近況:子供が4人いると仕方がないことなので PTAの本部役員になりました。
 

   ストレスからか 謎楽器が増殖しました。毎夜毎日怪音を響かせております。
   趣味と実益を兼ねて 位相差顕微鏡買いました。
   子供に口腔内細菌見せて歯ブラシのモチベーションを高めるアイテムですが
   桿菌がクルクルしている姿は癒されます。
   ちなみに 細菌観察は無料ですのでいつでもご来院ください。


さて
https://twitter.com/Qarmyjapan11/status/1239112837131198464
私の無知かもしれませんが これはデマかと。
デマというか 素人のミスリード?
まぁ 私の無知や間違いの場合はマイミクの同業者のドクターが突っ込んでくれるでしょう。(フォローよろしく)


まず
 歯は硬組織で細胞じゃない。
この時点で 読む気を失うんですが、エナメル質、象牙質、セメント質はリン酸カルシウムの結晶であって細胞ではないです。


「チデブルシブ」が歯を再生できるとして
虫歯になっている部分の細菌や感染域、いわゆる軟化象牙質を除去しない事には
虫歯の原因菌ごと塗りこめてしまう事になるので『歯を削らなくて良くなる』というのは
妄想。

研磨や噛み合わせの調整、気密保持など(下の方に書きました)必要なので
自然に再生なんてことはない。

この時点で書き込み主の主張がおかしいのは明白なので 以下公衆衛生的な布教と突っ込み。

歯(骨)の再生ができるなら それこそ癌や事故で体の一部を失った人への朗報だろ。
歯の表面の再石灰化・歯根膜の再生等はすでに保険治療として行われています。
てか、歯の再石灰化は市販の歯磨きでも出来るらしい(TVCMで言ってる)が、虫歯が治る訳ではない。正しくは進行が止まる

歯髄は神経細胞ですが、歯の神経は脆弱で歯神経の死は不可逆的変化。しかも歯の神経は痛みしか感じない。ゆえに『痛くなったら終わり』と言われる。神経細胞の再生修復が出来るなら それは脳神経科や心筋梗塞、神経疾患患者に転用されるべき事案。

レーザー治療なら歯を削らないで済むというのは
レーザーは歯質にある水分子を蒸発させて歯を風化させボロボロにさせているので レーザー治療なら歯を削らないというのは『朝ご飯は食べてないけど、食パンは食べた』的な表現。無痛治療らしいが・・・術者の問題なのか・・・無痛ではなかった。(経験済み)

歯髄の一部を再石灰化させて痛みを鈍化させる(虫歯自体が治るわけではない)治療は
すでに確立しており保険適応です。ただし歯神経が石灰化して象牙質に置き換わるには3~4週間かかる。この場合、歯の神経の一部が歯に置き換わるだけであって虫歯の穴がふさがる訳ではないので要注意
歯髄が健康なら歯髄の一部が石灰化して痛みを鈍化させる:2次象牙質

薬液にて虫歯(軟化象牙質)の再石灰化はフッ素によって実証済み
フッ化ジアミン銀(商品名:サホライド塗布は保険適応)小児歯科とかで進行止めと言われている。超苦い:栗の渋皮を煮詰めたような味。

細菌による石灰化の現実。
唾液中のカルシウム等を用いて口腔内細菌が石灰化を行う場合がある。
・・・歯石の事ですが。


「チデブルシブ」の安全性等々
軟化象牙質を削って密閉すればいいのだろうが それでも以下の問題点があります。
 まぁ 私ならスポンジに染ませた化合物を密閉するぐらいなら そのまま樹脂か金属詰めるけどね。

「チデブルシブ」が歯を作れるとして。
当たり前の話だが治療期間が不明確。
せっかく密閉したのに どれだけ歯が出来たかいちいち気密を破って見るの?
それとも現在の歯科用レジン並みの速さで歯を作れるの?

硬度・密度不足。
歯(エナメル質)はハイドロキシアパタイトと言って人体の中でも最硬度なんだが。
おそらく「チデブルシグ」の作るリン酸カルシウムにそれだけの硬度や密度は期待できない。結局のところ表層を何かで覆わねばならなくなる。

同封したスポンジ。
「チデブルシグ」に歯を作らせるなら同封したスポンジをいつか除去しないと
新しくできた歯に塗りこめてしまう事になる。

研磨・調整は必要。
気密を保てて、硬度・密度が達成できて、治療状態も確認できたとして人工生成物なので表層に研磨が必要であり、噛み合わせの調整は必要になってくる。
結局削らなければならない。(この場合削ってるのは新生した歯)

ちゅうことで
ツイッターにあるような 自然に治る何て事はない。

                                    と思う

             ~~~~~~~~ 追記 ~~~~~~~~~

骨折で骨は治るのに 歯は治らないのは 歯が細胞ではないからか?
と 問われましたので。。。

骨もカルシウムの結晶であり 細胞ではないです。
骨折は治るのは 骨の周りに骨膜・血管などの組織があるためです。
骨が外界に露出してしまった場合自然治癒はないはず(うろ覚え)です。
骨折が起こると周囲の組織に炎症の徴候である発赤・腫脹・疼痛が起こります。
この時 骨折部の周囲には血液とともに骨芽細胞(骨の元になる)・造骨細胞(骨を造る)・破骨細胞(余分な骨を回収する)細胞が集まって来て 骨を元に戻します。
(血が集まるので 発赤・発熱・腫脹が起こると思っていい)

一方歯は そもそもが外界に露出しているので歯の周りに血管が無く
骨芽細胞・造骨細胞・破骨細胞が集まりません。 
逆に歯を病的に溶かそうとする虫歯菌などが溜まって歯を溶かします。
歯の表層は耐酸性がありますが内部には耐酸性が無いので虫歯の進行が速いのです。

話が それましたが
骨折と虫歯の治癒の違いでした。