ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

大本営 - 5 ( 陸主海従の議論 )

2019-05-20 16:34:22 | 徒然の記
 「大本営」の第5回目です。前書きの部分だけで、4回のブログを書きました。本音を言いますと、書評はこれで十分なのです。
 
 あとは、統帥(軍)と国務(政府)の対立、陸軍と海軍の対立に関し、具体例が述べられているだけです。これに合わせ、日清、日露、大東亜戦争から、敗戦までが語られています。「まえがき」で提起した重要事を、具体的な叙述で裏づけている・・・と、こういう構成です。
 
 私自身はこれで十分なのですが、息子たちのため、陸軍と海軍の確執例を、二つだけ紹介することにします。心配が杞憂であるかどうか、判断する材料になるのではと思うからです。
 
 〈 1.  明治25年  有栖川宮参謀総長と仁礼景範海相の対立 〉
 
   仁礼海相・・・
 「海軍大臣隷下の海軍参謀部を廃し、」「海軍省(政府)から独立した、」「海軍参謀本部を設置する。」「海軍軍備の拡充整備に伴い、」「軍令事項が、ますます複雑となってきた。」「海軍軍令機関を独立の地位に置き、」「職域を増大し、軍政(政府)とよく調整し、」「海軍軍務の基礎を固めることが、急務である。」
 
  有栖川宮参謀総長・・・
 「今もし、海軍参謀本部長と称する者を置き、」「(陸軍)参謀総長と併立させるなら、」「海陸軍作戦の統一を損なう場合が起こるのは、明らかである。」「特に戦時の大本営において、二人の幕僚長を置く時は、」「その恐れが大きい。」「わが国防の必要上から見れば、」「陸主海従とするのは明らかである。」「戦時大本営の幕僚長は、」「陸軍の参謀総長であらねばならぬ。」
 
 〈 2. 明治32年  山本権兵衛海相と桂太郎陸相の対立 〉
 
  山本海相・・・
 「大本営は、陸軍主導でなく、」「主席参謀長を、陸海軍以外から求めるという提案である。」「(陸軍)参謀総長と海軍軍令部長の、国防に関する職責に軽重はない。」「戦時に際し、海軍軍令部長の職務を、」「参謀総長の所掌に併合するのは、秩序を乱すものであるから、」「その人選は、天皇の聖断による。」
 
  桂太郎陸相・・・
 「海相は、第三者をと言うが、陸海軍の知識が共にある人材は、」「容易に求められない。」「(陸軍)参謀総長と海軍軍令部長以外に、平時から、」「国防用兵の研究に尽力しているものは、いない。」「臨時に、局外から任命された幕僚長が、」「平時から準備された計画を、是認しない時は、」「極めて危険な状態を生ずる。」
 
 結論の出ないまま、日清戦争を戦い、日露戦争を戦い、大東亜戦争へ突入します。陸海軍の大臣から上奏された明治天皇も、聖断を下されなかったほどですから、近衛首相が解決できなかったのも、うなづけます。結局近衛公は、陸軍も海軍も抑えられず、進退極まって政権を投げ出しました。
 
 朝鮮戦争が勃発し、マッカーサーが警察予備隊を作らせたのが、自衛隊の始まりですが、集められたのは旧軍人です。自衛隊となって以来、マスコミの報道がありませんが、陸・海軍の対立は、果たしてなくなっているのでしょうか。
 
 全てを言いつくしましたので、書評は本日で終わりにしますが、最後に近衛公の遺書を紹介しようと思います。富田氏が著書の中で全文を掲載していましたが、長いので割愛し、心に響いた箇所だけを転記いたします。
 
 巣鴨刑務所へ出頭する前夜、公が次男の通隆氏に渡したメモです。家人が寝静まった深夜、というより、早朝に青酸カリを服用し、公は自決します。いわば、このメモが遺言でした。
 
 「戦争に伴う昂奮と、激情と、」「勝てる者の行き過ぎた増長と、」「敗れた者の過度の卑屈と、」「故意の中傷と、誤解に基づく流言飛語と、」「これら一切の世論なるものも、いつかは冷静を取り戻し、正常に復する時も来よう。」
 
 「その時初めて、神の法廷において、正義の判決が下されよう。」
 
 正義にはいろいろあり、時の経過で変化します。反日左翼にも彼らの「正義」があり、過激派暴力集団も彼らの「正義」を持っています。正義という言葉は不用意に使ってはなりません。戦後73年が経過した現在、やっと八百万の神々の法廷で、判決が再検討されようとしています。公が待ち望んだ時が今でないかと、そう思います。
 
 息子たちに言います。先に紹介した、東條元首相の処刑前の証言と、自決前の近衛公の遺言を読み返してください。二人は既にこの世になく、ご先祖様と並んで私たちを見守っています。戦勝国踏みにじられた日本の歴史を、取り戻す勇気を持つことが、今を生きる私たち国民の責務と、そう思うのは私だけでしょうか。
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4 コメント

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Unknown (すず)
2019-05-21 17:27:43
個人的に近代史に関わる著書を読んで勉強中ではありますが…

『戦勝国が踏みにじった日本の歴史を、取り戻す勇気を持つことが、今を生きる私たちの責務』

同感です。
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嬉しいコメント (onecat01)
2019-05-21 18:55:23
 すずさん。

 ようこそ、ねこ庭へ。

 嬉しいコメントを頂きました。これからも、よろしくお願いいたします。
Unknown (あやか)
2019-05-22 07:02:50
ブログの今回の大本営のテ-マを通読させていただきました。
ねこにわ様も、ふれておられますように、、、、、
大日本帝国の軍隊の最大の欠点・問題点は、、、
 1、軍隊の統帥権の独立性が乱用されたこと、、、
 2、陸軍と海軍が対立していたこと、、、
  (ついでに、言いますと、軍隊と警察も対立していました)

、、、、以上の諸点が、戦前・戦時中の日本の最大の『過ち』なんですね。
この問題は、多くのかたが指摘されています。

今後、憲法を改正して正式の再軍備をする場合は、以上のことを
考えなければならないと思います。

敗戦後のもっとも喜ばしい出来事は、昭和25年に、自衛隊が警察予備隊
として発足したことです。
当時の青年が隊員募集に応じたわけですが、『警察予備隊』という名称を
聞いて、最初はビルの夜警さんみたいな仕事だと思っていたらしいです。
ところが、入隊の説明会を聞いて、事実上の軍隊だということがわかるに
およんで、応募した青年たちは、激しい感激と使命感を感じたそうです。
『戦争に負けた日本が、また軍隊を持つことができる!!俺たちは、また、
お国のためにご奉公ができる!!!』、、、、みな、そう思ったに違いありません。

私は、大東亜戦争後の日本で、最も偉大な業績を立ててこられたのは、
【自衛隊】だと、思います。!、、断言します。!!
吉田茂 (onecat01)
2019-05-22 07:31:21
あやかさん。

 早朝の「ねこ庭」へ、ようこそ。偶然目が覚めました。警察予備隊を作った時の、吉田総理の言葉を紹介いたします。

 「吉田は講堂に、これらのスタッフを集め、」「新聞記者の入室を拒んだ後、こう訓示した。」「私は、表向き、警察予備隊は軍隊でないと言い続けている。」「だがはっきり言って、これは軍隊である。」「諸君も軍隊という認識をもって、しっかりと、国土を防衛するつもりで努力してほしい。」

 吉田総理も、偉大な業績を立てた人物です。話しかけている相手は、内務官僚です。

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