美術の旅人 Voyageur sur l'art  

「美術」との多様な出会い。見たこと、感じたこと、思ったこと。

野中光正&村山耕二展 2020年11月17日(火)~24日(火) 11時〜18時 杜の未来舎ぎゃらりい

2020-11-05 11:36:21 | レビュー/感想
 
 
蘇生する記憶
 
絵画を美術史と言う名の、西洋の線形モデルの中で考えると、近代のタブロー絵画の歴史は、抽象画でピリオドを打ってしまう。このピリオドの中には、私たちを魅了してきた無数の絵の記憶が層となって蓄蔵されている。野中氏の「抽象画」(ミックストメディア)もまさしくそうで、色彩やタッチやコンポジションから、西洋画であればヴァトー、ロートレック、そしてモランディやロスコなど、浮世絵であれば鈴木春信、広重まで、そこに表現された自然の動態が多重露光のように浮かび上がって来ることがある。作家の生まれ育った場所、江戸、東京と続くモダン文化の中心点、浅草という環境が、西洋近代の文化的精華とも通底する普遍的な目と身体を画家のうちに育んだのであろうか。膨大な記憶の層から引き出した美を今の時のうちに蘇生させる変奏の技術は、抽象というと、すぐ色と形でちまちま作為したデザインか、理屈っぽい形而上の死の世界に固化してしまう、多くの野暮天には真似のできないセンスと芸当だといつも思う。
 
NONAKA MITSUMASA
1949年東京都鳥越生まれ。67年木版画・絵画を始める。68−71年太平洋美術研究所、73-82渋谷洋画人体研究所で描く。89-91年新潟高柳町に移住、紙漉きを学ぶ。ゆーじん画廊、ウィリアムモリスギャラリー、アビアント(以上東京都)、新潟絵屋(新潟市)などで毎年個展開催。
 
 
オリジンへの遡行
 
名付けるところのジオロジカルグラス Geological Glassは、地中深くの白熱のスープの中から光のガラスを纏って飛び出してきた原初の石に見える。しかし、これは作家の言によると、むしろ還元的営為から生まれたものだ。オレンジ色の燃え盛る火の玉となったガラスに地底の鉱山から拾ってきた石を投げいれ、その分解過程を目前にする時、作家は物質の歴史を創世の時へと瞬間のうちに遡行する感覚を抱くという。作家の五感と手は、作り始めの頃から比べるとこの過程をアートへと秩序づけ昇華させる技術を習熟させて来たように見える。しかし、岩石内部の未知の組成が、作家のコントロールの限界を超えて危険をもたらす可能性はゼロではない。このギリギリのところで、掌の中にチリとガスが集まって惑星が出来ていく、その不思議を見てしまい、もう後戻りができない作家がいる。
 
 
MURAYAMA KOUJI
1967年山形市生まれ。1996年仙台市秋保に海馬ガラス工房設立。2007年モロッコ王国・王室への作品献上。土地土地の砂の特質を生かしたユニークな造形作法で知られる。
 
 
Free Talking   作家を交えて
11月23日(月)2:00~4:00
今回は野中さん、村山さんを交えて、抽象画を描く喜び、見る喜び、語る喜びをシェアし合いたいと思います。ご参加の方はあらかじめご連絡ください。人数を制限する場合がございますのでご了承ください。

 



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