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【第百七話】
 今は“結果が大事”という時代なのでしょう、パソコンの画面を見ながらすぐに薬が出されます。確かに治ればそれで良いのですが、何か昔のお医者さんの、無言のうちにも威厳と優しさのある向き合い方には無性に懐かしさ、むしろ恋しさを覚えます。人の手には独特のエネルギーというか、目には見えない力があります。何千人もの、いや時に何万人もの患者さんに触れて、幾多の病や死、そして快復の現場を経てきた「手」には、まぎれもない大きな「力」が潜んでいます。その手が働くときには、常に人を病や衰弱から救い出そうという「意志」があったからだ(存在していた)と思います。