みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0956「焦がれる1」

2020-09-19 17:55:10 | ブログ短編

「ねぇ、見ててよ。あたし、今日こそ、ちゃんと告白(こくはく)するから…」
 結衣(ゆい)は親友(しんゆう)の吉乃(よしの)に言うと、廊下(ろうか)に一人でいる小木(おぎ)君のところへ向かった。吉乃は結衣に向かって小さな声で、「がんばれっ」と声をかけた。
 ――結衣が小木君と出会ったのは入学式(にゅうがくしき)のときだった。それは、まさに雷(かみなり)に打たれたような衝撃(しょうげき)だった。結衣にとっては初恋(はつこい)…、いや、そんな言葉(ことば)で片(かた)づけることなんかできない。生涯(しょうがい)をかけても添(そ)いとげたいと思えるようなものだった。
 小木君とは同じクラスになれなかったので、結衣は一年の間は遠(とお)くから見つめることしかできなかった。彼に話しかけるなんて、とても彼女にはできるはずもなかった。ただ、吉乃には彼への思いを打ち明けて、彼と付き合ったらどうするか夢(ゆめ)を膨(ふく)らませていた。
 二年になったとき、進展(しんてん)がみえた。小木君と同じクラスになったのだ。結衣は嬉(うれ)しくて、吉乃と一緒(いっしょ)になって涙(なみだ)を流(なが)した。そして、彼女の席(せき)は小木君の隣(となり)…。結衣は心臓(しんぞう)が止まるかと思うほど、震(ふる)えてしまった。彼女は必然的(ひつぜんてき)に彼とおしゃべりをすることに…。
 結衣が告白を決意(けつい)したのは初夏(しょか)のころだった。何度も告白をしようとして途中(とちゅう)で挫折(ざせつ)し、そのたびに吉乃が励(はげ)まし続けて今日という日になったのだ。
 ――吉乃が二人の様子(ようす)を見つめていると。結衣がうつむき加減(かげん)にしゃべり出し…。そして、小木君はそれを聞いて微笑(ほほえ)んだ。結衣も、嬉しそうに笑顔(えがお)になっていた。吉乃はホッとしたような安堵(あんど)の表情(ひょうじょう)を浮(う)かべたが、急に悲(かな)しそうな顔つきになりその場を離(はな)れた。
<つぶやき>思いが通じたのですね。でも、恋には障害(しょうがい)がつきもの。思いが強いほど…。
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