『教師』の第二回目になります。教師と、簡単に言っていますが、「大学教授」と「教師」は、同じ先生ですが、なぜ呼び方が違うのか。区別するのは間違いで、どちらも同じ先生でないのかと、そんな疑問が湧いてきました。
出版社や編集者を調べるのなら、いっそのこと、初歩的な疑問から片付けたくなります。不可解な本のせいか、思ってもいない疑問が生じますが、何事も勉強ですから、ありがたいことです。
ネットで調べますと、「教授」と「教師の」違いが、ちゃんとありました。別にあるのかもしれませんが、手っ取り早いので、最初に見つけた説明を紹介します。
1. 幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校で教える先生は、それぞれの校種ごとの教諭の免許状を持っている。
2. 教員免許を持っていなければ、先生になることはできない。
3. なぜなら先生は、生徒たちが正しい知識を身につけ、心と体が成長していけるように教育していくことが、仕事であり、役割だから。
4. 大学には授業はあるが、「教師」はいない。
5. 大学は教育の場ではなく「研究機関」であり、学生も教授も、自分が興味を持ったことについて、研究を行う場所である。
6. 指導を行う人は、教師ではなく「教授」と呼ばれる。
7. 教授は授業は行っても、教えることが本職ではなく、あくまでも目的は研究。
8. 教育者ではないので、教員免許のような、教育のためのライセンスは不要。
9. 学生たちの研究の参考になるよう、自分の研究を説明したり、研究のやり方や発表方法を教えたりするのが主な仕事。「教えるプロ」ではないため、優秀なのに、授業を聞いても内容がさっぱり理解できない教授も、たまにいる。
9番目の説明には、笑ってしまいますが、学生時代を思い出すと、そんな教授もいたような気がします。大学教授に教員免許が不要だったとは、目から鱗の話です。誰でも簡単になれると言うことでなく、学問の世界で認められる研究者ですから、教員免許よりハードルが高いのだと思います。
一番分かるのは、やはり数字での比較です。日本の「教師の人数」と「教授の人数」を、文部科学省のデータで調べてみました。
《 平成21年 教授の人数 18万人 》
内訳 ( 教授 7万人 准教授 4万人 講師 2万人 助教授 4万人 助手 1万人 )
《 平成17年 教師の人数 109万人 》
内訳 ( 幼稚園 11万人 小学 42万人 中学 25万人 高校 25万人 その他校 6万人 )
調査年は違いますが、傾向を掴むだけですから、私にはこれで十分です。そうなりますと今度は、この数字を使い、編者の森口氏に異論が述べたくなります。息子たちと、「ねこ庭」を訪問された方々は、この本の宣伝文句 ( キャッチフレーズ ) を思い出してください。
「今学校で、何が起こっているか ?」「87人の教師たちが語る、ニッポンの学校・教育・子供」
「北海道から沖縄まで、最前線に立つ教師は、何を考え、何をしているのか ?」
「日本の学校、今の子供達の姿が見えてくる。」
分厚い本に、87人の教師の言葉を集めたと得意になっていますが、109万人の中の87名ではありませんか。北海道から沖縄まで、満遍なくインタビューしても、左翼系の人間や、極端な少数意見を取り上げていたら、それで日本の教師像が掴めるのでしょうか。
例えば、前回取り上げた、性教育をする原田瑠美子氏は、教師の一般像なのでしょうか。性教育の体験談で著作を出し、有名になり、性教育団体の幹部をしているのですから、氏は既に一般の教師というより、二足のわらじを履いた活動家です。教室での生徒の会話などを利用し、世間で名を売った人物が、氏の前に何人かいます。無着成恭氏もその一人でした。
またインタビューを受けた教師の中に、平成11年出版の『学校崩壊』の著者、 川上亮一氏の名前を発見しました。氏は反日左翼と言うより、教師の立場に立ち、マスコミや子供の親たちを厳しく批判する人物でした。教師を批判する評論家や学者にも、反論していました。
著作が話題作となって、テレビのワイドショーに出演するようになり、平成12年には、「教育改革国民会議」の委員も務めています。当時の小渕総理の私的諮問機関で、荒れる学校教育を改革するため、有識者を集めたものですが、次の森内閣まで、積極的に開催されたと言われています。
氏はその後平成18年には、日本教育大学院大学の教授となり、平成24年には、埼玉県鶴ヶ丘市の教育委員会・教育長に就任しています。現場一筋の高校教師として終わったのでなく、多面的な活動をしているところが、性教育の原田氏と似ています。
こういう野心家たちは、「自己実現」が生きる目的で、それ以外のものは、目的のためのツールでしかない、という面が多々あります。売れる本にふさわしい教師が集められていると、私が思うのは偏見なのでしょうか。
編集者と出版社について調べる予定が、すっかり狂ってしまいました。次回こそ、日本の教育より、売れる本を作ろうとする彼らの意図を、明らかにできればと思います。予定変更に我慢していただける、寛容の方だけ、「ねこ庭」へお越しください。