2020/8/28
東京帝大に画工として赴任した平瀬が、世界ではじめてイチョウの精子を発見する話。
実在の研究者を扱い、登場実物は大学の研究者ばかり。
いわゆる「高校生らしさ」のない作品。
逆に言えば、高校生であることの強みに頼らず、完成度の高い作品を作ったということ。
立体感のある舞台装置、とりあえず観ている人の感情に働きかけるツカミ部分、話の分割によるテンポアップ、わかりやすい人物造形、観客が見やすくなりそうなことは大体取り込んでいる。
平瀬、池野、牧野の主要三人も、日頃の訓練をうかがわせる、地に足のついた演技で魅力がある。
大学の研究と言っても、その瞬間を逃さないために、木の上で寝起きしたり、研究室を銀杏臭まみれにしたり、その過程は大変泥臭い。地味で地道な調査を積み重ねていく。
不遇だった偉大な功労者を、冗長な笑いや奇抜なことなしに、地道な積み重ねを以て讃える話が、きちんと評価されていることに感動する。審査員はいい仕事をしている。
(WEB SOUBUN)