風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

コロナくん、顔を見せてよ

2020年04月10日 | 「新エッセイ集2020」

 

目に見えないもの
姿の見えないものは怖い
いま世界中のみんなが怖がっているもの
それがきみだ
コロナウイルスのコロナくん
いまやきみは
放射能よりも怖がられているよ
あの悪名高い放射能でさえ
ガイガーカウンターで探知できる
ピーピーと叫んで知らせてくれる
なのにきみは
何処にいて何処からやって来るのか
黙ってそっと近づいてきて
ノックもせずに侵入してくる
まったく失礼千万なやつだ

ごく善良な人々は
日がないくども手を洗い
がらがらぺっぺっとうがいして
ことしは花見も宴会もキャンセルし
会いたい人にも会わずにじっと
ふるえながら引きこもっているよ
こんな春をどうしてくれる
ウイルス&コロナくん
きみは足音もたてず声も発せず
いきなり熱風で襲ってくる
咳はごんごん胸は苦しい
ごちそう食べても
味も匂いも分からないなんて

嫌われ者のコロナくん
どうか顔を見せてくれないか
姿を見せてくれないか
見えないからシカトもできないし
友達にもなれない
みんなに除け者にされて淋しかったら
ハグも握手もできないけれど
優しい言葉くらいかけてやってもいい
だから勝手に濃厚接触するのは止めてくれ
2メートル位は離れていてくれ
できればマスクもしてくれないか
そうしてそれから
きれいな手を振ってバイバイしてくれ

*

*

(毎日新聞4月8日朝刊の連載漫画)

 


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