見もの・読みもの日記

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更紗の魅力を併せて/至高の陶芸(五島美術館)

2020-09-09 23:53:31 | 行ったもの(美術館・見仏)

五島美術館 開館60周年記念名品展IV『至高の陶芸-日本・中国・朝鮮-』(2020年8月29日~10月25日)

 コロナ禍からの復活第二弾は陶芸名品展。前回は、玄関前に職員の方が待っていて検温を求められたが、今回は入口に見慣れない装置が設置されていて、センサーの前に手首を差し出すと検温結果が表示される。また装置の下に手を差し入れると消毒液が噴霧される。おおー未来的!と(言うほどでもないが)感心した。

 会場には日本・中国・朝鮮のやきもの約60点が並ぶ。鼠志野茶碗『銘:峯紅葉』や古伊賀水指『銘:破袋』、信楽一重口水指『銘:若緑』などは同館でおなじみの名品。初見ではないが、今回あらためて、いいなあと思ったのは古九谷(青手)の『色絵山水文大鉢』。色も形も抽象化された山水図で、皿の中心に向かって深く落ち込んでいくような、遠近感の強調が面白いと思った。

 伯庵茶碗(所有者・曽谷伯庵の名前からこう呼ばれる。瀬戸茶碗と考えられているが窯跡は分かっていない)『銘:冬木』と『銘:朽木』が出ていて、特に前者の大ぶり(うどんも食べられそう)なところが好きになった。「冬木」は材木商の冬木家からついた銘だというが、冬木小袖、冬木弁財天(深川七福神)の冬木か。

 中国のやきものでは、南宋の『青磁鳳凰耳瓶(砧青磁)』が美しいなあと思った。かたちが同タイプでも色味が違って、もっと緑が強いものもあるが、これは水色(空色)に近い。汝窯水仙盆を思い出すミルキーな青。むかしは、緑の強い青磁が好きだったのだが、だんだん好みが変わってきた。『青花樹鳥図大壺』は景徳鎮の民窯。短くなった箒(またはハタキ)のような柳、どこを見ているのか分からない鳥の顔など、素朴な絵付けがかわいい。磁州窯の優品も見ることができて満足。

 朝鮮のやきものでは、朝鮮時代の『白磁辰砂蓮花文壺』がよかった。辰砂というけれど、ピンク色のインクで描いたように見える。

 展示室2は何だっけ?と考えながら行ったら、更紗の特集だった。いくつかの更紗手鑑のほか、実際に同館コレクションの収納に使われている包み袋・包み裂が展示されていた。鼠志野茶碗『峯紅葉』の包み裂は『黄色縞小花文様西欧更紗』で、名前どおり、赤地に黄色のチロリアンテープみたいなストライプがものすごく可愛い。オランダ製の生地だという。黄瀬戸茶碗『柳かげ』の包み裂は『緑地七面鳥文様西欧更紗』で大きくてリアルな七面鳥のプリントがユニーク。イギリス製。

 本展に出ていない作品の包み裂もあって、『白地小花文様西欧更紗畳紙』は、三十六歌仙『猿丸太夫像』に付属する。細かいチェック柄の升目のひとつひとつに、薔薇の蕾のようなピンク色の小花が配されている。秩仕立て。あの鬼神のように恐ろし気な猿丸太夫像が、こんな可愛い外箱に収まっているのかと思うと少し幸せな気分になる。インド更紗の『縞手更紗畳紙』は赤と青のシャープなストライプ。長方形の箱に仕立てられていて、伝・馬麟筆『梅花小禽図』を巻いて収めるためのものである。こんな美麗な包み裂に、個々の美術品を包ませた収蔵庫の風景を見ることは、所蔵者だけの特権なのだろうなあ。


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