小説 「西寺物語」 1話 守敏と空海の因縁の争い・西寺跡発掘調査・女装小説家 オカマのイナコ

 

 まだ官営の西寺造成工事は始まったばかりだった。西寺造成の最高責任者の造寺司は奈良仏教の東大寺の別当で岩渕寺の住職の権操(ごんそう)で西寺完成時の僧侶の配置や塔頭寺院30寺の宗派、住職の配置の別当職も兼務で西寺建立工事から奈良仏教宗派の選別まで権限のすべてを権操は桓武天皇から命じられていた。

 この西寺造成工事は完成までに工程表では約30年はかかると見積もられ西寺敷地内に岩渕寺八条別院が建てられ僧侶50名との長い共同生活が始まった。権操は桓武天皇から造寺司を命じられたことで奈良仏教六宗派の代表僧侶となっていた。そうなると自坊の岩渕寺住職、東大寺の別当、南都七大寺代表宗議員など兼務のために月の半分は奈良に帰らなけばならない。そこで権操のこの当時の一番弟子の守敏(しゅびん)を西寺建立工事の副造寺司にしたいと桓武天皇に申し入れてそれが認定されたと同時に守敏に従七位の位を授けていた。そして朝廷も認める岩渕寺八条別院の住職になった。

 八条別院は西寺境内の北門を入った西側にあり、門の北側の通りは八条大路でこの通りから北は西七条村で見渡す限りの水田が広がっていた。この西七条村の農民の多くは平城京からの移住者で平城京から長岡京への遷都の最に長岡京は仮の都だと知っていたのか、長岡京は耕す農地がないということからか、農民たちは平安京遷都宣言前からこの土地を我先にと開墾していた。

 この農民たちも平城京では村々にお寺を誘致して村民の手で寺を建てていたので寺への信仰心と土木、建設工事はお手のものだった。平城京の農民のすべては南都六宗派の末寺の檀家だったが、この平安京には奈良系の末寺の洛中への進出は朝廷はまだ認めていなかった。そこに奈良のお寺である守敏の岩渕寺八条別院が出来たために奈良系の農民や長岡京の平城京から移民してきた職人、工人、商人までもが八条別院の檀家になっていた。

 西寺の南大門の前の通りは九条大路で羅城門から東には同じ官営東寺の造成地があった。この九条大路から南も水田、田畑が見渡す限り広がって集落の名前は九条村という。この九条村の農民の半分は奈良からの移民開墾者、半分は京都南部深草や藤森からの開墾者になっていた。当時の奈良仏教からすると最澄の天台宗や空海の真言宗も新興宗教にしかならなかったが、新しい都で最澄も空海も布教活動に並々ならない力を入れていた。

 当然ながら元奈良の農民は守敏の側につくが、地元の農民は空海を支持して村は真っ二つに割れて大論争になっていた。これが守敏と空海の最初の因縁になっていた。この争いは朝廷内部でも大問題になり桓武天皇の耳にも入っている。天皇にすれば官寺でもある西寺と東寺が醜い争いをしていても国のためにはならないと名采配をしていた。それは
「西寺の守り神は松尾神社になる、東寺の守り神は稲荷神社になる。西七条村は松尾神社の管轄地であるからして守敏の寺になる。九条村は稲荷神社の管轄地にあるからして空海の寺になる」と裁かれていた。この裁きの後に九条村最初の寺が村民の手で建立されて「九常寺」と命名されて空海の弟子が住職になっていた。この当時は守敏30歳、空海22歳で共に妻子はなく独身であった。

 西寺南大門の真正面に九条村の村長でもある常吉という大農家があった。常吉は長岡京遷都と同時に長岡京には見向きもしないで平安京予定地の洛中と洛外との境目の九条大路の南側の荒れ地を長岡京朝廷の許可をもらって開墾していた。それが大当たりしてたった10年で九条村の村民をまとめ挙げると共に朝廷への年貢を集める公的役目も命じられていた。

 その常吉には「お種」という色白美人で九条小町と噂される娘がいた。そして高級貴族からも嫁にしたいという申し入れが殺到していたが、常吉はいずれ官寺の官主になると噂されていた守敏の妻にしょうと考ええていた。ところが皮肉にも空海もこのお種に一目惚れしていた、一方のお種も九常寺の落慶法要での空海の凛々しい御姿に一目惚れしていた。だからこそ二人の将来を見越して九条村の寺の名前に常吉の常を入れていたと空海は常吉に訴えていた、さらに空海は常吉に、
「そもそも九常寺の檀家総代でもあるのに関わらず、その娘を他宗派の守敏に嫁がすことは正道に反する」というのが空海の言い分であった。

 これも村を二分する大論争になり朝廷にも届いていたが、桓武天皇は、
「守敏は従七位、空海は無位になる」
だけを左大臣に告げていた。つまり、天皇は弱くなっているがまだまだ奈良仏教は力があり奈良仏教僧兵1000名と比叡山僧兵1000名との宗教戦争を避けるといる理由で守敏の顔を立てる采配と空海は理解はしたが、この屈辱は一生忘れないと思うばかりか宗教界のみならず天下を取ると強く誓っていた。

 

(この小説を書き始めたきっかけは史跡西寺跡遺跡調査発表会に参加したが、この参加者の多さにビックリ仰天して「そうだ!、西寺をテーマにした小説を書こう」と思いとりあえずこれだけ書いてみました。)

西寺跡発掘調査
世界遺産の東寺と同じ規模の西寺跡を見て来ました。コンド山の下が掘られて講堂の礎石が…その近くには五重塔の遺跡も…土の中から一千年のロマンが目の前に…。ワタシの小説でも東寺は稲荷神社、西寺は松尾神社が深く関わると書いたが、それを証明された気分になりました。画像は講堂跡、五重塔跡、コンド山の金堂の礎石

つぶやきコラム 「綺麗すぎる老婆」
またまた女装新聞に連載されました。第一回全日本オカマ全国大会で金メダル、もちろん「オールドレディ70代」の部門ですが、日本で一番の映えあるチャンピオンに選ばれました。この先10年はこの栄光の地位を守る決意です。

女装小説家・オカマのイナコ・音川伊奈利のブログ小説 「働く女性たち 駆け込み寺居酒屋ポン吉」26~28話

 

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