1963年7月、NHKで放送されていたバラエティ番組『夢であいましょう』の今月の歌として発表された「こんにちは赤ちゃん」(作詞・永六輔さん、作曲・中村八大さん)が大ヒットとなり、同年12月の第5回日本レコード大賞の大賞を受賞し、長年、歌手として活躍されて来た「梓みちよ」さんが東京都内の自宅で1月末に亡くなられていたことが今月の3日に所属事務から発表されました。76歳でした。

 

驚きました。

 

最近は、歌以外に化粧品のプロデュースもされて、通販番組にもご自身で出演され、元気な姿をお見せになっていたのに…。

 

その通販番組の打ち合わせの為、マネージャーが梓さんの自宅を訪れて、亡くなっていた梓さんを発見したんだそうですね。

 

長年、闘病した末に亡くなる方もいれば、昨夜までは元気だったのに、夜が明けたら亡くなっている方もいる…。

 

命の不思議さ、儚さを感じます。

 

梓さんは、大好きな歌手のお一人だったので、とても淋しく感じています。

 

僕が初めて「梓みちよ」という歌手を知ったのは、1968年秋から1985年春まで、16年半に渡りフジテレビ系列(FNS)で放送された音楽番組『夜のヒットスタジオ』で「よろしかったら」という曲を歌われているのを見た時です。

 

黒柳徹子さんの玉ねぎヘアーの原型を造ったと言われる、ヘアメイクアーティスト・須賀勇介さんの「スガサロン」にいた野村真一さんが、その頃の梓さんのヘアメイクをされていたと思うのですが、カッコイイんですよね。今見ても全然古く無いし。大人っぽくて、素敵なんですよ〜。

 

ちなみに、どうでもいい情報ですけど(笑)、僕が前に付き合っていたヘアメイクアーティストの亡くなった彼は、野村真一さんの「アトリエシン」に最初いたんです。

 

亡くなった彼は、『夜のヒットスタジオ』ではアン・ルイスさんなどを担当していたそうです。芳村真理さんとも知り合いでした。

 

この時代の歌番組の映像は「YouTube」で観れますから、興味のある方は是非、観ていただきたいです。

 

この頃の歌謡界は、若いアイドルもいれば、梓さんのようなキャリアのあるベテラン歌手もたくさんいて、華やかだったんだなあ。大人の成熟した文化があったんだなあと感じます。

 

1979年ですね。僕はまだ幼くて、微かな記憶ですけれど、日本専売公社(現在の日本たばこ産業株式会社 〈JT〉)の「パートナー」というタバコのCMソングでしたので、耳馴染みはあったんです。

 

この曲は、作詞・阿木燿子さん、作曲・筒美京平さん、プロデュースが酒井政利さんで、酒井さんといえば、百恵さんや郷ひろみさん、南沙織さんなど、アイドルを手掛けられたことは有名ですが、同時に「アダルト路線」といって、過去にヒット曲はあるけれど、ちょっと今低迷しているベテラン歌手を新たなイメージで復活させるということもされていたんです。

 

朝丘雪路さん『雨がやんだら』に始まり、坂本スミ子さん『夜が明けて』、大信田礼子さん『同棲時代』、金井克子さん『他人の関係』、内田あかりさん『浮世絵の街』そして梓みちよさん『よろしかったら』。

 

あるパーティーで酒井さんは梓さんに声をかけたそうです。その後、梓さんから「一度、一緒に仕事がしたいですね」と電話があり、当時、梓さんはキングレコードの所属でしたが、CBSソニーに移籍されて生まれたのが『よろしかったら』なんです。

 

僕の大好きな曲の一つで、今でも携帯音楽プレーヤーに入っていて、毎日聴いても飽きない曲の一つです。

 

その後、酒井さんは梓さんの曲を次々とプロデュースをされたのですが、『よろしかったら』ほどのヒットが出ず、今では失敗だったとおっしゃっていますが、いやいや、そんなことないですよ〜。梓さんがCBSソニーに残された曲の数々は良い曲が多いんですよ〜。洒落ていて、洗練されていて、梓さんにしか表現できない歌世界に魅了されます。

 

1979~1986年に発表された作品38曲が収録された「ニューシャンソン」と副題のついた梓みちよさんのCBSソニー時代の二枚組ベスト「ゴールデン☆ベスト」がおすすめです。

 

1980年7月23日から1980年9月10日までTBS系列で放送された倉本聡さん脚本、岩下志麻さん主演のテレビドラマ『さよならお竜さん』の主題歌『淋しい兎を追いかけないで(作詞:阿木燿子さん、作曲:筒美京平さん)』も良いですよね〜。

 

「いまさら慎ましい女になれって無理よ 贅沢が体の芯まで染みついているわ」阿木さんらしいこの詩にあんな曲を付けれるのは筒美京平さんしかいませんね。大好きです。

 

デレビがアナログ放送だった時代に、年末になるとNHK-BSでは「思い出の紅白歌合戦」と銘打ち、過去の紅白を丸々放送していたんです。僕は毎年楽しみにしていて、梓さんの出演回

 

1974年(昭和49年)/第25回『二人でお酒を』    

1975年(昭和50年)/第26回『リリー・マルレーン』    

1976年(昭和51年)/第27回『メランコリー』    

 

を観ましたが、僕は『リリー・マルレーン』を歌う梓さんがとても印象に残っています。

 

『リリー・マルレーン』(Lili Marleen)は、第二次世界大戦中に流行したドイツの歌謡曲です。ドイツの詩人ハンス・ライプの詩集に収録されていた詩を原典として作曲家ノルベルト・シュルツェが曲をつけ、歌手のララ・アンデルセンの歌で有名になりました。日本ではベルリン出身のハリウッド女優、マレーネ・ディートリヒの持ち歌として知られていますね。

 

日本でも加藤登紀子さんをはじめ、たくさんの歌手の方が歌われていますが、片桐和子さんによる訳詞で梓みちよさんが歌う『リリー・マルレーン』が僕は一番好きですね。

 

梓みちよさんで良く語られているのは「夜のヒットスタジオDX」での歌唱が衝撃的だった『ナラタージュ』という曲でしょうね。僕、観ちゃったんですよ〜(笑)。1986年頃かなぁ〜。梓さんは全身白いドレスなんですけど、最後に赤ワインを笑いながら自身の身体にドボドボとぶちまけ、最後のフレーズを歌うシーンは衝撃的でしたね〜。

 

曲自体はよく聴かないと、理解しづらい内容だと思うんです。僕みたいな同性しか愛せない人間には理解できるんですけどね。でも初めて聴いた時はテレビの前で「えっ〜、こんな歌だったのぉ〜⁈」としばらく呆然としたことを覚えています。

 

でも、あの梓さんのパフォーマンスがあったからこそ『ナラタージュ』という曲は今でも語り継がれているし、これからも忘れられないんだろうと思うし、梓さんて素晴らしいアーティストだったんだなと今は思うばかりです。

 

キングレコード時代の「二人でお酒を」はもちろん、「メランコリー」、「赤いサルビア」、「二日酔い」も大好きです。

 

これからも、梓みちよさんが残された曲の数々を、僕は聴き続けると思います。

 

ご冥福をお祈りいたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

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