それはまた別のお話

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「VIOLET」 9/5 マチネ

2020-09-06 | 舞台
ミュージカル「VIOLET」帝国劇場
9月5日(土)マチネ 東京芸術劇場プレイハウス 1階F列上手

【演出】藤田俊太郎
【出演】優河 / 成河 / 吉原光夫 / spi / 横田龍儀 / 岡本悠紀 / エリアンナ / 谷口ゆうな / モリス・ソフィア / 畠中洋 / 島田歌穂

観客全員に配布された簡易パンフレットには、「奇跡の再出発」という文字が大きく記されていました。
もともと4月に上演予定だったときは観劇を迷っていたんですが、成河さんが代役で出演することになりチケットを手配。
その代役も成河さんが「ねじまき鳥」の地方公演が上演中止になったので引き受けたとか。
しかしそれも叶わなくなりガッカリ三昧だったところ、9月に3日間だけ上演するって聞いたときは目が血走りましたw
これこそ「奇跡の再出発」なのではなかろうか。

当初は観客席の椅子が舞台をぐるっと囲む形式の舞台装置だったらしいですが、それはかなわず通常の座席配置になりました。
印象的だったのは、舞台の上にある大きなドーナツ状の装置。
舞台上の盆と同じような大きさで、それは世界を見下ろす目のような存在でした。
同時に「思ったより大掛かりだな」ということ。
客席半分で3日間のみの上演、どう考えても採算度外視ですが、「何が何でも上演したる!」という気概が嫌でも伝わります。

舞台上には多くの椅子が並べられ、椅子を移動させてバスの車内に変わり、衝立を並べてダイナーのカウンターに変わり、その間に盆がぐるぐるとダイナミックに動きます。
後方のスクリーンにはライブカメラの映像が大きく映り(おもに伝道師の場面)、おお藤田さんの演出っぽい!としみじみするJBオタク…

ヴァイオレット役は優河さん。
これが初ミュージカルとは信じられないぐらい、揺るぎがなく歌声に迫力がある。
顏に傷を持つがゆえに世間に背を向け、でも世渡り上手なところもあるキャラにぴったりな様子でした。
逆にWキャストの唯月ふうかちゃんだと全く別キャラにならない?

群像劇らしくいろいろな設定の人物が登場しますが、光夫さん演じる黒人兵士フリックと、成河さん演じるエリート白人兵士モンティがメインとなってヴァイオレットと接します。
フリックは軍人としての身分は高いもののあからさまな差別に晒され、モンティは特殊部隊に志願しベトナムに送られる未来が見える。
このメイン3人の微妙な関係、見えない糸で綱引きをしているような距離感が面白かったです。
光夫さんが歌いあげるナンバーがこの作品の肝になっていたし、成河さんがベッドの上でさめざめと泣く場面もすごく印象的。
そう、思ってたより曲がバラエティに富んでいて(バスで移動する土地に因んだ曲調になってた)、もちっと難解な曲が多いのかな?と思ってたけど楽しかった。父親役spiさん歌うポーカーの曲なんか自分で歌いたいかも。

老婦人役は島田歌穂さん。品があるようであまり幸せそうではない。
歌穂さんはこの老婦人の他に2役演じていて、早替えも演じ分けも素晴らしかったです。
顔に傷があるヴァイオレットも黒人兵士であるフリックも、それとわかる明確なメイクは施されてないのだけれど、それだけに自分に近しい存在として「あの役は私かも」と思わせる効果に繋がる気がします。
成河さんの言うように、「真に自分を愛すること、他者と生きるために必要なこと」がこの作品の明確なテーマだとしたら、「自分を傷つけていると思っていた周囲が、自分自身を認め受け入れることで周囲を愛することになる」という結末が、今のワタシにズシンと迫ってきました。

3日間のみの上演ということでチケットはプラチナ化してしまったのですが、この日2日目も少しこなれていない印象は受けました。
たぶん上演する側も百も承知な状況だと思いますが、それでも上演していただけたことに感謝するとともに、そろそろ「上演してくれただけでありがたい」という感想が小さくなっていくとよいな…と思う今日この頃。
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