こんにちは。

 

先月のことですが、NHK BSプレミアムで、吉岡秀隆さんが金田一耕助を演じたスーパープレミアム『八つ墓村』が放送されました。

 

今日は、その感想を書いておきます。

 

◎物語を簡単に…

戦国時代に村人が8人の落武者を惨殺し、大正時代に落武者殺しの首謀者である旧家の当主が32人の村人を殺害した過去を持つ八つ墓村。その旧家・田治見家に、長らく縁が途絶えていた井川(原作:寺田姓)辰弥が跡継ぎとして戻ってきます。

 

それが悲劇の発端でした。祖父、異母兄、僧侶、尼僧…次々と殺害される関係者たち。だが、真相はようとして分かりません。そんな中、辰弥は巨大な鍾乳洞へと迷い込見ます。そこで見たものは、落武者の鎧を身につけた、32人の村人を殺害した田治見家先代の死蝋でした。

 

大伯母の双子の老婆、異母姉、村の医師…殺人は留まるところを知りません。辰弥の出生の秘密を探り当てた金田一でしたが、その頃、当の辰弥は、落武者の祟りを恐れる村人によって、鍾乳洞の奥に追いつめられていたのでした…。

 

《スタッフ》

◎原作:横溝正史さん

◎脚本:喜安浩平さん、吉田照幸さん

◎演出:吉田照幸さん

◎制作統括:村松秀さん (NHK)、西村崇さん(NHKエンタープライズ)、大谷直哉さん(ザロック)

 

《キャスト》

◎金田一耕助:吉岡秀隆さん

◎井川辰弥:村上虹郎さん

◎森美也子:真木よう子さん

◎田治見春代:蓮佛美沙子さん

◎田治見要蔵/久弥:音尾琢真さん(2役)

◎里村典子:佐藤玲さん

◎里村慎太郎:小柳友さん

◎田治見小竹/小梅:竜のり子さん(2役)

◎野村荘吉:國村隼さん

◎磯川警部:小市慢太郎さん

◎濃茶の尼:木内みどりさん

◎駐在:宮沢氷魚さん

◎駐在の妻: 佐津川愛美さん

◎井川鶴子:樋井明日香さん

◎長英:津嘉山正種さん

◎英泉:山口馬木也さん

◎梅幸尼:山下容莉枝さん

◎諏訪弁護士: 酒向芳さん

◎井川丑松: 不破万作さん

 

僕が過去に観た『八つ墓村』はこれだけあります。

 

◉1977年10月29日に公開された松竹作品。

監督・野村芳太郎さん、主演・萩原健一さん、金田一耕助・渥美清さん

 

◉1996年10月26日に公開された東宝/フジテレビジョン・角川書店・東宝提携作品

監督・市川崑さん、金田一耕助・豊川悦司さん

 

◉『横溝正史シリーズⅡ・八つ墓村』

TBS系列で1978年4月8日から5月6日まで毎週土曜日22時〜 22時55分に放送されたドラマ全5回。

監督・池広一夫さん、金田一耕助 ・古谷一行さん、寺田辰弥・荻島真一さん

 

◉『金田一耕助シリーズ・八つ墓村』

フジテレビ系列の2時間ドラマ「金曜エンタテイメント」(金曜日21時〜 23時22分)で2004年10月1日に放送されたスペシャルドラマ。

演出・ 星護さん、金田一耕助・稲垣吾郎さん、井川辰弥 / 亀井陽一・藤原竜也さん

 

僕は学生時代に原作は読んでいて、どの映像化作品も原作を読んだ後に観ていますから、どの作品も「あの原作をこのスタッフさん達はこう捉えたのか、解釈したのか」と楽しみながら観た記憶があります。

 

どの作品もそれぞれ味があり、個性があり、横溝ミステリーファンとしてはどれも愛おしい作品群です。

 

だいたい誰が新しく作ったとしても、1977年の野村芳太郎監督版と較べられてしまうと思うのですが、どっちが良いとか悪いとか、僕は較べても仕方ないじゃんと(笑)と思うタチなので、今回の2019年版はどんな仕上がりなのか楽しみにしていました。

 

NHK BSプレミアムで制作された横溝正史シリーズは『八つ墓村』で3作目です。

 

1作目が長谷川博己さんが金田一を演じた『獄門島』、2作目が吉岡秀隆さんが金田一を演じた『悪魔が来りて笛を吹く』でした。

 

『獄門島』に関しては、僕は学生時代に原作を読んでから長年疑問に思っていたことがあったのですが、ドラマの製作者たちも同じ思いなんだと観た時に嬉しくなりました。

 

僕は原作を初めて読んだ時、『獄門島』は島の一番の実力者、網元の鬼頭家の三姉妹が俳句に見立てて殺されるのですが、木に吊るされたり、釣鐘に閉じ込められたり、祈祷所で萩の花に包まれていたり、なんで死体をそんなに飾り立てなければいけないのか、絶対そうしなきゃいけない理由がわからなかったし、三姉妹が殺される理由もイマイチ説得力を感じなかったのです。

 

殺人を実行した者達が、ある人物から俳句が書かれた紙を渡され、そうしてくれと頼まれたからなのですが、「なんか無駄なことしてるなぁ〜」と思い、僕の中では『獄門島』が日本のミステリー小説の中で高い評価を受けていることに少し疑問を持っていました。

 

『犬神家の一族』や『悪魔の手毬唄』のように、絶対死体をそうしなければならないという理由が『獄門島』にはないじゃないですか。ただの酔狂ですよ。

 

1977年に公開された、市川崑監督の『獄門島』は原作と大きく結末が変えてあります。東宝側から犯人は前2作(犬神家の一族、悪魔の手毬唄)同様、美しい女性を犯人にしてほしいという要望があり、脚本の日高真也さんと監督が頭を捻り、あのストーリーになったのだと思いますが、僕はこの原作の改変は(嫌だという人が多いですけど)原作で僕が感じた弱点を補った素晴らしい脚色だと思っています。

 

長谷川さん演じる金田一は、犯人の一人と対峙した時、「果たさなくていい約束を必死に果たして無駄無駄無駄無駄ァ、無意味ー! ご苦労様でした、ザマァみろだっ!」って犯人に狂ったように叫んだんですよ。

 

そのシーンを観た時に僕は長年胸の中でモヤモヤしていたものが晴れました! このドラマを作った人達は僕と同じ思いなんだと思ったからです。

 

この金田一の言葉責めに遭った犯人が耐えきれず、心肺停止で死んでしまうというのはちょっとやり過ぎなんじゃない?(笑)と思いましたが、新しい横溝ミステリーの在り方を観せてもらった気がして嬉しくなりました。

 

この『獄門島』が好評だったんでしょう。2作目『悪魔が来りて笛を吹く』が制作されました。

 

『悪魔が来りて笛を吹く』の感想は過去にこのblogで書かせてもらったので、そちらを読んでいただきたいのですが、筒井真理子さんが演じた椿 秌子のキャラクター造形に僕は新鮮味を感じましたし、だからこそ犯人の苦しみと悲しみが増し、僕の胸を打ったのです。

 

今回の『八つ墓村』、期待していましたよ〜。『獄門島』と『悪魔が来りて笛を吹く』を作ったスタッフですからね。

 

でもね〜、僕の中ではちょっと残念な出来でした〜(泣)。

 

今回の『八つ墓村』を今まで映像化されたものと較べて観ると、かなり原作を忠実に描写したものとなっていました。

 

❖相似する身分や職業の人間ふたりを1組とする組み合わせが書かれた紙片が見つかり、書かれたどちらかの人間が殺されるという謎。

 

❖作品の本来のヒロインである、里村典子(主人公・寺田辰弥のいとこ)の存在。

 

❖「真犯人」の動機に深く関わる、里村慎太郎(典子の兄)の存在。

 

❖西屋の当主である野村荘吉が抱いている「ある疑惑」。

 

❖辰弥の「ほんとうの父親」亀井陽一の存在と、現在の姿。

 

❖事件の重要なきっかけのひとつである新居修平医師の存在。

 

❖尼子の落ち武者の財宝はどうなったのか?

 

❖「真犯人」の死因。

 

今回は、これまでの映像化では、原作にありながらあまり取り上げられなかったこれらの要素がきちんと描写されていました。

 

しかし、原作に忠実だからと言って、良い作品になるのか?と言われれば、ちょっと違うかなあという感じです。

 

相似する身分や職業の人間ふたりを1組とする組み合わせが書かれた紙片というのは、探偵小説マニアの久野医師が、患者を盗られてしまったと新居医師を逆恨みし、空想上で殺すために企てた殺人計画を書いたものだったのです。

 

ところがその計画を書いたノートが入ったカバンを濃茶の尼に盗まれ、捨てられたノートをたまたま犯人が拾い、この殺人事件の計画に利用したというのが原作の筋書きです。

 

これは、真犯人が誰か、作者が読者を撹乱させる為の手段だと思うのですが、捨てられたノートをたまたま犯人が拾うというのは僕なんかは都合の良い設定だなぁと感じてしまうし、映像化していながら、さらっとセリフだけで流されるのもどうなんだろうと思ってしまうし、無くても良いと僕は思ってしまいます。

 

僕が一番「えっ!」と思ったのはファーストシーンの、落武者八人を村人が襲い、斬殺するシーンです。

 

これだと、原作を読んでいない人、過去に映像化されたものを一つも観たことがない人は、何が起こったのかわからないと思います。

 

あまりにも簡略し過ぎじゃないですか?

 

欲に目が眩み、村人が落ち武者を虐殺したこの出来事こそが、全ての元凶なのに…。軽い…軽すぎますよ。あれでは…。

 

それと、犯人のキャラクター設定が気になりました。

 

だって、最初から犯人分かりすぎでしょ〜(笑)。登場した瞬間から怪しさ満開じゃないですか〜(笑)。一応、ミステリーなんですから。犯人をもう知っている人間が観ても、少しはカタルシスを感じさせて欲しかったです。

 

深い闇を抱え、目的のためなら殺人をも厭わないシリアルキラーのような犯人のキャラクター設定も、横溝文学には似合わない気がします。

 

犯人がどうしてそこまで思い詰めたのか…。セリフで説明するだけじゃ無く、もう少し映像で描写して欲しかったです。

 

殺人の動機を説明されても、「そんなことで!」「随分、自分勝手な理由だな」なんて思わせるだけでは淋しいじゃないですか。

 

今回も良い俳優さんを揃えていながら、生かし切れてなかった印象です。

 

ラストのあのシーンもあっても良いですけど、無くても良いし、もうちょっと違う撮りが方あったんじゃないかという気もしますね〜。

 

今回は音楽もピンとこなかったなぁ〜。

 

次回は『悪魔の手毬唄』みたいですね。

楽しみにしています。

 

 

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