風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

あまだれ

2019年06月11日 | 「新エッセイ集2019」
雨が降ると いつも
あまだれをじっと見ていた

樋の下でふくらんで
まっすぐ地面に落ちてくる
あまだれ 1ぴき死んだ
あまだれ 2ひき死んだ
あまだれ いっぱい死んだ

小さく膨らんで息をとめる
落ちる瞬間が美しい
言葉のない合図のようだった

ばあばが死んだ
じいじも死んだ
うすぐらい土間の石うす
茶がゆに茄子の古漬け
花いちもんめ
みんな短いあいさつだけで
それきり
あまだれになった

小さなあまだれ
光ったら消える



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