ねこ庭の独り言

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ガウディの奇跡 - 4 ( 知るべきは、大国の身勝手 )

2020-05-25 17:55:22 | 徒然の記

 『ガウディの奇跡』書評の、続番外編です。

 「フランコは、第二次世界大戦を次のように見ていた。」「世界では、全く別の二つの戦争が戦われている。」「第一にヨーロッパでは、ソ連に対する戦争であり、第二に太平洋では日本に対する戦争であるとし、」「独米英を含む、全キリスト教世界は、」「野蛮で東洋的・共産主義的なロシアを、共通の敵として戦うべきであるとした。」「彼はこの考えに沿って、連合国とドイツの講和調停を行った。」

 共産主義国ソ連は、資本主義国共通の敵でありながら、米英仏の連合国軍に組み込まれ、利用したりされたり、しています。フランコ将軍にとって日本は、ソ連を敵として戦っている限り、仲間でした。現在のスペインで、将軍がどのように評されているのか、知りませんが、一連の情報を読み印象が変わりました。

 「フランコ氏は、言われているほど、悪人ではなかったので無いか。」

 国民弾圧政党である共産党の支配から、スペインを守ったので、案外感謝されているのかもしれません。将軍のイメージを、悪人として定着させた一つの要因に、『誰がために鐘はなる』という有名な小説があります。米国の誇るべき作家と言われる、ヘミングウェーの作品です。

 独裁者フランコと戦う、義勇軍兵士の物語で、世界のベストセラーになり、ハリウッドでも映画化されました。『ガウディの奇跡』の著者である北川氏も、フランコ将軍悪人説に立っています。

 「抵抗空しくスペインは、フランコの独裁政治という、暗黒時代に突入する。」

 という叙述が、証明しています。フランコは悪人なのか、そうで無いのか、内戦当時のスペインは、国論が二分していたのではないかと、そう思えてきました。今の日本に当てはめてみれば、国民を裏切る安倍政権か、国を憎む反日の野党かと、国民の迷う姿と似ています。国民弾圧の独裁政治をする、共産党政権に比べれば、安倍氏の方がマシかと、こんなふうに、スペイン国民も二つに分かれ戦ったと、そんな気がします。

 フランコ将軍は、スペインにとって、案外まともな人物でなかったかと、思えてきました。彼を悪人に仕立てたヘミングウェイについて、興味深い意見を見つけました。岩手県立大学看護学部専任講師である、高野泰志氏の論文です。

 『アーネスト・ヘミングウェイ 伝記の空白』( FBI 調査報告と地下室のキャビネット)という、長い表題の論文です。

 「近年、情報公開法に従って公開された、FBI の調査報告書には、」「膨大な数の、ヘミングウェイに関する情報が記されている。」「これらのファイルから,我々は、FBI がいかに長期にわたって、」「ヘミングウェイを監視し,付け狙っていたかを、窺い知ることができる。」

 「表向きは、民主主義国家アメリカを代表する、」「文化的作家として捉えられてきた、ヘミングウェイではあるが、」「スペイン市民戦争に参加し,カストロの革命後も、キューバにとどまり続けた彼は、」「東西冷戦構造の中で、共産主義シンパサイザーとして、」「 FBI に、マークされてもいたのである。」

 つまり彼は、共産主義勢力のスパイではなかったかと、あまりに著名な人物なので、結論をぼかしていますが、言外に臭わせています。そうであれば、ヘミングウェイが、フランコ将軍を悪人として描く理由が、うなづけます。その後国際社会が、フランコ将軍をどのように扱ったのか調べてみますと、予測も的外れでありません。

 「大戦後に成立した国際連合は、1946 ( 昭和21 ) 年12月の国連総会で、」「ファシズムの影響下にあるスペインを、国連から排除する決議を採択した。」

 「しかし、戦後の東西冷戦の激化により、」「イギリスやアメリカをはじめとする、西側諸国は、」「反共主義という政治的共通点と、地中海の入り口という、」「地政学的・戦略的に重要な位置にあって、イギリス領ジブラルタルの地位を、」「尊重しているという理由で、スペインとの関係修復を模索し始めた。」

 ヒトラーが亡くなり、気に入らない日本の政治家・軍人を処刑したので、後は彼らの国益が優先します。フランコ将軍は、欧米諸国に認知され、悪人のレッテルを剥がされました。

 何度でも、くどいほど言いますが、息子たちは、国際社会での大国の横暴について、肝に命じなさい。「日本だけが悪かった」「日本だけが間違った戦争をした」と、こんな話を本気にしてはいけません。本気の振りをし、日本をダメにしている反日・左翼にも、騙されてはいけません。国を愛することを知らない彼らこそが、「悪人」なのです。

 ここまで来れば、先が見えてきました。残る2項目を、次回で報告します。

  4. 朝日新聞と本書の関係 (   朝日新聞の歴史・雑学  )

  5. ガウディの生涯

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2 コメント

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ちょっとだけ 予習を・・ (HAKASE(jnkt32))
2020-05-25 21:53:19
今晩は。20世紀スペインの建築家ガウディと、同氏設計の
サグラダファミリア大聖堂の事共は、恥ずかしながら拙者は
殆ど存じませんでしたので、今まで少しだけネット資料で
予習をして参りました。

当然まだ学習量は不足ですが、掴めた所を記して参りたく
思います。

細かい経緯はお伺いしませんが、貴方がご夫妻でこの
世界遺産にも指定された「未完の大聖堂」をご覧にな
れたのは、拙者も良かったと思います。拙者にしましても それは欧州を旅してみたい想いはありますが、や
はり名建築は その価値の理解できる方が目にするのが
一番と心得ます。

戦前の昭和 10年代、フランコ元将軍の起こした政変の
影響でサ大聖堂の資料の多くが失われ、建設の可否
を左右する程の状況だった事、そのフランコ元将軍の
軌跡も、我々が聞く程の悪人ではなかったらしい事が
見えて来た感じがする所です。

我々が受けた戦後教育というものは、振り返れば貴方
ご指弾の様に、正確さに欠けるものだったといえると
拙者も思う所です。フランコ元将軍の軌跡が独裁なら、
旧ソ連のスターリン元書記長のそれは、更に悪辣の度合
が深甚なもので、我々はその辺りの事共を、まともに
学校教育で教わった記憶がありません。

それと言いますのも、我々の餓鬼時分は左派野党や
日教組の影響が最も強かった時代でして、ナチスの
ヒトラー元総統やファッショのムソリーニ元党首、それに
我国の東條元総理ら旧軍関係者は悪者視されるも、
スターリン元書記長や毛元中国大陸主席らは些かも
批判されませんで、バランスを欠いたおかしな教育を
されていたのだと 今更の様に感じる所です。先程も
申しました様に、建築史には疎い拙者故、余り深入り
してもいけません。貴連載も途上につき、今回はこれ
以上は控えます。
日本の教育 (onecat01)
2020-05-25 22:56:09
 HAKASEさん。

 学習不足と言われるなら、私も同じです。ここで私が、息子たちに伝えたかったのは、

 「戦後の日本では、バランスを欠いたおかしな教育をされていたのだ。」

 貴方のご指摘のことです。韓国の教育、中国の教育など、私たちは反日・捏造の、偏見教育を笑いますが、程度の差はあれ、日本の教育も似たようなものであると、それが言いたかったのです。

 私は、貴方のように、私のブログを素直に呼んでくれる方に、感謝したくなります。これからも、よろしくお願いいたします。

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