昨年の夏、終わりの頃だった。
私は館山に行った。
とある小説を書こうと思っていて、その舞台に館山の海を使いたかったのだ。
駅前から電動自転車を借りて、館山の東京湾に突き出している部分の付け根。わかりにくい表現で恐縮だが、チーバくんの足の甲に当たると思っていい。そこに沖ノ島というところがあって、そこまでその自転車で走った。
岩場には無数のヤドカリがいて、コトコトと音をさせて歩いていた。
子どもの頃から、砂浜よりも潮だまりの方が好きだった。
砂浜に行っても泳ぐだけだから、すぐに飽きてしまう。
岩場の潮だまりには無数の生き物がいて、見ているだけで飽きなかった。
おそらく違法であろうが、父親が小さなウニを捕ってくれて、割って中身を食べさせてくれた。
そんな記憶があるからか、沖ノ島での時間は、精神を清浄にしてくれた。
海の近くに行くと、ただの道の駅で食べる魚でも恐ろしくおいしいことに驚く。
カンカン照りの太陽は真白く、日差しは痛かった。
鏡ヶ浦の湾は、ギラギラと輝いていて、ちょっとしか見ていられなかった。
景色を一望できる館山城にも上った。
そこにいる管理人の方といっとき話をした。
小説はまだ未完で、もう一度立山の景色を見て書こうと決めていたのだ。
ボヤボヤしているうちに台風15号がやってきてしまった。
その惨禍は報道されているとおりだ。
あの景色はきっと生き残ってくれているだろう。
なんとなく、南国の陽気さを持った人々であるから、また立ち直ってくれるだろう。
そう、楽観的に考えたくなるじぶんがいる。
観光でお金を落とすというのも、立派な復興だ。
また遊びに行こう。