~三年目での正直にて(前編)~


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年が明けて1月某日のこと。
FC刈谷で3シーズン目を迎える、水木選手、酒井選手に尋ねた。両選手で互いに話し
合っていることに地域密着、地域貢献のことがあるのだという。

「選手としての仕事は試合でいいプレーをして勝つこと。ただ、そこにばっかり力を注ぎ
 過ぎていた。余裕を持てなかった。3年目は勝つというところもちゃんとできて更に周り
 も見えて、何かいろいろ(試合以外の地域に向けた活動も)出来るんじゃないかな」

と水木選手。それは2シーズン地決(※1)を戦い、地域リーグのレベルのなかでの自分
の立ち位置・現在地が客観的に見れたこと。そして、次の11月(地決)までにという逆算が
出来、自分がどうなればいいのか、どうなれば昇格出来るのかを感じれているという確信
から来ている。そこには地域活動をしている自分のイメージすらも在る。


酒井選手は
「去年、話し合いの時にも『自信が足らなかった』って話もしたんで。もっと自信を持って。
 プレーも活動もどんどん言えたらもっと自分が変われるんじゃないかなっていうふうには
 思います。なので、3年目は自信を持つ。もっと持つ。」

二人で作戦を練っているという。『まずは行動。まずは行動を起こす』という意識で。
チームメイトたちに伝えて、どういう拡がりをみせてゆくのか。今から楽しみだ。

彼らが地域密着や地域貢献をもっとやりたいと思っている理由。その一つは、選手・
スタッフ、サポーターが一つとなり、チームが強くなり、JFL昇格を果たす礎になると
いう想いがあるから。年々言い続けて未だ成し遂げていない昇格を、今季こそ果たす。
2019年シーズン限りで引退、退団した選手たちの為にも。

「まだ出来るって思っているのに辞めれるっていうのは、僕の中には全くなくて。だから
 それがカッコイイなって思って。またそれが藤沢純也として、漢としての生き方でそう
 いう道を選んだっていうのが。そこでやめんなよとか、止めらんなかったです。まだ
 続けろよとは言えなかった。言わせて貰えなかった感じです。」
重い決断をした同級生のことを水木選手はこう語った。

「何も言わないけど遠くから見守られてる感というか。ホントに自分が苦しくなったとき
 にだけクッと来てくれる、あとは野放しにしながら。何ていうのかなぁ。いいお兄ちゃん
 っていう(笑)。厳しさありときに優しく。」

と、酒井選手。郷里に戻る藤沢選手に最後に会った際には『お前はお前らしく強くなれ』
という言葉をもらった。有難かった。『俺のこと見てくれてたんだな。』と。報告会の時の
藤沢選手の挨拶にも感極まった。登壇していた位置が一番後ろだったことが幸いした。
うつむいて思いきり涙できた。

チームの主力として活躍してきた藤本選手、長野選手の退団について水木選手は、
刈谷に残った選手たち、とりわけ試合経験の少ない選手たちへ対して覚悟を促すもの
だとも捉えていると明かしてくれた。

酒井選手はシーズン終了後、藤本選手から労いの言葉をかけられた。水木・酒井両
選手のチームワークに対する献身へのものだった。その一言をもらうまでは気づいて
なかったけれど、ちゃんと見てくれてもらっていたのだ。『やっててよかった。やって
きてよかった。続けててよかった。』と思えた瞬間だった。長野選手は、アドバイスを
多くくれる、なんでも気兼ねなく聞ける同級生だった。刈谷に来てサイドバックをメイン
にプレーするようになったことで学ぶものがすごく多かった。まだまだ学びたかった。

チームを去っていった選手たちに報いる為にも。選手スタッフサポーター一丸で昇格を
果たす。そのために今まで以上にもっともっと行動を起こすのだ。

そんな今シーズンへの意気込みをサポーターへ向けて語ってもらった。先ずは酒井選手。

「上手くSNSを使って下さい。平日練習を見に来れれば、見にきてほしいです。あと
 試合風景とかしっかり、載せれるものがあれば載せてもらって。地域貢献っていうか
 地域密着する部分があって、手伝ってもらえるのであれば一緒にちょっと来てほしい。
 それが平日になってしまうこともあるかもしれないんですけど。少しでも選手と共に、
 共に闘い、共に地域密着して、で皆んなで、皆んなでやりたいっていう想いがあるん
 で、上手くやっていきましょう。上手くSNSを使って地域密着もしっかり、試合も
 皆んなで勝ちましょう。」

酒井選手はこのあとに控えていたラジオ公開収録へ。そして・・・(この機に乗じて?)
引き続き、水木選手から見た酒井選手について伺った。それは後編で。


【脚注】
 ※1:全国地域サッカーチャンピオンズリーグのこと。その前は全国地域サッカー
    リーグ決勝大会の名称であった為、「地決」と略して称されることが多い。



 Text & Photo ;中村マサト(フリーランス)

 ※この記事は
  FC刈谷取材ご協力のもと、水木将人、酒井隆也、両選手へのインタビューを行い
  構成したものです。