとともに1898(明治31)年に創設したのが日本美術院。その創立120年を記念し、日本美術院の草創期に活躍した画家から、現代の日本画壇を代表するにいたる同院の画家の優品を紹介する。冒頭に、馬にまたがった岡倉天心の写真があって、ちょっと朝ドラの牧善之介を思い出してしまった。

 狩野芳崖、橋本雅邦、下村観山、菱田春草など、日本美術院と聞けばすぐ思い出すような画家の作品が並ぶ。横山大観は、中国・北京近郊の風景を描いた水墨画巻『燕山の巻』。風景の魅力に身を委ねているような素直な作品で好き。『喜撰山』は小品だが、国宝『日月山水図屏風』が透けて見えるような気がする。今村紫紅には、いろいろなタイプの作品があるが、建礼門院と御供の尼を縦長の画面いっぱいに大きく描いた『大原の奥』は私の好きな作品のひとつ。

 展示室の突き当りまで行って驚いたのは、小林古径の『清姫』全8面が出ていたこと。「日高川」や「入相桜」はよく見るけど、正直なところ、8面全てを一挙に見た記憶がない。最初の「旅立」は、安珍が年嵩の僧に従って道を行く。この1面だけは白描である。「寝所」は旅の宿で、闇の中、安珍の寝所に忍び込む清姫。実は二人が一緒に描かれているのはこの1枚しかない、「熊野」は朝霧(?)が立ち込める神聖な熊野大社。無人の風景。「清姫」は、置き去りにされたと知って、山を駆け降りる清姫。スピード感がすごい。「川岸」は逃げる安珍。「日高川」は、片袖を脱ぎ、向こう岸の見えない大河に飛び込もうとする清姫。「鐘巻」は朱塗りの柱の立つ鐘楼で、焔を身にまとった純白の龍が鐘を抱いている。そして無人の「入相桜」。

 それぞれ1枚ずつ見ても魅力的な作品だが、連続して見るとさらに感慨深い。私は昨年、和歌山県立博物館の特別展『道成寺と日高川』を見てきたので、素朴な絵巻や絵解き図の数々を思い出しながら(それらも魅力的だが)、古径の『清姫』の魅力を考えていた。確か、古径は特定の「日高川縁起」の底本に依ったわけではなく、記憶や空想の中から、この作品を創り出した、という解説が添えられていたことを思い出す。

 後半は速水御舟、安田靫彦、前田青邨など。歴史画が好きなので、前田青邨の『腑分』や安田靫彦の『出陣の舞』(織田信長を描いた)が出ていて嬉しかった。あと、前田青邨の『大物浦』が出ていたのには、嬉しさで「マジか!」と声が出そうになった。小茂田青樹の『春庭』も好きな作品なので、見ることができて嬉しかった。優しくて控えめな作品だと思うのだけど「日本画の挑戦者」に混ぜてくれてありがとう。

 小山硬『天草(洗礼)』は、少ない回数だが見たことがあるかもしれない。天草のキリシタンを主題にした作品を数多く描かれている方なので、画面を見た瞬間、小山硬さんだ!とすぐに名前が浮かんだ。小山硬さんの作品があるなら、田淵俊夫さんもあるかな?と思ったら、『輪中の村』という作品が出ていた。平山郁夫『バビロン王城』は、茶色い日干しレンガと青いタイルでできた幾何学的な王城を描く。よく見ると、白い衣の人間たちが大勢、小さく整然と描かれている。

 第2展示室は、さらに新しい世代の画家の作品。宮廻正明『水花火(螺)』は、舟人が網を打つ一瞬を描いたもの。面白いけど、少し工夫が勝ちすぎているかなあ、と思う。

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