この前、誰かに「趣味は?」と聞かれたんだけど、音楽を“なりわい”にしている今、「あれ?趣味がないな。」と思う。
ぼーっとすることと、お酒と、美術鑑賞かなぁ。それって趣味、かなぁ。
酒は、飲める人なら、誰でも好きだよね。趣味、じゃないよね。
以前は250CCのオフロードバイクに乗ってた。
行く先々で、イタリア製のオフロードブーツのまま、山に登ったり、
あと、10年くらい前まで市民マラソン大会で5キロ、10キロを走ったりしてた。
今は「散歩」程度だなぁ。それも数十分。時間の空いた時に。健康法みたいなもんだね。これって、趣味じゃない。
してみると、やっぱり美術鑑賞かな。
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鳥取県立博物館ってとこで、今「土方稲嶺(ひじかたとうれい)」の日本画展をやってるんだ。
その話、あちこちでするんだけど、反応が薄いね。
水墨画とか、古い日本画に興味がないみたい。
ひじかたっていうと、としぞうですか。って聞かれる。
あ、まー、そうね。そうなるよね。だわねぇ。
稲嶺のお師匠さんの宋紫石(そうしせき)さんの名前は知らなくても、当時、親交があったのが、円山応挙に谷文晁となると、見方が違ってくるわなぁ。
近所の人でもさ、なんか有名な人と知り合いってだけで、へえーってなったりしない?
アーンド、伊藤若冲と同じ時代に京都で絵師をやっていたということも、かなりのインパクトだわね。
そうなのよ。人って、名前、ネームバリューに弱いんだね。
で。
えっと。この人の絵、大きな屏風絵もたくさん描いていますが、掛け軸などは、はっきり言って、かなり地味です。
間違いなく、すごいんですよ。
このすごさに派手さがない。
薄墨で濃淡を描いて奥行きを出すのが得意です。
今のマンガでスクリーントーンってあるでしょう。ああいう感じです。
何種類ものスクリーントーンを使い分けて、立体感を出すんです。
それから、今回の展示の目玉はなんといっても、襖絵です。
そのまま部屋の中で襖絵に囲まれて、部屋を移動しているような、そういう展示方法です。
やっぱり薄い絵です。
でも、ぼくは、落ち着くんです。
そして、この襖絵。もともとは、お寺でボロボロに虫食いになって、汚れて変色していたものなんです。
それを執念とも言えるくらいのち密さ、丁寧さで修復をしているわけです。
ここ、なんですね。心を動かされた人がいて、修復された絵が、見事によみがえっていました。
空間も時間もそこには存在しないかのようでした。
稲嶺自身、名があること、無名であること、どちらにもこだわっていなかったんだと思う。
たくさんのお弟子さんを育てられたことでも後年有名になっています。
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デモや鉄砲では、人は動かない。
何が、どう伝わるのかが、時間も空間も大きく隔てて、意味をもつのだなと実感しました。