春の雪が降った。
人影まばらな東京が真っ白になってゆく。
まるで、古いフィルムで見た戒厳令の日みたいで、美しさと不安が入り乱れて、無口になった。
この異様な空気の中で思ったのは、悲観的にならないで、毎日してきたことを毎日やり続けよう、という、とても小さな決心だった。
僕らはいま萎縮してはならない。
できないことを考えたら震えが止まらないし、じっさい生活も危うい。
けれど、何かできることを行い続けねばならないと、すごく思う。
僕の場合、公演をはじめ多人数の方々との関係は難しいが、個人稽古やクラスレッスンを切らさない、ということは、なんとかして出来るはずで、そして、そこに、とても重要なものがある。
修練と伝承を切らさないこと。つつましく、きまじめであること。
という、舞踊において最も大切と言われてきたことが、いま急に身に迫る。
出会った先生のなかに、第二次大戦中の稽古について話してくださった方があり、ドイツの先生だったから、ご経験はホロコーストと芸術弾圧に触れていた。
絶望と恐怖のなかでも踊りたいという人が少数あって、隠れて稽古と指導を続け、そのときの関係と内容が戦後の核になっていった。というその話を、いま、心し直す。
つらい時にも続けたことが、本当の力になるのだと思う。
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