小説西寺物語 51話 京都仏像美術展覧会仏像搬入、最澄比叡山僧侶撲滅へ

 西寺官主の守敏僧都は「京都仏像美術大展覧会」の出品目録を見ていた。50の仏像工房から50体の出品で釈迦如来、薬師如来、阿弥陀如来、大日如来、不動明王、観音菩薩、不動明王、地蔵菩薩、普賢菩薩、文殊菩薩、弁財天、吉祥天女、金剛力士(仁王)、十二神将の仏像でそれぞれ唐国から遣唐師僧侶が日本に持ち帰った仏像を参考にしているが、仏師(彫師)の創造と感性で日本的かつ日本画のように細部まで丁寧に仕上げたと50体の仏像には仏師の心意気が書いてある。中には唐国の仏像には見られない十一面観音や千手観音のように地味な唐国の元々の観音立像をより派手に立派に見せる工夫がなされているが、これこそ日本仏像美術の原点だと守敏は思っていた。

 仏師は工房主の50名となっているが、これらは仏師一門の伊助、定春、康司、朝運(後の運慶一門)、広長の弟子の5派で48名、それに無派閥の武山(兄)、武山(弟)の2工房だが、どの一門も嵯峨天皇賞を狙い一門そのものの仏像美術の価値を高めようとするのは当然で工房一門の長である伊助、定春、康司、朝運、広長の作品を第一に考えたのか工房主の5体の仏像は繊細な彫りと高さ2メートル前後と他の45体の仏像よりは群を抜いて光輝いていた。武山兄弟の工房は兄弟で3メートルもある金剛力士(仁王)2体で一対の仏像を出品していた。

 京都仏像美術大展覧会は814年12月1日~12月15日まで開催されて各賞の発表は最終日午後3時に閉会され即日発表される予定になっていた。出品作品の搬入は11月25日~11月30日で各工房は仏師の他に弟子5~6名を連れてくるので総勢は300名にもなりこの間の宿泊施設は西寺の宿坊が開放されて3食と般若湯はすべて無料になるという大盤振る舞いだが、この経費は出品仏像の前に置かれた賽銭箱に入れられた銭が使われることになっていた。

 一方のこれらの仏像を買いに都に来る日本全国の豪族の族長ら一行は270名を予定していたが、これらも氏寺の住職や京見物をしたい家族など含めると5~6名で約1000名になるが、これらは開催期間中は分散するので東寺の宿坊(300名収容)と30の塔頭(600名収容)で十分だったが、仏像を買い付ける豪族からは宿坊一泊2食で1人50文、塔頭一泊2食で100文を徴収していた。これは元々この仏像美術展は各地の豪族が銀、金を貯め込み武器を買ったり頑丈な城を造らせないために金を使わせる作戦であるので宿泊料を取っていた。さらにこれらの豪族に金を使わせる大作戦も2重3重に企画されていた。

 11月25日の仏像搬入初日には約半数の25体が西寺に持ち込まれていた。仏像は厳重に梱包されて大八車に積まれて仏師とその弟子ら5~6名で羅城門から朱雀大路に入るが、この仏像搬入の行列を見ようと京町衆ら数千人の見物人が出来てこの仏像美術展の人気ぶりか分かる。朱雀大路を北へ一丁ほどの西寺東門通りから西寺の東門に入り、仏像が展示される講堂前にはこの展示会の実行委員長の守敏僧都、役員の最澄、空海が仏師の一行を出迎えていた。

 仏師らはこの日本を代表する大僧正の3名が揃って出迎えてくれるとは露とも知らず驚いていた。もちろんこの展示会は嵯峨天皇賞という最高の展示会だとは思ってはいたが、さらに権威が高い展示会だということを肌で感じていた。仏師らは講堂に仏像を展示する場所の抽選をしていたが、最澄が、
「武山兄弟の工房の金剛力士は左右で一体だから抽選では離れ離れになるが…この仁王は空海と私が唐国に留学してあらゆる金剛力士を見てきたが、この迫力は日本独自の美術感になる」

 そこで守敏は、金剛力士は講堂の入ったすぐの左右に置くという。ただこの金剛力士は大迫力で会場に入った観覧者が度肝を抜かれるのは間違いがない。そうなると他の仏像との中立公正の審査に影響が出るのでこの金剛力士のみ特別参考出品として審査の対象外にしたいと提案していた。
 空海は、
「しかし、武山兄弟は2体で一対の仏像の制限もなく、大きさに対しても決まりがない以上審査対象外とは納得がいかないと思うが?、それに嵯峨天皇賞の10万貫を狙って作品を出品している」
 そこで最澄が、
「それなら私と里美(愛妾)がもう1年も太秦の広隆寺でお世話になっているので広隆寺の山門に武山兄弟の金剛力士2体を寄進するために2万貫で買うということで話がまとまらないだろうか?」

 さっそく守敏は仏像配置位置の抽選を待っていた武山兄弟に少し話があるから抽選は後回しにしてほしいと願い、講堂から南にある大伽藍の金堂に案内していた。武山兄弟は一体何事かと顔を見合わしていたが、金堂には比叡山仏教の最澄、真言宗の空海が座り、守敏はこの二人を武山兄弟に紹介していた。少しでも宗教界を知っている人ならこの3人の偉大な力がわかるが、武山兄弟は仏師でありこれらの末寺の仏像を掘っていたから余計にかしこまっていた。

 空海が武山兄弟の兄に、
「武山派は元々宮大工だと聞いているが、なぜ?、この京都仏像美術展覧会に出品しようと思ったのか?」
「はい、父親は宮大工ですが、欄間の彫刻を専門にしていました。その父が寺の建物は奈良時代から比べれば立派になったが、肝心要の寺の仏像は粗製乱造で私の欄間一枚分の価値もないと嘆いていました。そこで父は私と弟に仏像の勉強を命じました。しかし、各派の仏像を批判する父を持つ私達兄弟を弟子にしてくれる仏像工房は皆無でしたが、これらの各工房が手掛けていない金剛力士なら各流派も文句はいわないだろうと金剛力士を彫り続けてきたのです」

 この話しを聞いた3人は顔を見合わせていたが、この武山兄弟の話と空海が口を酸っぱくして現在の仏像とは粗製乱造の仏像で何ら拝む価値はないという空海理論からこの展覧会の企画がされたからだ。
 そこで最澄が、
 嵯峨に太秦広隆寺というのがあるが、この寺は奈良仏教とも比叡山仏教とも一線を画した寺で聖徳太子の木造仏をご本尊にしています。この寺の山門に武山兄弟の彫った出品作品の金剛力士を安置したいが、いかがか?」
「はい、それはありがとうございます。私達は私達兄弟の金剛力士がどこかの寺を守る仁王になるだけでも大満足しています」
 こうして武山兄弟の金剛力士は広隆寺に2万貫で売られることになった。

 最澄は1年前に空海の処遇を巡って最澄の高弟10名余りと対立して広隆寺に仮の真言宗本山を移していた。その比叡山の高弟らに反発した弟子の300名も広隆寺に駆けつけ比叡山に残っている僧侶は約200名で最澄はこれらの高弟らと戦えば双方に犠牲者がでると判断して持久戦に持ち込んでいた。というのが表向きの理由だが、本音は松尾神社の巫女の里美といい仲になって京の都で楽しい新婚生活をするためだった。しかし、それも少し飽きたのか比叡山奪還のために動き出していた。

 最澄は広隆寺に寄進を予定している金剛力士の仏像の代金2万貫をただちに広隆寺まで持参せよとの手紙を反逆した最澄の3番弟子の最恵に届けた。この比叡山の天台宗本山の大金庫には約100万貫の銀、金が貯蔵されている。この金庫の銀を最澄の許可なく最恵が開けることは絶対になく、もし開ければこれは宗派内部の揉め事ではなく朝廷が日本国を代表と認める宗教の本山の金庫を盗む強盗になるからだ。

 朝廷認可の寺院で最澄は従六位の貴族になるので攘夷大将軍坂上田村麻呂の軍隊が比叡山を攻めて幹部僧侶のすべてが処刑されることは最恵も幹部僧侶も知っているからだ。最澄からの手紙を受け取った最恵はすぐに2万貫分の銀を広隆寺に送ってきた。

 だが、幹部10名の詫び状もなくまだ比叡山に籠城する気だと最澄は判断していたが、もう比叡山の米櫃には米の一粒もないという。そこで比叡山の門前町の坂本や大津で弟子200名を托鉢させてなんとかしのいでいるという。そこで最澄は大八車10台に米、海産物、野菜、塩、味噌、それに般若湯まで積んで坂本の里坊本性寺まで弟子30名に運ばせた。この30名に選ばれた弟子は武道僧侶で普段は官営西寺の警備を担当していた。

 食料品は本性寺に搬入されたが、この食料品は本性寺の僧侶が調理して比叡山から下りて坂本で托鉢する僧侶に食べさせるためだった。この先比叡山は雪になりこの坂本までの参道までも通れなくなり、比叡山に残った200名の弟子もやはり最澄の弟子になり、飢え死させたくないという最澄の愛だが、飢えに耐えられなく山を下りて来た10名の幹部僧侶は「殺せ!」というのが最澄の真意になる。

 

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京の細道いけず石 新宮神社~宇賀神社 京のいけず石 いけず石 18~22 いけず石研究家 音川伊奈利

 

小説西寺物語 50話 京都仏像美術大展覧会で豪族弱体化、文章博士空海豪族対策本部長に任命・京都不粋大学

 

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