ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『約束の日 ( 安倍晋三試論 )』

2019-03-17 16:21:05 | 徒然の記

 小川栄太郎氏著『約束の日 ( 安倍晋三試論  )』( 平成24年刊 株・幻冬舎 )を、読了。

 氏は保守論客の一人で、安倍総理の強い支持者と聞いています。どのような内容かと期待を抱き、ページをめくりましたが、失望と幻滅と、最後は軽蔑で終わりました。

 ひいきの引き倒し、という言葉がありますが、まさにその通りで、この調子で褒められたら、総理の支持率が下がるのでないかと心配が先に立ちました。

 つい先日、チャンネル桜の動画、「日本の自死」を見て、保守論客のレベル低下を、嘆息したばかりですが、氏の著作も、私の嘆きを深めました。215ページある、立派な単行本で、表紙を飾っているのは安倍総理の横顔です。

 本には、崩壊した第一次安倍内閣が、朝日新聞を始めとするマスコミにより、いかに叩かれたかが語られています。第二次安倍内閣の成立が、平成24年の12月で、その直前の8月に、この書が出版されていますから、意地悪く考えれば、返り咲く安倍氏への追従本であるという気もいたします。

 首相になった氏が、第一次安倍内閣で、「戦後レジームからの脱却」をスローガンに、国民の期待を担い、華々しく出発しました。しかしこのスローガンが、マスコミと官僚に総スカンを食らい、彼らを敵に回す結果を招きました。朝日新聞の論説主幹だった若宮啓文氏が、「安倍の葬儀は、うちが出す。」と語り、「それが、朝日新聞の社是だ」と言い切ったのはこの時でした。

 利敵行為者としか思えない若宮氏は、新聞を駆使し、傍系誌のアエラを使い、執拗な安倍氏への個人攻撃を続けました。韓国の肩を持ち、中国に味方し、安倍外交を散々批判した氏のことを、私は何度か「ねこ庭」で取り上げた記憶があります。

 日本に敵対する韓国と中国を偏愛する若宮氏が、定年となり、朝日を退社した時の喜びの気持ちを、ブログにしたこともあります。彼は定年後、韓国の大学に教授として招かれ、最後は中国で病を得て生涯を終えました。朝日新聞社が、どんな腐れ縁を、韓国や中国と結んでいるのか知りませんが、日本人の魂を失った、反日・左翼マスコミ人にふさわしい氏の奇妙な最後でした。

  亡くなった人物は、なるべく批判しないようにしていますが、若宮氏は例外です。安倍氏だけでく、私のように、日本を大切にする庶民を、散々なぶりものにしましたので、敢えて小川氏の暴露文を紹介いたします。

 「平成20年8月、当時論説主幹だった若宮氏が中国出張に際し、女性秘書を個人的に同行させ、」「しかも会社の経費で、ビジネスクラスに乗せ、高級ホテルに宿泊しました。」「後日、社の内部監査室の調査で、不正が発覚し、全額を会社に返済しました。」

 「更に問題なのは、不正経費で出張した理由である。」「その出張は、中国人民外交会が主催する、若宮の著書の、出版記念パーティーに出席するためだったが、」「その学会は、事実上、中国外務省の別働部隊だという。」

 「中国に言論の自由はなく、政府の諜報活動は極めて活発だ。」「若宮は、露骨な親中・親韓の論陣を張ることで有名な人物である。」「良く知られているのは、竹島を韓国に譲れという、平成17年のエッセーだろう。」

 きっと若宮氏は、自身の出版記念パーティーで、中国外務省から、多額のお祝い金を受け取っているはずです。小川氏の暴露が続きます。

 「その後若宮は、朝日新聞の主筆という、頂点に上り詰めています。」「その人物が、言論統制と、諜報活動の国、そして反日策謀の中心である、中国政府に記念パーティーを開いてもらい、のこのこと出かけたのである。」「日本を代表する新聞の主筆の不祥事として、これに勝るものは考えにくい。」

 知らないことを教えてくれる著者には、立場の左右を問わず、感謝をしていますが、それでも私は、氏に感謝する気持ちになれませんでした。保守論客といわれる氏に、もっと高い見識を期待していたからです。有意義な情報でも、この程度の暴露なら、週刊誌でも書きます。

  1. 教育基本法の改正 

    2. 公務員制度改革

    3. アジアゲートウェイ構想

  4. 農林水産業の戦略産業化

  5. 憲法改正

 安倍氏が第一次内閣で手をつけた政策は、どれも戦後レジームからの脱却の道でした。中曽根元総理に「これは安倍革命だ」と言わせ、「まさに本格政権だ」と驚かせもしました。しかし教育基本法の改正を除けば、すべては志半ばで終わり、若宮氏が率いる朝日新聞を先頭にしたマスコミの総攻撃と、同調する官僚の叛旗のため、病を持つ安倍氏はついに辞任いたしました。

 こうした経緯については私も知っており、教えられる事実よりも、切れ目のない安倍氏賛辞の軽薄さに閉口致しました。

  「松陰と三島・・、二人は日本を誰よりも激しく危惧し、日本の明日が、本来の美しい健やかさに戻ることを誰よりも、激しく希望した。」「死の瞬間まで、それぞれの、果たし得ていない約束への感覚が彼らを突き動かし続けた。」

 「彼らの魂の重量は、同時代の誰よりも豊富で、彼らの生命力は、溢れるように尽きなかった。彼らは本質的に詩人であり、非政治的人間だったのである。」

 吉田松陰と三島由紀夫に関する氏の評価ですが、饒舌過ぎます。三島氏は確かに、詩人であり、非政治的人間だったかもしれませんが、松陰は現実主義者でした。二人について、違う意見を持っていますが、それは言わないで先を続けます。

 「安倍は政治家である。政治家は、絶対に詩人であってはならない。」「松陰や三島を気取ることは許されない。」「むろん安倍には、そんな軽薄さは微塵もない。」

 「安倍政治の挫折は、安倍晋三個人の敗北ではない。日本国民の敗北だったのだ。」「私は、切望している。安倍晋三が、果たし得ていない約束を果たすために、今こそ、執念の炎を燃やし、政権を再度奪還してくれることを。」

 著作の最後は、このように綴られていますが、同じような言葉が繰り返され、読者である私は、退屈しました。評論家である氏こそが、言葉に酔う詩人であってはならず、冷静な意見を言うべきだろうにと苦々しい思いでした。

 意に反して、長いブログとなりましたが、本当は、次の二、三行で済ませたい書評でした。

 「中身のない駄作を世に出すとは、日本の保守論客も、すっかりレベルが落ちました。」「もしこれが安倍氏へのエールだとすれば、諺どおり、醜女 ( しこめ ) の深情け、と言うしかありません。」

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6 コメント

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「意地悪」ではない率直 (HAKASE(jnkt32))
2019-03-17 21:47:01
先日の拙記事へのご見解を有難うございます。
実は 小川榮太郎さんの「約束の日(安部晋三試論)」
は拙者も一読した事がありまして、その時は一定の質
を備えた文献だろうと思っておりました。

今回の貴記事を拝読し、一面では「そうだったのか!」
の想いを抱き始めている所です。TV等でお馴染みの 
池上 彰 さんの口癖はどうかお許しを。

小川さんの文面はまぁ読み易く、読者の共感を得られ
易い所もあるのかなというのが拙感触でして、特に故
、若宮啓文・朝日新聞主筆の「安部の葬儀は、ウチが
出す」の一言は、今も激しい憤りを禁じ得ないものがありまして。

同氏の不良な所業複数の指摘が目立つ内容で、小川
さんにもそれなりの、不足の所や踏み込みの甘さある
事を 貴方程鋭く意識できていなかったのかも知れません。

事実なら、拙方の理解把握が不十分だったという事と
、率直な貴見解は、決して「意地悪」レベルではないな
・・との想いもする所です。やはり、他の方の感想や書
評も拝読すべきという事で、又一つ勉強をさせて頂いた気がしています。
まずはお詫びを。 (onecat01)
2019-03-17 23:02:01
HAKASEさん。

 真面目な読者である貴方を、困らせたことを、お詫びいたします。

 氏の文章が分かりやすいというのは、事実です。
素直に読めば、貴方のように、一定の評価があるのだと思います。

 若宮啓文氏の、不正と、背信につきましては、多くの国民に、朝日新聞の歪んだ姿を伝えました。その功績の大きさには、頭を下げています。。

 NHKの朝ドラの、演技過剰が気にならず、素直に楽しむ人がいます。要するに、読書は、反日左翼の悪書でない限り、読む人の好みですから、いろいろな受け止め方があります。

 活字になった意見は、たいそうに見えますが、いつもの通り私は、プログに向かう時、「惑いつつ、ためらいつつ。」文章を綴っております。世に五万んといる、年金暮らしの老人の中の、一つの意見だと、読み流してください。

 コメントを、有難うございます。感謝いたします。
保守擁護 (憂国の士)
2019-03-21 10:58:24
場違いのコメントになりますか御許し願います。
現在の日本は、偏向マスコミが執拗に保守層を責め攻撃する、そのため保守層が住み難い国になってしまいました。

言論の自由は反日左翼にこそ与えられており国を愛する国民はもの言えぬ不自由に絡め取られています。

左翼論客が新聞、テレビ等言論界を席巻しています、その僅かな隙間で参院議員の青山氏や小川氏等が奮闘しています、

万人に納得のいく高尚な文章を求めるのは酷というものです、各人の日頃の姿勢が皇室を尊び愛国の思いを失わないなら寛容であって良いと考えます。

反日国家に籠絡された売国奴の蔓延、日本のマスコミに正義が見られなくなった昨今だからこそ、私は小川氏に注目しています。

その意味で、小川栄太郎氏に私は期待する人間です、左翼マスコミに迎合する論客が多い中で保守基盤を死守する小川氏の活躍を私は応援しています。

朝日新聞の若宮氏、日本を貶め続けた人物でした、最後に彼の好きな国で亡くなったことは、運命の悪戯、左翼、右翼にかかわらず何たるかを知らしめたのではないでしょうか。

心ならずも人物評は別れましたが、国を思う愛国の精神は同じです、ご容赦ください、失礼を承知で私の見解を述べさせて頂きました。
同意いたします (onecat01)
2019-03-21 18:36:30
憂国の士殿

 お久しぶりです。
「万人に納得のいく、高尚な文章を求めるのは、酷というものです。各人の日頃の姿勢が、皇室を尊び愛国の思いを失わないなら、寛容であって良いと考えます。」

 貴方のご意見に同意いたします。それぞれの人が、それぞれの考えで、本を読むということですね。

 コメントを有難うございます。
日本の「劣化」 (成田あいる)
2019-03-21 18:55:16
お疲れ様です。
『約束の日 安倍晋三試論』は読んだことありませんが、amazonレビューでは「★5つ」が圧倒的に多いです。
小川氏は著書『徹底検証『森友・加計事件』』が元で、裁判沙汰になっています。
この他にも、安倍総理や政治、朝日などに関する著書を多数出しています。
氏は「正論新風賞」を受賞したことから、朝日の主張には相合わないこと明らかです。
いずれの書籍も、amazonでは「★5つ」に限りなく近いことから、読者受けはそれなりに良いのでしょう。

それはさて置き若宮氏は、「女性秘書を個人的に同行」「経費で、ビジネスクラス」「高級ホテルに宿泊」と、まるでどこかの政治家か大臣、首長のようなことをやっていた訳です。
しかも「不正が発覚し」、「全額」を「返済」と、これまたどこかの政治家か大臣、首長のような「オチ」まであった訳です。
「若宮の著書の、出版記念パーティー」のために「不正経費で出張した」のですから、「公私混同」もいいとこです。
その記念パーティーが「中国人民外交会」の「主催」、「定年後、韓国の大学に教授として招かれ」、いずれも直々のオファーなのでしょう。
朝日を経て「韓国の大学に教授」も、まるであの植村隆氏のような「ルート」です。

以下はこれまでのエントリとも関わることですが、「保守論客」は、誰だって言えるようなことしか言えなくなってしまったのでしょうか。
総理はじめ政治家諸氏は、中国や韓国に対してシッポを振ることしかできないのでしょうか。
その政治家諸氏も、天皇制の維持に対して何も思わないのでしょうか。
日本のあらゆる面での「劣化」を感じずにはいられない一面です。
劣化 (onecat01)
2019-03-21 20:19:08
 成田あいるさん

 日本の独立を回復するには、

  1. 憲法改正
  2. 天皇制の男系維持

 この二つに尽くされています。これが言えない保守政治家諸氏は、「劣化」という言葉でしか語れません。私は自分も含め、「劣化」という言葉で、無念さをかみしめます。

 コメントに、感謝いたします

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