宝島:真藤 順丈著のレビューです。
感想・あらすじ 沖縄と、本土や政府との温度差の根っこはどこにあるのかが感じ取れる作品
大作でした。
米軍施政下の時代の沖縄が舞台。沖縄、米軍基地から物資を盗み出す“戦果アギヤー”。彼らの盗みは貧し人々を救うためであった。その戦果アギヤーであった少年たち、それを見守る少女らの青春と友情を中心に、沖縄が抱えるリアルな問題を絡めながらシリアスに話が進む。また、沖縄という土地に根付いている風土などが存分に感じられる1冊。
沖縄と本土、政府との温度差の根っこはどこにあるのか。漠然としていた部分がじわじわと伝わってくるような内容でもあった。なかなかページが進まない部分もあったが、なぜか途中では降りられない面白さがった。行方不明になったオンちゃんの存在がとても大きく、最後まで彼の行方を追っていた。
戦後、沖縄がどう歩んで来たのか。ニュースだけでは掴み切れない地元の人々の生活や気持ちなどを知る一歩になるような小説なので、難しいことはさておき、ニュートラルな気持ちで一度目を通すと良いと思う。
昔読んだ桐野夏生の小説の雰囲気を思い出した。闇夜をずっと走っているような感覚と、じっとり纏わりつく空気、なにかがどこかで蠢いている感じ、内容的には全く違うものだけれども、似た雰囲気を感じたのは気のせいだろうか。
文庫本