『隣の影』(日本公開2019、アイスランド・デンマーク・ポーランド・ドイツ製作2017。監督ハーフシュテイン・グンナル・シーグルズソン。原題:UNDER THE TREE訳:木の下)
先週まで、連日早朝の帰りだったため、何も出来ず、ようやくまともな時間に帰れるようになったので、ファーストデーということも相まって、北欧を舞台にした隣人トラブルの作品を観てきました。
【あらすじ】;アトリはPCに保存しておいた、昔の恋人との情事に耽る動画を観ていたことを、妻のアグネスに見られてしまい、夫婦生活は突然破綻を迎える。家を追い出され、行き場を無くしたアトリは両親の家へ転がり込むことにした。一方、アトリの母インガは隣の家と庭の木が日陰になることを巡って揉めていた。小さないざこざを重ねながら、彼女の飼っていた猫が行方不明になる。そのことが引き金となり、両家の対立は決定的に。インガの行動は、やがてとんでもない事態を引き起こす。
【感想】:隣人トラブルとなると、どうしても作風が暗くなりがちだ。トークショー(後述)の受け売りになってしまい恐縮だが、この作品はどこかユーモラスな面を随所に感じられる。それはアトリが妻に動画鑑賞を見つかる場面(ネタバレになるので詳細は控えるが)やアトリの父親バルドウィンが通うおっさんコーラスがどこか滑稽であったり。とにかく、物語全編に渡って、ユーモアが横たわっている。しかし、怖いところはしっかり怖い。人間のドス黒いさが滲み出てくるところは忘れない。
さらに、伏線はしっかりと張られており、それを一つひとつ回収していくところは丁寧な作りだと感じた。
インガは心に問題を抱えているのだが、これは女性でなくとも、少し理解できるのではないだろうか。ただ、彼女は少しどころかかなりやりすぎであることは否めないため、全面的には賛同できないと思う。終盤は狂気の塊となっていくので、物語が進むにつれ、ドン引きしてしまうのではないか。少なくとも、自分はドン引きした。
また、邦題の『隣の影』の「影」は、登場人物それぞれが影を抱えているため、なかなか上手いタイトルだと感じた。アトリとアグネスは夫婦間に抱えた影、インガは闇とも思えるような深い影(物語の根幹を成すため、詳細は省く)、隣人夫婦も脱却間近の影を抱いているなど、ほぼみんな影を抱いている。
ラストのオチが読めてしまったのがちょっぴり残念だが、たまたまとはいえ、上映後に作家の樋口毅宏氏とドキュメンタリー監督の松江哲明氏のトークライブがあったこともおトク感があり、概ね満足できた。
この作品は納得の2点(0.5点の刻みナシの5段階評価)とした。ラストが読めなければ3点だった。そこだけは悔やまれる。
なかなか観る機会の少ないと思われる北欧の作品、少しでも興味を抱いたら、ご覧になられても良いだろう。
(下の画像左は、ポーチ(ウッドテラス)で日光浴をする隣人。画像中は左側に隣人のポーチと日光浴のチェアがある、中央の垣根が隣人との境で右側にアトリの母インガが茶色い服を着て立っている。その手前の木の影が隣人のポーチに影を落とす。画像右は木の剪定をしてほしいと何回も言ってくる隣人)
画像出典左:隣の影 作品情報 笑顔で挨拶、心に殺意https://movie.jorudan.co.jp/cinema/37941/ (閲覧2019/8/4) 画像出典中:映画『隣の影』オフィシャルサイト https://rinjin-movie.net-broadway.com/ (閲覧2019/8/4) 画像出典右:こんな隣人は嫌だ!隣の家の木が邪魔/映画『隣の影』本編映像1 https://www.youtube.com/watch?v=9d0IhHjGKX8 (閲覧2019/8/4)
以上、S.Zでした。
隣人が一番こわいですね。
私は先週『存在のない子供たち』をみてきました。複雑な気分になりました。
世界中にはとんでもないことがありますね。
神奈川県では、高島町駅近くにできたばかりの映画館横浜キノシネマのみ上映してます。